「服薬指導のエッセンス 第2版」2027年刊行へ ――著者・鹿嶋直純先生が語る、誕生から10年の歩み

多くの薬剤師に支持されてきた「服薬指導のエッセンス」。その原点は、著者・鹿嶋直純先生が「自分が欲しい服薬指導の本」を求め、仕事で必要な情報をまとめてファイリングしていたことにありました。
2017年に「薬効分類別 服薬指導のエッセンス」として自費出版され、その後、改訂を重ねながら口コミで全国の薬剤師に広がりました。2023年にはじほうから刊行され、現在、初版の販売終了を目前に控え、2027年の「第2版」に向けた改訂作業が進んでいます。
自費出版からちょうど10年という節目を迎える第2版では、どのような進化が遂げられるのでしょうか。「服薬指導のエッセンス」が生まれた背景から、じほう版での見直し、そして第2版に込めた思いまで、鹿嶋直純先生にお話を伺いました。
「服薬指導のエッセンス」が生まれるまで
――薬剤師として現場に立たれるなかで、日頃から大切にされていることを教えてください。
患者さんが求めていることをできるだけ把握して、それに合う服薬指導をしたいと考えています。忙しそうな患者さんには、必要事項を確認したうえで、できるだけ早く終わるようにします。一方で、疑問や問題点がある患者さんには、少し踏み込んで、その疑問や問題点を解決できるように考えます。 患者さんが気持ちよく薬局を出られるように、一人ひとりに合わせた「オーダーメイドの服薬指導」をしたいと思っています。
また、どんな患者さんにも、必ず一言で説明できる事項を加えるようにしています。これは「服薬指導のエッセンス」でも述べています。例えば、吸入薬についてはいくつかのポイントがありますが、どんなに長期間使っている患者さんであっても、必ずポイントをピックアップして最低一つは確認します。そうすることで、患者さんが間違いに気付くこともありますし、「知らなかった」と言われることも多いのです。少し生意気なことを言わせてもらうと、他の薬剤師があまり指導しないことを伝えたいといつも思っています。
――2017年に最初の「薬効分類別 服薬指導のエッセンス」を自費出版されたきっかけは何だったのでしょうか?
当時の服薬指導本は、ほぼ薬の辞典のようなものが中心でした。そこで、もともと仕事で必要な情報を自分でまとめて、ファイリングして使っていたんです。そうしているうちに、「自分が求める服薬指導本を作ってみようか」と思うようになりました。もっと現場に即した、生々しい服薬指導本があってもいいと思ったんです。
また、できるだけ時間をかけずに患者さんに投薬するにはどうしたらよいかを考えたとき、すぐに判断できるような資料が欲しかったというのもあります。今はインターネットの時代ですが、紙媒体のほうが早いこともあります。おそらく、インターネットで出てくる情報が、自分の欲しいことをすべて網羅しているわけではないからだと思います。
そして、もう一つのきっかけが、2015年に膝の半月板の手術をして、数カ月仕事ができない時期があったことです。あまりにも時間があったので、「書いてみよう」と思ったという感じですね。
――「自分が欲しいものがないなら、自分で作ってしまおう」というところから始まったんですね。個人出版で改訂を重ねるなかで、全国の薬剤師の間で「伝説の参考書」として口コミで広がっていきました。当時の反響や、読者から届いた声で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
「伝説」というのは少し微妙ですが(笑)、Amazonの書評などを思いのほかたくさんいただいて、驚きました。
特に印象に残っているのは、「ブランクから復帰するときに助かった」というコメントが多かったことです。やはり、少しブランクがあったりすると、不安のほうが明らかに勝ちますよね。もし、この本で少しでも不安を解消できたのなら、本当に良かったと思いました。
「情熱・熱量が伝わる」というコメントが多かったのも意外でした。そんなに情熱を持って書いたつもりはなかったんですけどね(笑)。
じほうからの刊行と、読者からの反響
――じほうからの刊行にあたり、個人出版時代と比べてアップデートした点はどこでしょうか?
実は、構成自体は自費出版時代とあまり変えていません。担当者さんと相談して、これまでの読者さんが慣れているスタイルを踏襲することにしました。
アップデートしたのは、ガイドラインなどの参考文献を反映させたところです。自費出版時代は、自分の頭に残っていたことやノートに書いてあったことをそのまま書いていました。もちろん参考文献はありましたが、掲載はしていませんでした。
じほうから出すにあたり、参考文献を確認していくなかで、「自分が大事だと思っていたことが、実はそこまで重要視されていない」ということに気付くこともありました。その結果、削除した部分もあります。
――じほう版の刊行後、周囲の反応に変化はありましたか?
単純に、たくさんの人に読んでいただきましたし、SNSのフォロワーが増えたりしました。SNSであまりやり取りのなかった方でも、私の本を知ってくれていて、名前を覚えていてくれることもあり、新たな交流が生まれたりしました。
おもしろかったのは、私の姉も薬剤師なのですが、姉の職場のスタッフが「いい本がありました」と姉に見せてきたのが、私の本だったということですね(笑)。
制作中の「第2版」について
――現在改訂を進めている「第2版」のポイントを教えてください。
今回は、0章として「服薬指導のルール」というテーマを追加しました。これまでの経験をもとに、自分が必ず守っているルールをまとめていますので、参考にしていただけると嬉しいです。
そのほかは、いつもやっていることですが、現場で必要だと感じたことを、できるだけ漏らさず書くようにしています。それが時代とともに変わっていくのもおもしろいですね。自分の考え方が変わっていくこともありますし、今回は併用注意について定量的に評価したいと思い、かなりのボリュームを割きました。
表も大幅に改訂したり、新しい表を作ったりしています。SGLT2阻害薬など、使用頻度が高い薬の部分もかなり改訂しました。また、表については、ジェネリックのある薬剤には、できるだけ一般名も入れるようにしています。大きく変えたというよりは、日頃の業務で感じたことを、そのまま反映したという感じですね。
――日々の現場で感じたことを、そのまま反映した第2版ということですね。執筆・改訂作業のなかで、特に意識していることや、苦労されている点はありますか?
基本的に、ネタを探して書くということはせず、頭の中に残っていることを書くようにしています。本文を書くときに一番気を付けているのは、知識だけの羅列にならないようにすることですね。何としても自分の経験を書きたいので、できるだけ現場ネタを書き忘れないようにしています。ただ、どうしても知識の羅列になってしまう部分を避けられないのが難しいところです。
改訂するうえで大変なのは、参考文献に用いているガイドラインが変更されることです。大事な部分なのに削除されているケースもあり、頭を悩ませることもありました。
表の改訂にもかなりの労力が必要です。日頃から新しい薬が出たら対象の薬剤を追加していくようにしていますが、改訂版を出すことが決まったときに、あらためて再確認しました。PMDAを使って、かなりアナログな方法で検索して確認しています。できるだけ漏れのないようにしています。
実は試しに生成AIを使って表を作ってみたこともあるのですが、やはり自分が満足できるものにはなりませんでした。今回の表に載っている薬剤は、生成AIで作った表よりも確実に多いと思います。
読者の皆様へ
――本書を、日々の服薬指導でどのように活用してほしいですか?
ひとまず、本文は読み物として読んでいただきたいと思います。今はスライドやイラストなど、一目でわかるものが主流ですが、あえて読み物にしています。そのほうが、現場の空気感が伝わるような気がするんです。もし「服薬指導のときに使えそう」と思ったところがあれば、すぐに読み直せるように付箋などを付けてみてください。
実際に現場で使うのは、本文よりも表のほうが多いかもしれません。自分が確認する頻度の高いところには、付箋で見出しを付けたりすると、すぐに確認できると思います。
――第2版の発売を心待ちにしている読者の皆様へ、メッセージをお願いします。
第2版が発売される2027年は、私が自費出版を始めてからちょうど10年になります。自費出版の初版に比べると、かなりブラッシュアップしていますので、昔からの読者の方には「鹿嶋も成長したなぁ」と思ってほしいですね(笑)。
とにかく10年やってこられたのは、読者の皆さんのおかげです。心から「ありがとう」と伝えたいです。
また、服薬指導について不安のある方が、少しでも不安を減らす手助けになるなら、本当に嬉しいです。最終的に、患者さんの治療に貢献できるのなら、こんなに嬉しいことはありません。
「服薬指導のエッセンス 第2版」の刊行時期や詳細が決まり次第、じほうWEBサイトにてお知らせいたします。