Chernobyl Medical Fund Newsletter(4)


 2010ベラルーシ訪問報告記

CMF理事長 千原 幹司

ベラルーシ訪問報告記 7月23日:松本を出発、成田空港ホテル泊。

7月24日:10時55分成田を出発、ウイーン経由で22時50分ミンスクに到着。

7月25日:ベラルーシは100年ぶりの暑さということで、エアコンのない部屋は一晩中31度を表示しており、まどろむ程度で朝を迎えました。

 研究のためミンスク滞在中の長崎大学大学院生の増永さんをメンバーに加え、ゴメリに向け出発。14時30分にゴメリのホテルに到着、菅谷先生が13年前に甲状腺の手術をしたターニャと再会。30分後には7月に日本で研修したオクサナ医師との再会。

菅谷先生はターニャの現在の体調や、医学部への進学の様子を、中村先生はオクサナ医師と明日の講演会の打ち合わせをしました。

 18時にタッチヒン先生と8名で市内のレストランにて夕食をとりました。ホテルへの帰路、オクサナ医師の自宅前でご主人と息子のジーマを紹介。その夜、我々はエアコン付きの新しいホテルでぐっすり眠ることができました。

7月26日:9時ゴメリ医科大学訪問、オクサナ医師同行でリズュコフ学長に会う。最近ゴメリ地域は新生児の死亡率が高くなっている。その原因は、ゴメリに放射能障害の治療を行うために被爆した多くの人達が住み着いたことです。

 9時30分、ゴメリ州保健局訪問。保健局長は他会議出席で副局長のプリストーピン氏と医師会長のノビコフ氏に会う。

 被爆患者の治療支援は日本が一番に始めてくれて感謝していること、新生児死亡率はまだ5.4‰だが20年前に比べて4分の1になった。そして中村先生のレクチャーは大変重要視しているとのこと。

 10時30分ゴメリ市立第一病院訪問、総合院長とスミルノフ産科院長に会う。産科院内見学、昨年改築の建物で医療機器は国産が多かった。

 11時30分より講義室で中村先生の講演を開始、中村先生がスライドを見せながら英語で講演、オクサナ医師がロシア語に通訳。質問は12件位ありましたがオクサナ医師のスムーズな通訳で終了。

 3年前に招聘したカテリーナ医師やオクサナ医師の上司であるパラノフスカヤ教授夫妻も講演を聴きに来ていました。

 30分の休憩後、今年度の日本への招聘医師の面接。

 今回はアプリケーションフォームや資格条件等を訪問前に希望者宛に配布してあるためか、ほとんどの応募者は英語を話すことができました。9人の応募者の中から3人を絞り込みました。

 16時州庁舎でヤコブソン知事、市長、ワシリコフ保健局長と会談。

 知事はゴメリ州の産業や医療の現状を説明し、我々の支援活動に協力する旨の話がありました。

菅谷先生に行政職の立場での質問がありました。

 菅谷先生は知事にゴメリ州においては子どもの死亡率を下げる必要がある、そのためには行政と医療の人がよく考え、システムを変えることも考えてほしいと提言しました。

 会談後、地元の放送局が来ていて、菅谷先生とオクサナ医師にインタビューもありました。

7月27日:9時30分保健省訪問、シェフチェク保健副大臣は多忙で面会できませんでしたが、エレーナボクダヌ母子社会部長、シブコフ国際部長、デミチェク教授の3人と会談しました。

 昨年より始めた医療交流について説明し、新生児の死亡率を下げるいい医療システムを学んでいただくために、我々は日本への専門医師招聘だけでなく、行政関係者の招聘も検討している旨を話しました。菅谷先生からいくつかの医療システムの提言をし、その中ですぐできるメディカルライブラリー設置(世界の最新医療技術や情報の図書が少ないとオクサナ医師の話)を話したところ、ミンスク市内に国立医学図書館があり、明日見学することになりました。

 13時30分ミンスク国立小児臨床病院を訪問、ボロニャンスキー施設長とラザレバ保健局小児部部長が出迎えてくれました。中村先生の講演会を開始。講演会は57名の医師の参加、中村先生の新生児の死亡率や治療のデータに驚きの声が上がっていました。エアコンがない会場で汗だくの中村先生のスピーチは、大きなアクションを交え講演は終了いたしました。

 ゲナジー医師とゴメリ州知事とのアポイントを取ってくれた内閣官房室のニコライ氏と会食。

7月28日:9時30分国立医学図書館を訪問。

 国内に158カ所の国立図書館を持っていてインターネット配布も可能とのこと。しかし新刊の医学書はすぐに手に入らない、翻訳はしていない(翻訳本はロシア経由で非常に高価)、努力はしているが基本的には予算がなく、最新の医学書を揃えるのは難しい。予算のある一部の国立病院の先生は、個人で購入。国が翻訳にお金をかけるより医師の英語レベルを上げたほうが早いし効率がよいと考えているとのこと。

 図書室には少し古い医学書は沢山ありました。

 医学歴史コーナーはフランシスコ・スカリナー医師が講義をしている絵や、多くの興味ある歴史的な写真や器具が置いてありました。

 12時、国立医療研究所RNPC“母と子”産科施設を訪問。ナウンチク副所長と産科部門長の案内で施設内を見学。

7月29日:早朝3時にユビレイナヤホテルを出発、ウィーン経由で帰路。

翌30日:朝8時に成田に到着。

 今回の目的である医療交流第2弾の中村先生の講演会もさらに充実、現地の小児、産科の医師には大いに役立つ内容であったと確信しました。

 日本への研修医師の面接も昨年より意欲・語学力ともに高いレベルの人達が集まりました。

 また、ゴメリ州の知事、市長、保健局長やミンスクの保健省、アカデミーのデミチェク教授には我々のこの支援活動の趣旨を理解していただき、研修医師招聘も含め協力の約束を得ることができました。

私は今回の訪問に普段も超多忙な菅谷先生、中村先生のお2人に同行をお願いしました。

 そして正味3日で訪問の目的を達成すべく、ベラルーシへの入国及び帰国に際しても途中泊をせず、ウィーン空港での乗り継ぎの為の長い待ち時間を辛抱していただき、国内の移動や、訪問先等についても今までにないハードなスケジュールを実行していただきました。

 100年ぶりのベラルーシの暑さと、寝不足に負けず全員元気に帰国することができました。これらは全て現地通訳の小川さんが、数カ月前より我々の日程に合わせて訪問先のアポイントやホテルの予約、車やドライバーの確保を完璧にやっていただいているからこそできたものと感謝しています。

 最後に中村先生の汗だくで大きなアクションを交えた英語の講演はあらためて素晴らしいと感じました。またその通訳をオクサナ医師がスムーズに行い、ベラルーシの医師達に理解しやすい講演会にしてくれたことを感謝します。

 ベラルーシに研修留学中の長崎大学の増永さんが訪問中は全て同行し、撮影などいろいろ手伝いをしていただきありがとうございました。




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