Chernobyl Medical Fund Newsletter (1)


 支援者の皆々様へ

菅谷 昭


 
皆様、その後いかがお過ごしですか。平成19年も、あっという間に半年が過ぎ去ってしまいました。実は、私の住む松本市は、今年、市制施行百周年の節目の年を迎えました。昨年、記念事業実行委員会を立ち上げ、市民総参加による、次代を担う子どもたちの心に残る事業であることを基本方針として、1年を通し、四季折々にさまざまな記念事業を開催する計画の下、これまで多くの観光客の皆様をお迎えしています。私自身、総責任者として、土、日もなく、通常の公務の傍ら、連日、時間とにらめっこしながら、忙しく動き回っております。そんな中、当基金に対しまして、多くの支援者の皆様方より、引き続きあたたかいご支援、ご協力を賜っておりますことに、あらためて心より感謝を申しあげます。

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さて、最近、驚いたことが2つありました。1つは、過日、私のところに、日本原子力学会の核燃料夏期セミナーでの講演依頼が舞い込んできたのであります。“はてさて、どうしたものか”と思案しておりましたところ、当学会の核燃料部部会長の岩田修一東京大学大学院教授が、わざわざ市役所までおいで下さいました。お話によりますと、この夏期セミナーは毎年開催され、今年は22回目であり、参加者は核燃料関係の専門家(大学の教官、企業の技術者、管理職、研究所の研究者)、および関連の学生たちで、年齢構成は20代から80代までと、広い範囲にわたっているとのことでありました。そんな原子力関係のスペシャリストが参集するセミナーに、「なぜ私ごとき者が演者に選ばれたのか」をお尋ねしました。岩田教授は、私がチェルノブイリの医療支援活動に、汚染地域で直接かかわってきたことや、現在、地方自治体の長であることも十分承知しており、もろもろのことを勘案の末、私を本セミナーの演者として適任であると判断し、講演を依頼した旨、説明して下さいました。
「さて、どうするべきか」私自身は、原子力や核燃料関係の専門家ではありませんので、正直のところ、「私より、もっと他に適任者がいらっしゃると思いますが」とお返事しようかと考えました。しかし「待てよ!」。
 最近のわが国における原子力発電所の、次々に発覚するトラブル隠しは目に余るものがあります。一体、各電力会社の幹部らは、国民を何と思っているのか。危機意識も極めて希薄で、第一、責任感のかけらも見られません。日本でのこれまでの重大事故に対し、あれほど厳しく批判されているにもかかわらず、彼らには何ら反省や教訓を生かす態度さえも見られず、深い溜息とともに、「所詮、これが日本人なんだよな」と、妙に感心してしまいました。当事者たちもしかり!日本国民もしかり!
 これではチェルノブイリの事故を教訓にしなければいけないと、いくら声高に叫んでも、なかなか浸透しないわけですネ。
 オッと、話を本論に戻します。結局、岩田先生の熱心かつ真摯な口説きにうち負かされ、7月20日には、先生より要望された「地方自治体行政と環境・開発」というテーマで、放射能も含めた環境汚染と、自治体の抱える課題について話す予定であります。その話題の中で、特に原子力の専門家たちは、もうそろそろ市民社会に顔を見せ、正しい情報や自らの考え等を、市民に向かって、分かりやすく語るべき時ではないかと、お願いしてこようと考えています。
2つ目の驚きは、6月初旬、皇太子ご夫妻が、国営アルプスあずみの公園での「みどりの愛護」のつどいの式典にご出席下さり、昼食の折、殿下より「松本市長さんは、チェルノブイリで医療支援活動をなされましたね」と、お声をかけていただき、びっくり!そのあたたかなお心遣いに、いたく感動しました
日本は梅雨。ベラルーシは梅雨が無く、今頃はさわやかな初夏。子どもたちは夏休み。大自然の懐に抱かれて、丸々3カ月を自由に過ごす彼らを懐かしく思い出しています。ただ、そこは汚染大地です…。
 
皆様くれぐれもご自愛ください。




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