Chernobyl Medical Fund Newsletter (3)

自分を見つめなおすということ

3年 伊藤 高紘


 
唐突ですが、皆さんは自分の将来の職業や人生の歩み方について、どんな夢を持っているでしょうか。もう具体的に固まり、それを目標に頑張っている人もいるでしょうし、まだそんなことは分からない、という人も多いと思います。私の場合、どちらかというと後者で、そして自分がそのような状態にあることに強い不安とあせりを感じていました。
先日、毎年恒例の講演会が開かれ、現在長野県松本市で市長をなさっている菅谷昭先生が、私たちのためにお話をしてくださいました。先生は甲状腺癌の専門医で、1986年に旧ソビエト連邦のウクライナで起きたチェルノブイリ原子力発電所の爆発事故によって、放射能による汚染を受けた地域の一つであるベラルーシで、1996年から2001年までの5年間、地域の人々の医療支援活動をされてきました。今回の講話では、このときの活動をもとにお話は展開していきました。
 講話の中で一番驚いたことは、先生がそれまでの自分の地位や名誉などを捨てて、活動をはじめられた、ということでした。その事について先生は、自分の人生を振り返ってみたときに、本当に自分がしたいこととは何なのか、何をすべきなのだろうか、ということを考えたときに、こうした活動をすることが自分の人生を再出発、もう一度自分自身を見つめることなのだと考えた、と語っておられました。しかし、いろんなことをもう一度原点に戻して再構築を図るというのは、普通なかなかできることではないし、大変なことです。正直、自分にとっては大きな衝撃でした。また、困っている人、苦しんでいる人を助けてあげたい、ただそう思っただけなのだと、さらりと言ってしまう先生が本当にすごい存在に感じられ、とても強く惹かれました。
今年、私たち3年生は、大学受験という一つの岐路に立つことになります。自分がどういう人間になりたいのか、何をしたいのか。この問題を真剣に考え、悩むことはとても苦しいことです。しかし、それだけ大事なことだし、価値のあることだと思います。今回の講話を通して、私は受験に向かう前に、こうして自分を見つめなおすきっかけと、一つの指針を得ることができ、不安とあせりを少し解消することができました。皆さんも一度、このことをじっくり考える時間を持ってみてはいかがでしょうか。




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