Chernobyl Medical Fund Newsletter (1)


 支援者の皆々様へ

菅谷 昭

 皆様、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。アメリカに端を発した世界的な経済不況が続く中、それでも前を向き、プラス志向で頑張っておられることと拝察しております。
 皆様方におかれましては、何かと厳しい状況にもかかわらず、医療基金へのあたたかいご支援に深く感謝を申し上げる次第でございます。
 さて、当基金の支援活動も、昨年度より新しい方向での動きを開始したところでありますが、今年度は新たな事業も加えて、5月末から6月初旬にかけて、ベラルーシへの医療支援を実施していただきました。その詳細は今号の訪問記をご覧下さい。


 今回は、ちょうど新型インフルエンザの世界流行と重なり、種々困難を強いられましたが、ご参加いただいた皆様をはじめ、ベラルーシ在住の小川良子さんや事務局の皆様に、あらためて心より御礼申し上げます。この活動のゆるやかな広がりが、それぞれの意欲と工夫と行動によって、引き続き継続されますことを願っております。
 さて話は変わりますが、過日、松本市の教育委員長さんが、ある書物の一部をコピーして持ってきてくれました。その本の題名は、「声に出して読みたい日本語D 心の琴線にふれる言葉」で、著者は齋藤孝氏であります。かつてベストセラーになったかと思います。コピーの部分は、菊池寛の「恩讐の彼方に」を取りあげており、それに対する著者の解説が述べられておりますので、その全文をご覧下さい。

◎人に尽くすこころざし
 旗本を殺して逃げた市九郎が罪深さに出家して(了海となり)旅に出る。何人もの参拝者が命を落とした羅漢寺(らかんじ)詣ででの断崖の道を見て、絶壁をくり抜くことを思いつく。石工と掘り進めたとき、父の敵を討とうとする実之助に見つかるが、実之助は手伝ったほうが早く仇討ちができると協力する。21年目、隧道が貫通したとき、いよいよ斬られると覚悟した了海だが、実之助は彼のおこないに仇討ちを忘れ、むせび合った。実之助に仇討ちを忘れさせた了海には、人の役に立ちたい、そのことで燃え尽きたあとはどうなろうとかまわない、というこころざしにあふれている。
 いま、子どもの教材にするべくNHKの「プロジェクトX」をDVDであらためて見ていますが、「奇跡のメス」という回で、チェルノブイリ原発事故の影響で子どもたちに甲状腺がんが多発しているのを知った信州大学の菅谷昭医師が助教授を辞して、52歳で単身ベラルーシへ渡り、治療に献身する姿を紹介していました。菅谷さんは、自分はこの仕事に献身しているから、死ぬのが怖いという気持ちはなくなったとおっしゃっていました。必要とされているところで自分の力を尽くせたという公共的な貢献、公共心が満たされたときに、人は本当に満足して死ねる。いまは公私の「私」の部分が肥大化して、そこに幸福があるように思いがちですが、人のためになる仕事をしたときに本当に心が満たされて死ねる。それが「恩讐の彼方に」のテーマでもあります。

 正直のところ、びっくりしました!まさか私のことが、このような形で引用されているとは思いもよりませんでした。私自身の過去の行為など取るに足らない小さなことで、世界の中には私など足元にも及びもしないすばらしい善意や善行で、日々、心豊かな人生を送られている方々がたくさんいらっしゃいます。
 さしずめ当基金を支えて下さいます支援者の皆様は、まさにそのような方々と確信しております。当基金の歩みはのろいかもしれませんが、多くの皆様方のお力添えの下、これからもslow & steadyで進んでまいる所存でありますので今後ともよろしくお願い致します。
 向暑の折、くれぐれもご自愛下さい。



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