福島原発事故関連取材

菅谷 昭

皆様、その後もお元気でいらっしゃいますでしょうか。当基金へのいつも変わらぬご支援、ご協力、併せてあたたかい励ましに、深く感謝を申しあげます。

冒頭、このたびの東日本大震災によりお亡くなりになられました方々に衷心よりご冥福をお祈り申しあげますとともに、被災された皆様方に心よりお見舞いを申しあげます。 また被災地におかれましては一日も早い復旧、復興を強く願うところでございます。

さて、ご承知の通り、本当に予期せぬ悲しい出来事、原子力発電所の事故がわが国で起こってしまいました。 ちょうど今から10年前、ベラルーシ共和国での5年半にわたる医療支援活動を終え、私は日本に戻ってきました。 帰国後は「チェルノブイリ事故と同じような原子力災害を二度と起こしてはならない」との強い思いを抱き、日本各地を講演してまわりました。 そんな切なる願いも虚しく、正直のところ思ってもみなかった原発事故が実際に起きてしまいました。 しかもそれは、チェルノブイリと同じ「レベル7」の事故と認定されたのであります。

福島第1原発事故に対する国や東京電力、経済産業省原子力安全・保安院の対応等について、ここで詳しく述べることはしません。 しかし、それにしても次々に繰り出すいずれの事故対策の遅れとまずさ、それはまさしくわが国の原子力災害への危機管理能力の欠如を全世界に露呈してしまいました。 そして、それらの一部始終を目のあたりにし、私は憤りと失望で言葉すら出ません。原発大国日本において、チェルノブイリの教訓が全く生かされていないではありませんか!  国は国民の命を守ることの使命をどのように考えているのでしょうか。 自国の政府を信じられないほど不幸なことはありません。 誠に残念ながら私たちそれぞれが今を一生懸命に生き、そんな中でこのような地道なチェルノブイリ支援活動を継続していることが、 果たして一体何の意味を有するのか、もう一度立ち止まって再考する必要があるのではないかと思わざるを得ない心境にあります。

今回の事故に際しては、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌等、様々なメディアから取材を受けており、現在も続いています。 実のところ、私自身は静かにしていて、事の推移を見守っていきたいと考えているのですが、チェルノブイリ事故による汚染地での本当の姿を知っているのは、 日本において恐らく私だけではないかということで引っ張り出されているものと思います。 多くの方々から「それはあなたの義務ですよ。放射能被害を心配する人々は、菅谷さんを頼りにしているのですから」と言われ、 副市長以下、市役所の職員の協力の下、公務に支障のない範囲で、できる限り対応している状況です。 あちこちでの講演や原稿の依頼も多く、それにしても本当に忙しい毎日であり、まさに想定外の日々であります。

私ども松本市では、この7月27日から29日にかけて、「第23回国連軍縮会議」を開催することになっており、目下、市民を含め全庁あげて諸準備の最終段階にあります。 なお、この会議の中で、「原子力の平和利用をめぐる喫緊の課題」というセッションがあり、“チェルノブイリ”と“フクシマ”の原発事故問題に関連し、 原子力の安全性等の課題について、私自身もプレゼンテーションの要請を受け、「エッ、まさか」と、これも想定外のことかと複雑な思いで、 多忙の合間を縫って、スピーチの準備にとりかかっているところです。

このような折、先日の大雨による山岳観光地“上高地”地域での崩落による土石流災害、それに続く松本地域を震源とする震度5強の地震災害、 それぞれの災害対策に追われているところでもあります。 そんな想定外続きの事変に、思わず天に向かって祈りたくなる昨今です。今夏は節電も加わり暑くなること必至です。 皆様におかれましてはくれぐれもご自愛いただき、この夏を乗り切って下さるよう念じております。





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