【学会レポート】第27回日本医薬品情報学会総会・学術大会

第27回日本医薬品情報学会総会・学術大会が7月5、6の両日、広島大学霞キャンパスで開催された。メインテーマは「情報氾濫社会に立ち向かう医薬品情報リテラシー~正しい情報・求められる情報~」。医療現場でも生成AIの活用が急速な広がりをみせるなか、薬剤師の医薬品情報への関わり方をめぐり16のシンポジウムなどで議論が展開された。
誰でもできるからこそ質の高いDI業務を
初日のシンポジウム「情報氾濫社会における医薬品情報業務の新たな潮流~進め方2018から未来へ 課題解決の最前線~」では、7年前に作成された「医薬品情報業務の進め方2018」(以下、進め方2018)を更新するにあたりどのような内容を盛り込むべきか、作成当時から薬剤師の役割・位置づけが大きく変わった状況を踏まえ意見が交わされた。
薬剤師の病棟業務が広がり、医薬品情報を使いこなすスキルはDI室担当のみならず、全ての病院薬剤師に求められるようになった。そんななか病院薬剤師による医薬品情報の取り扱い方を解説する資料として、日本病院薬剤師会がまとめたのが進め方2018だ。「1.医薬品情報の収集、専門的評価、整理・保管および加工」~「12.地域におけるDI業務の連携」の12項目で構成されている。
シンポジストの望月眞弓氏(慶應義塾大学名誉教授)は、進め方2018に日病薬の医薬情報委員会委員長として携わった立場から、作成の経緯を紹介した。
望月氏は、作成当時の時代背景について、診療報酬で薬剤管理指導料や病棟薬剤業務実施加算が新設されるなど、薬剤師への期待が大きくなる一方で、PubMedの無料使用開始や医薬品情報提供システムの整備、インタビューフォームの電子化などを通じ、誰でも医薬品情報にアクセスしやすい環境が生まれたと説明。医療分野を含む社会全体の情報化が急速に進むなかで、「誰でもできる医薬品情報業務。でも、ちゃんと質を担保して、診療報酬請求に値するような医薬品情報業務を皆さんでやっていきましょう」という考えのもと、進め方2018がまとめられたと語った。
そのうえで、医薬品情報業務はDI室の専任の担当者だけでなく、病棟薬剤師を含む薬剤部全体で取り組む必要があると強調。これからの薬剤師の情報への関わり方について「人工知能を利活用するためには、私たちが本質を見極める目利きになっていないといけない。医薬品情報の基本を学んでいないと、それはできない」とし、生成AIの出す答えが正しいか間違っているかを見極めるのが医薬品情報業務だと訴えた。
医薬品情報業務の進め方2018の12項目
より実践的な医薬品情報教育をめざす
アカデミアの立場で登壇した田坂祐一氏(就実大学薬学部)は、進め方2018の項目として「9.薬剤師および薬学生に対する基本的なDI業務および専門性を高めるための教育と訓練」が挙げられているのを踏まえ、医薬品情報教育の現状を紹介した。
田坂氏は、令和4年度版の薬学モデルコアカリキュラムでの医薬品情報関連の記載について説明。改訂前の「薬物治療に役立つ情報」が「医療における意思決定に必要な医薬品情報」に改められたことや、所々でビッグデータに言及されていること、病態生理や薬剤の作用メカニズムなど他の学習内容と医薬品情報との統合が謳われていることなどを示し、臨床での活用を念頭に置いた教育がいっそう求められていると説いた。
実際に就実大学では、症例検討会やプレアボイド事例を使った授業など、より実践的な教育が行われているという。症例検討会は4年次に5日間・16コマで設けられ、難易度が高めの症例に対し、学生はシミュレーターでバイタルサインを確認したり、医師に電話で連絡して指示を仰ぐなど、さまざまなアプローチで必要な情報を入手する。
こういった授業のねらいについて田坂氏は、「頭で知っているのと、使えるのとは違う。学生にはどんどん手を動かしてもらう」とし、実際に臨床で行われている医薬品情報業務に直結する教育の必要性を指摘。医療従事者だけでなく患者もAIを使う時代を迎えつつあることから、「情報リテラシーを高める教育が求められ、求められるリテラシーの質・内容も変わってくる」と主張した。

