アナスタシア・タルカチョワさんが当院に研修に来られて4カ月になります。 新生児集中治療室で毎日の診療や患者さんの様子を積極的に把握し、記録されています。 特に心臓超音波検査に興味を持たれ、毎日、少なくとも1例から数例の検査を自らされています。 ベラルーシでは、心臓超音波検査を自らする機会がほとんどなかったようですが、見る見る上達され、 多くの新生児や心疾患患者の評価ができるようになっています。 新生児の出生時の蘇生にも興味を持たれ、私たちと蘇生人形を使って気管内挿管をはじめとする蘇生の練習や、 模擬症例のシミュレーションを行っています。空いた時間には、 ベラルーシでは手に入りにくい文献や教科書を熱心に読まれています。 また、実際にベラルーシへ帰国した後を見据え、様々な業務に関心を持たれ、 医師、コメディカルスタッフにレクチャーできるよう用意されている様子です。
彼女は、日本の医療・生活環境・家庭事情などをスムーズに理解され、 診療についてディスカッションする機会が多くあります。 私たちは主に英語でコミュニケーションをとりますが、私たちの語学力のアップにもつながり、 分かりやすく説明しようと勉強するきっかけになっています。 フレンドリーに誰にでも話しかけ、冗談を言い合ったりすることもありますし、 時には彼女のするどい質問にたじたじとすることもあります。
プライベートでは、同僚の女性医師と買い物に行き、多くの衣服を買い、 「ベラルーシより安くて質がいいの」と、おしゃれに気をつかう若い女性らしい一面も見られます。 また、私たちの同僚が参加する市民オーケストラのコンサートや、 佐渡を拠点とする和太鼓グループ「鼓童」のコンサートに行ったりすることもありました。 特に和太鼓の音の響きに感動され、コンサート中も体を乗り出し聴きいっていた姿がありました。
また、私の友人宅のホームパーティーにタルカチョワさんを招待し、焼き肉、春巻き、魚料理、 お好み焼きなどを食べ、ベラルーシのジャガイモのおいしさを熱心に語るなど、 にぎやかに過ごしたこともあります。特に野菜のお好み焼きを気に入った様子で「レシピを教えてほしい」と、 質問をされていました。子どもたちとも優しく遊んでもらい、楽しい時間を過ごすことができました。
5月には、松本市長、当院の中村友彦先生とともに福島県を訪問し、 自らの原発事故体験に基づいたお話をされる機会がありました。
NHKの全国ニュースでも取り上げられましたが、小児科医として、子を持つ保護者の方の不安解消に一役かっておられます。
日本の大震災・原発事故のこと、ベラルーシの政情を心配されたり、ベラルーシが恋しいと、 私の隣の席でつぶやかれることもありますが、日本での研修生活を公私ともに楽しんでおられる様子です。