Chernobyl Medical Fund Newsletter (9)


ようこそ日本へ

 6月3日、やや肌寒い朝に成田空港までエカテリーナさん、小川さんを迎えに向かいました。新しい成田空港第一ターミナル南ウィングで、千原さん、鳥居さんと待っていると小川さんがさっそうと現れました。小川さんの後ろから落ち着いた雰囲気の金髪の女性が続きます。エカテリーナさんです。
 小川さんとひとしきり再会を懐かしんだ後、エカテリーナさんを紹介してもらいました。みんな「エカテリーナ」がうまく発音できません。「カチェリーナ」「カテリーナ」、結局どれもご本人のOKは出ず、何度も発音を直されたあげく、私は短く「カーチャさん」と呼ぶことにしました。大きな瞳と低めの柔らかな声、じいっと小首をかしげて人の話に聞き入るさま、落ち着いた話しぶりがすごくステキな雰囲気。きっと母国でも、子供にも親にも信頼される小児科医なのでしょう。
 その後千原さんの車に乗り込み、信州松本まで4時間のドライブとなりました。空の旅の疲れも見せず、カーチャさんは車窓風景に興味津々で、途中、「機内食でカップヌードルが出たら小川さんにお箸を使うように言われて大変だった!」などの軽口も飛び出しました。
 小川さんは相変わらずクールに「麺類をお箸でいただくのは当然です」と手厳しい。「好きなことは何ですか?」と尋ねると、美術館巡りや山登りが好きとのこと。山のないベラルーシの、地平線がはるかに広がる国から来た人が、山に囲まれた信州を気に入ってくれるかと思っていましたが、心配なさそうです。
 松本に到着し、その夜の歓迎の夕食パーティーには菅谷先生はじめ医療基金事務局のメンバーも集まり、にぎやかな雰囲気になりました。
 カーチャさんは、「フォークはいりません」と果敢にお箸にチャレンジ。横に座る小川さんの指導のもと、見る間に上達して優雅に食事をしていました。
 翌朝は市内見物に向かいました。旅の疲れもあるだろうに、カーチャさんは研修が始まる前に、行けるところは行っておきたいと積極的です。
 昨日の曇り空からうってかわってまぶしいくらいの日差しの中、ホテルからぶらぶら歩いて松本城に向かいました。新緑の庭に天守閣がそびえます。城内を見学したあと、庭の一角で展示されていたさつき盆栽展をのぞきました。

 テントの下に並べられた、咲き誇るさつきのきれいなこと。お城にさつき、「日本の文化って美しい」としみじみ思ってしまいました。横でカーチャさんも「すごい!」と感動していました。それから少し市内を歩いて、私と鳥居さんは東京に戻るため、信州を後にしたのでした。
 カーチャさんにはこれから6カ月のこども病院での研修。遠い国に来て、異なる文化の中で暮らし、さらに新しい医学知識を吸収するのは、きっと大変なことも多いだろうけれど、できるだけ楽しんでほしいと心から思います。この研修が実り多いものになること、そして彼女が学んだことをベラルーシに持ち帰り、1人でも多くの子供たちの笑顔が広がることを願ってやみません。


橋本すみれ


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