薬剤師は“子どものこころ”にどう寄り添うか?【月刊薬事2026年3月号】

近年、子どものこころに関わる薬物療法は大きく進歩し、心身の成長を支えていますが、一方で若年者による医薬品のオーバードーズ(OD)など新たな課題も見過ごせません。そんななか、月刊薬事2026年3月号では、特集「子どものこころの成長を守る薬物療法」を企画しました。企画のねらいや読みどころなどをオーガナイザーの石川洋一先生に伺いました。
子どものこころの発達に、もう一歩踏み込んだ理解を
子どものこころに関わる薬物療法は、ADHDの治療薬をみても近年画期的な進歩を遂げているのがわかる。これらの医薬品の電子添文の記載には、「効能又は効果に関連する注意」の項に「米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施」の記載が加わり、適正な治療に向けた統一的方針も明確になった。
このような変化があるにもかかわらず、いまだに薬剤師には情報も経験も不足しており、病院薬剤部はこころの病棟にしっかり踏み込めていないのではないだろうか。そこで、子どものこころの病気である神経発達症と心身症について、根本からの知識および臨床現場での事例を提示し、その理解を深めたいと考えた。
また治療の進歩とは真逆に、医薬品の薬物療法が誤った方向に用いられて、子どもたちを危機に陥らせている現状がある。特に「オーバードーズ」という事象は、大きな社会問題となっている。薬剤師的な視点では、それを防止することが解決の手段と考えがちであるが、オーバードーズという問題が果ては小学生にまで広がっている実態をみるに、なぜオーバードーズをするのかという原因まで踏み込んだ理解がなければ、この問題の改善に薬剤師が参画できないことを再認識させられる。
本特集は、子どものこころの成長を守る薬物療法について、この両極を包括した内容とした。最新の治療への考え方と薬物療法について、神経発達症とその薬物療法については精神神経領域のガイドラインであるDSMの総論も含めて、国内最大級のこころの病棟をもつ施設の児童・思春期精神科 長沢崇先生をはじめとする同診療科の先生方から、成人とはまったく異なる子どもの心身症の考え方については日本小児心身医学会の石﨑優子先生からご教示をいただいた。オーバードーズの考え方については、「オーバードーズする子どもたち」(合同出版、2025)をご執筆の松本俊彦先生にご教示をいただき、薬学系の先生方からは関連の研究をご紹介いただいた。
そして実践的な知識の収集を考えて、子どものこころの病気とオーバードーズそれぞれについて、実際の事例を各領域の先生方からご執筆いただいた。
本特集をご覧いただき、keywordであるDSM、神経発達症と子どもの心身症、オーバードーズについて理解を深め、薬剤師という専門的能力を活かして子どものこころの成長を守るために、もう一歩前進いただければ幸いである。
石川 洋一

月刊薬事 2026年3月号(Vol.68 No.4)
【特集】
悩みは何? それはダメなの?
子どものこころの成長を守る薬物療法
近年、子どものこころに関わる薬物療法は大きく進歩し、心身の成長を支えていますが、一方で若年者による医薬品のオーバードーズ(OD)など新たな課題も見過ごせません。本特集では、小児の神経発達症群や心身症についてDSMの考え方と標準的な薬物療法、そしてODの現状を学び、子どもの成長に寄り添いながら薬剤師としてどのように関われるか? 一歩を踏み出すためのヒントをまとめました。