村木 優一 先生(京都薬科大学 臨床薬剤疫学分野 教授)
感染症治療に強い薬剤師になるための頼れる味方!
薬剤師は,感染症の薬物治療が必要な患者さんに病院でも薬局でも必ず遭遇します。そのため,「感染症治療に強くなりたい」と思う薬剤師は多いのではないでしょうか。処方された抗微生物薬の適切性を評価するには,効果を示す側(微生物)の特徴を理解することが必須です。しかし,微生物は多数存在し,分類も多く,そもそも目に見えないため,想像することも難しいです。その結果,志半ばで諦めてしまっている薬剤師も多いのではないかと思います。そのような薬剤師や,これから学ぼうとする薬剤師にとって非常に頼れる味方となる一冊が『続 感じる細菌学 耐性菌&真菌編』です。
本書は,『感じる細菌学×抗菌薬』の第2弾であり,薬剤耐性菌を含めた細菌と真菌を楽しく学ぶことができます。まず,表紙から目を引く本書では,微生物がフルカラーのイラストで示されており,それぞれの特徴が視覚的に理解しやすく解説されています。特に,細菌の薬剤耐性メカニズムについて,基本から応用までをここまで丁寧にわかりやすく解説してくれている書籍は類を見ません。第2弾となる今回は,真菌に対しても詳細な解説が加わっており,第1弾を購入した読者も新たな知識を増やすことができます。
「細菌学は難しい」と感じている薬剤師や薬学生にとって,本書のコンセプトは「細菌楽(さいきんがく)」であり,著者の染方史郎(金子幸弘)先生の「細菌学を学ぶなら楽しく学んで欲しい」という熱い想いが最初のページから最後のページまで随所に感じられる一冊です。薬剤耐性(AMR)は世界的な問題となっており,一人でも多くの薬剤師が薬剤耐性菌を正しく理解し,抗微生物薬の適正な使用に関わるために必読の書籍です。ぜひ本書を手に取って楽しく学び,感染症治療に強い薬剤師になりましょう。
菅原 えりさ 先生(東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 感染制御学 教授)
魔法のツアーコンダクター
待望の第二弾『続 感じる細菌学 耐性菌&真菌編』が刊行された。まず,刊行の時期に驚いた。新型コロナウイルス感染症のド派手なパンデミックが去り,「サイレントパンデミック」に向き合わなければならない難しい日常が帰ってきた矢先という絶妙さである。そして第二弾は,あの難しい「耐性菌」,そして「真菌」がテーマだという。さて,染方史郎先生,今度はどんな風にやさしくかみ砕いて解説してくださるのだろうか。第一弾同様,全編カラーで,キャラクターの活躍が期待される第二弾を手にとった。
ところで,感染症や感染制御に携わっていると,成書「微生物学」を紐解くことがしばしばある。しかし,その難しさに圧倒されると感じている方も多いのではないだろうか。私もその一人である。
では,本書はどうだろう。MRSAの解説の冒頭には,第一弾で紹介された「グラム陽性球菌一派」が登場! 「団子で語ろうぜ〔カタラーゼ(+)〕」では思わず吹き出し,「もうこれで絶対忘れない!」とほくそ笑む。少なくとも「難しくて圧倒される」気分にはならない。一方,約9ページにわたる耐性機構の解説にはやはり心してかかる必要があるが,しかしさすがは染方史郎先生,難しい内容でもキャラクターを駆使し,短い文章でやさしくまとめられた解説を読み進めると,「あっ!そうだったのか」と思わせてくれる。それはその後に続く耐性菌の解説すべてにおいて同様である。もちろん,真菌についても物語を読むようにその世界に触れることができ,さらにコラムの「Advance」や「ちょっと横道」は細菌学の奥深さを感じさせてくれる。
まさにほくそ笑みながら読み進めるうちに,細菌学の重要なポイントを身に付けることができる,こんな指南書が他にあるだろうか。著者の染方史郎先生こと金子幸弘先生の「難しいことをやさしく伝えるご努力とご見識」に心から感謝と敬意をお伝えしたい。
「感じる細菌学シリーズ」は,複雑でちょっと近寄りがたい細菌学ワールドの旅を「大丈夫だから一緒に行こうよ」といざなう,「魔法のツアーコンダクター」である。
さぁ! しばしツアーコンダクターに身をゆだね,細菌学ワールドに足を踏み入れてみよう! 感染制御がもっと楽しくなること間違いない。
栁原 克紀 先生〔長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野(臨床検査医学) 教授〕
細菌学を楽しく学べる良書
私と金子幸弘(染方史郎)先生との付き合いは,彼が医学生である1995年くらいからである。そのころから金子先生は細菌学に興味があり,緑膿菌の実験をしている私のところに手伝いにきていた。それから,細菌学に関する研究で博士号を取られ,米国留学時も緑膿菌の研究室である。彼の人生は迷いなく細菌学研究の一本道であった。そのように細菌学を愛する金子先生がまとめた『感じる細菌学』は,親しみやすいイラストと,わかりやすい文章で,多くの方に愛読されている。今回の続編も素晴らしい出来栄えであり,薬剤耐性菌と真菌といったやや難解なテーマであるにもかかわらず,読みやすい内容になっている。趣向を凝らしたイラストを見るだけでも知識として吸収できる。金子先生の創意工夫が活かされており,登場するキャラクターを一見するだけで,その特徴を理解できる。私も大学で細菌学を講義する立場であるが,菌の特徴を明瞭に表現したイラストには驚嘆している。
金子先生は内科医としても経験が豊富であり,臨床感染症学もあわせて学べることも本書の特徴である。感染症学と細菌学は密接なつながりがあり,細菌学の知識は感染症学や感染対策を理解するうえで必須である。
医師,薬剤師,臨床検査技師,看護師などの医療関係者に加えて,医学生や医療関係学部の学生にぜひ,読んでいただきたい。楽しい細菌学を感じていただけるものと確信する。読まれた後には,耐性菌や真菌について深く理解していることに気づかれるでしょう。