2025.02.06

はじめよう! ポリファーマシー対策[月刊薬事]

はじめよう! ポリファーマシー対策[月刊薬事]

 超高齢化が進むなか、多剤併用による「ポリファーマシー」が注目されています。ここでは、ポリファーマシーの背景とその対策について紹介します。

ポリファーマシーって何?

 複数の薬剤を服用することで薬物有害事象や服薬アドヒアランス低下などの問題が生じる状態を指します。特に高齢者で多くみられ、不要な処方や過量投与も含まれるため、適正な薬物管理が重要となります。

ポリファーマシーが起こる原因は?

 ポリファーマシーになる背景には、以下のような要因があります。


1.新しい医薬品の増加


 医薬品開発の進歩により、新しい薬剤が次々と上市される一方で、複数の薬を飲む高齢者も増えています。


2.多疾患併存(マルチモビディティ)


 高齢になると複数の病気を抱えることが多くなり、結果的に複雑な治療計画になり、多剤併用に至ります。


3.ガイドライン治療の影響


 病気ごとの標準治療を重ねることで、疾患管理が複雑化し、薬剤数が増える要因にもなっています。


4.医療リテラシーの不足


 薬への過度な信頼や生活習慣の軽視、副作用や薬の相互作用への理解不足がポリファーマシーを助長し、問題を悪化させることがあります。


5.医療情報の共有不足


 医療機関間での情報連携が不十分な場合、患者の服薬状況が適切に評価されず、不必要な薬が処方される可能性があります。

ポリファーマシー対策のポイント

 ポリファーマシーを改善するためには、以下のアプローチが重要です。


1.処方カスケードの評価


 薬の副作用が新しい症状や病気と誤解され、さらに新しい薬が処方される「処方カスケード」。これを防ぐには、症状が薬に起因している可能性を慎重に評価し、必要なら処方を見直すことが大切です。特に高齢者では、転倒や便秘、食欲不振といった「薬剤起因性老年症候群」が頻繁に発生するため注意が必要です。


2.高齢者総合機能評価(CGA)の活用


 ポリファーマシー対策には、患者の全体像を把握する包括的な評価が欠かせません。CGAでは以下の項目を多角的に評価します。

・身体機能
・認知機能
・心理的健康
・社会的状況

 この評価をもとに、薬の減量や適切な治療法の検討、他職種との連携による支援が可能になります。

【お役立ちツール】

高齢者総合機能評価(CGA)について詳しく知りたい方は「日本老年医学会:高齢者の機能評価. 高齢者診療におけるお役立ちツール」をご覧ください。



2.「おくすり問診票」の活用


 「おくすり問診票」を使用すれば、患者や家族が薬の影響を自己評価できます。例えば、認知機能低下や排尿障害など、薬が原因で起きている可能性のある症状を把握し、処方の見直しにつなげることができます。

おくすり問診票

〔渡部智、他:日本老年薬学会雑誌、7 : 16-24、2024より〕

【お役立ちツール】

「おくすり問診票」について詳しく知りたい方は「国立長寿医療研究センター:健康長寿ナビ」をご覧ください。

まとめ

 ポリファーマシー対策には、処方薬の見直しと患者全体を包括的に評価する姿勢が不可欠です。薬剤師が他職種と連携し、適切な薬物療法を提供することで、患者の生活の質を向上させましょう!

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