Chernobyl Medical Fund Newsletter
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カーチャ医師東京研修

       

  <9月8日〜12日のスケジュール>
9月8日(金) カタログハウス、じほう、ベラルーシ大使館訪問
9月9日(土) 鎌倉にて日本伝統文化見学・妙法寺ご住職説法
9月10日(日) 表千家、日下宗幸先生宅でお茶席
9月11日(月) 橋本すみれさんがカーチャを東京案内
9月12日(火) じほうに於いてインタビュー


 
 カーチャさんの東京研修、1日目の公式訪問を終え2日目は鎌倉に行きました。海のない国からきた彼女と湘南の海の風景を楽しんでから、街歩きです。カーチャさんは狛犬が大のお気に入りで、道々で見つけるたびに「コレクション!」といって写真に収めていました。「口を開いている方が『あ』、閉じている方が『ん』と言っているのよね」と、そんなことまで知っています。 カーチャさんの東京研修、1日目の公式訪問を終え2日目は鎌倉に行きました。海のない国からきた彼女と湘南の海の風景を楽しんでから、街歩きです。カーチャさんは狛犬が大のお気に入りで、道々で見つけるたびに「コレクション!」といって写真に収めていました。「口を開いている方が『あ』、閉じている方が『ん』と言っているのよね」と、そんなことまで知っています。
 高徳院の大仏や長谷寺に詣でてから、妙法寺に向かいました。広くひんやりとしたお庭で、カーチャさんがしゃがみこんだ石段の根元には、小さな小さな、苔むした観音像がありました。その足元の石の割れ目につめこまれた硬貨を見て、小さな声で「これは仏様へのプレゼントなの?」と尋ねるので、「そう」と答えると、彼女も1円玉を取り出し、軽く押し頂いてから、そっと苔の間におしこみました。
 それから、御年90歳のご住職の説法をうかがい、お寺の中を案内していただくと、本堂には親孝行を称える、中国の昔話の一場面が描かれた襖絵がありました。ご住職の日本語の説明が一区切りしたところで、カーチャさんが待ちきれない、という風情で「全部説明して!」と言います。そして私のつたない英語に真剣に耳を傾けながら、「きれい」とつぶやき、ずっと絵に見入っているのでした。
 純粋にこの東洋的な絵をきれいと思ったこともあるでしょう。でもそれだけでなく、彼女の態度からは、その教えや、宗教的な意味もしっかりと理解したい、という真摯な気持ちが感じられました。
 さて、翌日は着物を着ての茶道体験でした。着付けが始まった途端、カーチャさんは興奮した様子で「写真を撮って!」と言います。あられもない下着姿に鳥居さんからは「まだダメ!」と制止の言葉が出たのですが、カーチャさんはかまわず「全部撮ってほしいの!」(この、下着姿から青い目の大和なでしこになっていく記録写真は、後日こども病院で同僚たちに自慢したそうです)。
 ようやく着付けを終えて、先生のもとへ向かいました。お作法を教わりながらの茶道体験、一杯目は口に合うかわからないということで、薄めのお抹茶をいただきます。その後、スタンダードなものを味わいたい、という希望で薄めないのもいただきました。周囲の心配そうな顔にカーチャさんはすまして「おいしい」。最後はなんと、カーチャさんのお点前です。初体験とは思えない手つきで、一杯一杯、丁寧にいれてくれました。
 すべてを終えると、カーチャさんは「足が痛い〜!」と言ってよろよろと立ち上がりました。正座が相当つらかったのでしょう。足の痛みも含め、きっと忘れがたい思い出になったことと思います。
 5日間、この他にも書ききれないくらいの体験をしてもらいました。なんだか遊びみたいだと思われる方もおられるかもしれません。たしかに彼女は小児科研修のために日本にやってきたのですが、私は、日本の文化にふれ、学ぶことからも日本を好きになってほしい、そしてベラルーシに帰ったら、小児科医として活躍することはもちろん、日本をよく知る友人として、友好の懸け橋になってほしいと願ってやみません。
 いつもあたたかいご支援をいただいている皆様に、今回の東京研修につき、ご理解をいただければ幸いです。そして、カーチャさんをもてなしてくださった妙法寺の藤田教忠先生、お茶の日下宗幸先生にこの場をお借りして心からの感謝を申し上げます。最後に、カーチャさんの東京滞在は、細かなスケジュールを組み、快くご自宅にホームステイさせてくださった事務局の鳥居さんのご好意なくしてはなりたちませんでした。お疲れ様でしたと、ありがとうございましたを同時に申し上げて筆をおきたいと思います。


(橋本すみれ)



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