Chernobyl Medical Fund Newsletter (3)

現地の人々に信頼される活動

3年 坪井 麻里佳


 私はもし医者になるのなら、しっかり勉強して経験を積んで、いつかは発展途上国であるとか、十分な医療を受ける事ができない地域に行って何かしたいと考えていました。幸い日本は恵まれた国ですが、世界には衛生状態が悪かったり、飢えであったり、紛争であったりで苦しんでいる人々が沢山います。同じ人間として生まれてきたのに、こんなに違うのはおかしいじゃないか。何かできることがあるならそういうところで尽くしてみたい、そう思っていたのです。
だから原発事故の被害を受けたチェルノブイリに単身で渡った菅谷先生の講演は、海外協力に興味のある身としてとても興味深いものでした。
まず先生のお話を聞いて、自分の甘さに気づかされました。こちらが高度な技術なんかを教えてあげようと思っても、それは場合によっては単なる善意の押し付けになってしまうかもしれないということです。
一方的に良かれと思って何かしようとしても、それはそこでの今までのやり方を否定することにもなり、その国のプライドを傷つけてしまうかもしれない。出向いていく方は部外者にすぎず、これからその国を支えていくのは他でもないその国の人々なのだから。どんなときもそこの人々の視点に立って考えること、行動することが何よりも大切なのだということをずっしりと感じました。相手の方から教えて欲しいと言ってくるのを待つことだって、時には必要なのですね。
甲状腺癌の専門家であり、現地での大きな傷の残る古い手術を見た先生。でも学生達が自ら指導を求めてくるのを待った。今までの私の考えだったら、待つ事なんてもしかしたらできなかったのではないかと思ってしまいます。勝手な善意だけじゃ、よい海外協力なんて成り立たない。自己満足だけで終わってしまうようじゃ意味がありません。
納得して死にたいと、助教授の地位も捨ててチェルノブイリに渡り、高度に汚染された危険な地域にも行き、現地で採れた食べ物を同じように食べた先生。普通の人ならきっと怖くなってしまうような状況だと思います。でもそんなことを恐れる事もなく、精力的に活動された先生は本当にすごいな、かっこいいな、と思えます。口で海外協力をしたいと言うことなんて誰だってできるけれど、本当に現地の人々に信頼される活動を行うのは大変な事なのだと改めて分かった気がします。
先生はずっと穏やかな表情をしていらっしゃいましたが、今なら納得して死ねると言っていたときの先生は、とても満ち足りたように私に映りました。これから私がどんな道に進み、何をしていくのかはまだ分からないけれど、今回聞いたお話は、医療だけに関わらず、あらゆる面に共通する大切なことを含んでいました。しっかり心に留めて、これから頑張っていきたいです。



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