Chernobyl Medical Fund Newsletter
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2008年

ベラルーシ訪問報告記

                 千原 幹司


 今回は、7月25日から8月2日にかけ、事務局の千原、中澤と長野県立こども病院新生児科部長の中村先生、新生児科の佐野先生の4名。私以外のメンバーは初めてのベラルーシ訪問となり、私が団長として訪問目的の達成と、訪問中のメンバーの健康や安全の確保を任されることになり、前回までの訪問とは違う緊張感を持って出発しました。


【7月25日(金)】
10時55分成田出発、ウィーン経由ミンスク着22時、乗り継ぎを含め約20時間の空の旅でしたが、通関もスムーズに通り抜け、通訳の小川さんと運転手のワゴーチャの出迎え。
【7月26日(土)】
9時50分、ベラルーシ国立医科大学のベスパルチョク学長に面会、我々の今回の訪問目的を述べ、1時間にわたり学長よりベラルーシの医科大学における医師 育成の状況を聞きました。
11時30分、国立医療研究所RNPC“Mother and Child”を訪問し所長のイリーナ先生に面会。
【7月27日(日)】
ミンスクからモーズリ市へ 
5年前に私が訪れた時とほとんど変わらず人々は川遊びや公園の散歩を楽しんでいました。
【7月28日(月)】
10時、モーズリ市役所を訪問。ガリョク副市長とバラーノフ医師会長面会
 副市長から、「菅谷先生はモーズリ市民にとって平和の使者と思っている、なぜなら町の苦しい時期に先生が来て病院の医療物資を支援し、多くの住民の検診をしていただき、その効果が多大であったことを大変感謝している」との言葉をいただきました。
市内の産院訪問、マルチノビチ院長(副市長、医師会長同行)
 カーチャが勤務している病院です。本人は数カ月前から他の約束があり、再会はできませんでした。院長とカーチャの母親(当院の産科責任者)は彼女の帰国後は新生児医療に自信がつき、行動は活発になり新生児室を静かに保つことや、インヒュージョンセラピーの認識も得る等の効果はあったとのことでした。
12時、小児病院訪問。オルジェホフスキー院長面会、
昼食後ゴメリに移動
15時、ゴメリ産院。医科大学産婦人科のパラノフスカヤ教授とご主人のボロニャンスキー(同大学の小児外科助教授)と今後の医療支援活動に対する貴重なお話ができました。
【7月29日(火)】
朝、ゴメリ産院訪問
 この医院は年に一度の1カ月間の院内清掃で医師も看護師も休み、パラノフスカヤ教授夫妻に病院内を案内していただく。この医院はゴメリ州で一番古く、一番多いこどもの出産数がある。医療機器等も保健省の副大臣の力で新しいものが設置されていた。
11時30分、ゴメリ州立病院付属産院。ボロニャンスキー助教授の案内
【7月30日(水)】
10時、保健省を訪問。シエフチュク副大臣に面会
 中村先生が今回のべラルーシ国内の病院見学で感じたこと、パラノフスカヤ教授に頂いたご意見等を話し、30分の面接時間の予定が副大臣自身が質問や要望の話に夢中となり1時間となりました。
11時20分、ミンスク市立第2病院(小児病院)訪問
13時20分、ミンスク市立第3病院(小児病院)訪問
 両病院とも新しい設備や外国製の最新の機器が入っていました。
 見学終了後、小川さんの娘のアパートで食事会。市場で魚の燻製、肉や新鮮な野菜の食材とお酒類を買い、自炊でおいしいご飯をいただきました。
【7月31日(水)】
9時、ミンスク市立第1病院(産科病院)訪問。講座長のイリーナ医師が案内
11時、ミンスク市立第6病院(産院)訪問
14時、ミンスクからウィーンへ。市内のホテル泊
【8月2日(土)】 
7時50分、成田帰国


 今回は、ミンスク、モーズリ、ゴメリへの車による長距離の移動に加え、各地の小児と産科の病院を9つ視察し、かつベラルーシ国立医科大学、保健省の訪問及び大学教授との面談等を正味5日間で実行しました。
 訪問先の時間や面会者については、通訳の小川さんが綿密に手配・準備していただき、全ての予定した訪問や視察はでき、中村先生、佐野先生にはベラルーシの医療体制や産科と新生児医療の現状を理解していただいたと思います。
 ただし、全ての訪問先において中村先生が世界のトップレベルの技術や知識を持っていることに気がついたベラルーシの医師からは、新生児死亡率の低い県立こども病院の医療体制や、医療システムの内容等についての質問等も多くあり、次の訪問先への予定時刻を過ぎてしまうことが多々あり、訪問スケジュールの完遂は大変忙しいものでした。
 日本の医療支援で多くの医師がベラルーシの病院を訪問されていますが、新生児医療の専門家が来たのは初めてだという病院がほとんどでした。
 ベラルーシには日本のこども病院のような全科の医師がそろい、先天性障害を持って産まれた子供に対する治療が素早くできる病院や体制がなく、その都度専門病院に搬送し治療を行うという以前の日本の医療体制であることも分かりました。
 保健省の副大臣やゴメリ医科大学のパラノフスカヤ教授をはじめ各地区の産科・小児病院の医師は、日本の新生児医療についてもっと詳しく知りたい、そのノウハウや技術を学びたい、そのためには日本への医師の派遣や、日本の医師がベラルーシに来て長期滞在し、医療の現状をよく見ていただくこと、ベラルーシの医師との講習会や研修会を開催することなどの知識の交流を図ってほしいとの要望が出ました。
 中村先生、佐野先生という新生児の専門家の医師を同行した今回の訪問は、チェルノブイリ事故で被曝したこども達が母親となる年齢となり、先天性障害を持って産まれるこども達への治療やベラルーシの新生児医療体制の構築ために役立つ支援の方向が明確になったことが大きな成果だと思います。
 中村、佐野両先生の現地でのエネルギッシュな見学や対応がこのような明確な支援の方向性を生み出していただいたことに感謝し、またこの忙しい現場の両先生を快く送り出していただいた県立こども病院の宮坂院長先生に深く感謝いたします。
 CMFの中澤スタッフにはカメラマンの役割や訪問団メンバーへの細やかな気配りで疲れを癒したことの感謝、また訪問のための日程や宿泊の手配等の完璧な準備をしていただいた宮田理事長、北和田副理事長、ベラルーシ領事館と折衝した鳥居さんに感謝いたします。
 最後にこの訪問団が成果を上げるための訪問先の決定、面会のアポイント、我々の目的や意思を伝え、医療の専門用語も難なく通訳していただいた小川さんに深く感謝いたします。


          



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