2026.10.22

初の書籍を制作中!――「ひゃくさん」さんが届ける、薬剤師の学び

 病院で薬剤師として働きながら、学んだことや医療現場で役立つ薬の情報をSNSで発信している「ひゃくさん」さん。現在では13万人を超える方にフォローされ、薬剤師だけでなく、看護師をはじめとする多くの医療従事者に向けて、専門的な内容をわかりやすく届けています。
 現在、じほうでは「ひゃくさん」さんとの書籍づくりが進んでいます。制作中の本は、病棟で出会うさまざまな「なぜ?」を入り口に、疾患と薬剤、そして実際の処方について考えながら学べる一冊。「処方の謎を解く」「ひゃくさんの推理ノート」など、謎解きのように処方を読み解いていく構成を取り入れているほか、イラストも豊富に盛り込み、忙しい医療スタッフにも手に取ってもらいやすい本を目指しています(タイトル未定)。
 SNSでの情報発信から、今度は一冊の本という形で薬の学びを届けようとしている「ひゃくさん」さん。今回は、SNSでの情報発信を始めたきっかけから、現在制作中の本への思いまで、お話を伺いました。

「自分も、有益な情報を届けたい」から始まった発信


――「ひゃくさん」としてSNSでの情報発信を始められたきっかけを教えていただけますでしょうか?

 もともとはTwitterとブログでした。国家試験の情報や、薬剤師になってから自分が学んだことを書いていました。自分が勉強で迷ったところは、きっと同じように迷っている人がいるだろうと思ったんです。
 Instagramを始めたのは、当時すでに発信されていた薬剤師の方の投稿に、すごい反響があったからです。それを見て、この形ならもっと多くの人に届けられるかもしれないと思いました。
 届けたい相手には、最初から看護師さんも入っていました。病棟で患者さんに薬を渡して、飲んだあとの様子をいちばん近くで見ているのは看護師さんです。看護師さんに薬のことが伝われば、そのぶん患者さんのためになると思ったんです。


――なるほど。もともとの発信をベースに、Instagramではより多くの医療職の方に情報を届けていこうとされたんですね。SNSで発信を続ける中で、現在では13万人を超える方に情報が届くようになりました。発信を始めた当初と比べて、届ける相手への意識や、発信に対する考え方に変化はありますか?

 うーん、どうだろう…。フォロワーさんの数が増えたという実感は、正直あまりありません。ただ、こうして改めて考えると、すごく多くの方にフォローしていただいているのだなと思います。
 本を作るにあたって質問箱やコメントで声を募ったところ、薬剤師さんと看護師さんのほかに、管理栄養士さんや、登録販売者さん、いま現場を離れている薬剤師さんからも質問が届きました。こんなにいろいろな立場の方が読んでくださっていたんだと驚きましたし、誰が読んでもわかるように書こう、という気持ちが前より強くなりました。


――専門的で難しい医療・薬の情報を、SNSを通じてわかりやすく伝える際に、特に意識されていることはありますか?

 専門用語や、複雑な機序を、できるだけかみ砕いて伝えるようにしています。
 ただ、かみ砕きすぎると、読んだ方が違う受け止め方をしてしまうことがあります。読んだ方は、それを現場で使います。だから、わかりやすくすることと、正確さを落とさないことは、いつもセットで考えています。

「まさか自分の本が書店に並ぶなんて」


――今回、じほうから書籍化のお話をさせていただいた際、率直にどのように感じられましたでしょうか? また、SNSでの発信を「本」という形にすることについて、どのような価値や可能性を感じていらっしゃいますか?

 まさか自分の本が書店に並ぶことになるなんて、夢にも思っていませんでした。お話をいただいたときは、うれしさと同じくらい、自分に1冊書き切れるのかなという不安もありました。
 SNSの投稿は、1回で伝えられることに限りがあります。病気の治療の流れのなかで、薬がどう足されて、どう変わっていくのかを通して伝えるのは難しいんです。本なら、それを1本の話として書けます。必要になったときに手元で開いてもらえるのも、本の良さだと思います。
 それから今回の本には、質問箱やコメントでフォロワーさんからいただいた質問を、Q&Aとして入れています。SNSで続けてきたやり取りが、そのまま本の形になっていくのは、すごくうれしいです。

「処方の謎」を入り口に、薬を考える


――本書では、「処方の謎」や「ひゃくさんの推理ノート」など、単に薬の知識をまとめるだけではない、実践的・謎解き的な要素を取り入れています。こうした構成にされた理由や、実際に制作を進めてみて感じていることがあれば教えてください。

 処方を見るときって、結構いろいろと推理しているな、という実感がありました。なぜこの組み合わせなのか、なぜこの順番で薬が足されたのか。処方せんを読むときは、頭の中でずっとそれを考えています。
 それに、推理という入口であれば、堅苦しい勉強というイメージをなくせるかなと思ったんですよね。同じ内容でも、覚えるものとして出されるより、解くものとして出されたほうが、読んでみようという気持ちになると思うんです。


――「推理」という言葉を入口にすることで、薬の知識を学ぶことへのハードルを下げたい、という発想なんですね。では、病棟などで忙しく働くスタッフが、必要なときに手に取って読める本にするために、執筆するうえで意識されていることやこだわりがあれば教えてください。

 イラストを豊富に入れることを意識しています。文字ばかりのページが続くと、忙しいときはなかなか開く気になれないので、ぱっと見てわかるページを増やしています。
 あわせて、章の最後には、自分で考えてもらうパートを用意しています。

「なんとなく見ていた薬に、軸が通る」


――現在、まさに制作が進んでいるところですが、日々SNSを見てくださっているフォロワーの皆様に、いまだからこそ伝えたいことがあればお願いいたします。

 楽しみに待っていてください。いままでなんとなく見ていた薬に軸が通って、現場で何が起こっているかが、よりわかるようになると思います。この病気ではどんな順番で薬が足されていくのか、なぜいまこの患者さんにこの組み合わせなのか。それが見えてくると、毎日の処方の見え方が変わってくるはずです。
 質問箱やコメントで声を寄せてくださった皆さん、本当にありがとうございます。いただいた声は、本の中に入っています。完成まで、もう少しだけ待っていてください。

 『ひゃくさん』さんの初の書籍となる本は、現在じほうで制作が進んでいます。
 どのような「なぜ?」に出会い、どのように薬を読み解いていくのか。完成をどうぞ楽しみにお待ちください。

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