2026.10.23

インフルエンザ流行期に薬局で備えること|薬剤師が押さえたい予防と対策

「インフルエンザは冬になってから備えればいい」。

ですが、2026年の立ち上がりは少し様子が違います。
国立健康危機管理研究機構によると、2026年第34週(8月17~23日)のインフルエンザ定点当たり報告数は1.11となり、第35週(8月24~30日)には1.76まで増加しました。
(参考サイト:国立健康危機管理研究機構)

従来、全国的な流行入りの目安として使われてきた1.00を、8月の時点で上回ったことになります。
流行が早く始まれば、薬局でも予防について相談を受けたり、咳や発熱などの症状がある人が来局したりする時期が早まる可能性があります。患者さんへ伝える情報はもちろん、薬局内の感染対策やスタッフ間の対応についても、冬を待たずに見直しておきたいところです。

この記事では、2026年の流行状況を踏まえながら、インフルエンザの予防について薬剤師が伝えたいこと、薬局で備えておきたい感染対策、体調不良の相談を受けた際の考え方を解説します。

2026年はインフルエンザが早くも流行|薬局で今から備えたい理由

インフルエンザは冬の感染症という印象が強いですが、実際の流行時期は毎年同じではありません。

今シーズンのように早い段階から報告数が増えている場合、例年より早く患者さんからの相談が先に増えてくることも考えられます。 流行状況を継続して把握しながら、薬局で必要な準備を前倒ししておくことが大切です。

8月に全国でインフルエンザ流行開始の目安を上回る

2026年第34週の全国の定点当たり報告数は1.11、患者報告数は4,094人でした。翌第35週には1.76、患者報告数6,543人となり、前週からさらに増えています。

もちろん、現在の数字からその後の流行規模やピークの時期まで決まるわけではありません。今後どのように推移するかは、最新の発生動向を追っていく必要があります。

流行が早い年こそ薬局のインフルエンザ対策を早めに見直す

インフルエンザの報告数が増えてくると、薬局でも「ワクチンは受けた方がよいですか」「家族がかかったのですが、何に気をつければよいですか」といった相談が出てきます。

咳や発熱、のどの痛みなどを訴える人が来局する場面も増えてくるでしょう。
医療機関を受診していない人が市販薬を求めて来局してくるケースも考えられます。

こうした状況になってから対応を考えるより、流行が広がる前に、

  • 患者へどのような予防情報を伝えるか
  • 体調不良の来局者にどう対応するか
  • 薬局内の手指衛生や換気は十分か
  • スタッフ間で対応方針を共有できているか

といった点を振り返っておきましょう。

特別な対策を新しく増やすことが目的ではありません。
日頃行っている感染対策を、現在の流行状況に合わせてもう一度見直すことが出発点になります。

インフルエンザ予防で薬剤師が伝えたいこと

インフルエンザの予防について、もちろんワクチンは重要な予防手段ですが、それだけで感染を完全に防げるわけではありません。
手洗いや換気、咳エチケットなど、日常生活の中で続けられる対策とあわせて考えることが大切です。

インフルエンザワクチンの役割を正しく伝える

「ワクチンを打てば絶対にインフルエンザにかからないのですか」と聞かれることがあります。

厚生労働省は現在のインフルエンザワクチンについて、感染そのものを完全に抑えるものではない一方、発病を抑える効果が一定程度認められ、重症化予防の効果も期待されるとしています。
薬局で相談を受けた際には、こうしたワクチンの役割をわかりやすく伝えたうえで、接種について具体的に検討したい人には医療機関や自治体の案内を確認してもらうようにしましょう。

手洗い・換気・咳エチケットなど基本的な予防対策

インフルエンザなどの急性呼吸器感染症の予防策としては、外出後の手洗いなどの手指衛生、適切な換気、咳エチケットなどが挙げられます。
患者さんへ伝える際にも、帰宅後の手洗いを習慣にする、咳やくしゃみがあるときは周囲へ配慮する、室内の換気を意識するなど生活の中で取り入れやすいものから伝える方が実践につながります。

「これさえしておけば感染しない」という方法はありません。複数の基本的な対策を、無理なく続けていくことが大切です。

重症化リスクがある人への予防も意識する

同じインフルエンザに感染しても、重症化のリスクはすべての人で同じではありません。

薬局では、持病の治療で継続的に来局している患者と接する機会があります。
そうした患者からインフルエンザ予防について相談されたときには、その人の健康状態や治療内容も踏まえながら、必要な情報へつなげる視点を持っておきたいところです。

ただし、「この疾患があるから必ず接種すべき」と薬剤師が決めるものではありません。
患者が予防について考えるきっかけをつくり、必要に応じて医師へ相談できるようサポートしましょう。

インフルエンザ流行期に薬局で見直したい感染対策

薬局には、定期的に薬を受け取る人、市販薬を購入する人、発熱や咳がある状態で訪れる人など、さまざまな来局者がいます。
流行期にだけ特別なことを始めるのではなく、普段の感染対策がきちんと機能しているかを見直しておくことが求められます。

手指衛生や換気など基本的な対策を徹底する

薬局内の感染対策でも、基本になるのは手指衛生や換気といった日常的な取り組みです。
患者対応の合間に手指衛生を適切に行える環境になっているか、換気を無理なく続けられるか。
消毒剤などの衛生用品についても、必要なときに使える状態かを改めて見ておきましょう。

大切なのは、対策を増やすことより「続けられる形になっているか」です。
忙しくなると手指衛生のタイミングが曖昧になってしまう、換気の役割がスタッフごとにばらばらになっている、といった点があれば、流行がさらに広がる前に共有しておく意味があります。

咳や発熱などがある来局者への対応をあらかじめ考えておく

薬局では、インフルエンザと診断された患者さんだけが来局するわけではありません。
「熱が出てきたので市販薬がほしい」「咳が続いている」といった段階で訪れる人もいます。その場合、周囲の来局者への配慮を考えながら対応する必要があります。

どこで話を伺うのか、混雑時にはどう対応するのか、処方箋を受け取った患者さんの滞在時間をどのように考えるのか。
薬局の広さや設備、スタッフ数によってできることは異なるため、全国一律の形を当てはめることはできません。
自局の環境の中で「体調不良の人が来たときにどう動くか」が共有されているかを見直しておくことが必要です。

薬剤師・スタッフ間でインフルエンザ対応を共有する

受付で体調不良を申し出た人への対応、薬剤師へ引き継ぐタイミング、患者から予防について質問されたときの基本的な案内など、スタッフによって対応が大きく変わらないようにしておくことが大切です。

あわせて、現在の流行状況を定期的に共有しておけば「今年はまだ早いから」といった感覚だけで判断せずに済みます。

国立健康危機管理研究機構では、インフルエンザの疫学情報を週ごとに公表しています。こうした公的情報を確認する担当やタイミングを決めておくのも一つの方法でしょう。

流行状況を知ること、基本的な感染対策を続けること、来局者への対応を共有すること。
この3つをつなげて考えることで、薬局としての備えがより実践的になります。

インフルエンザが疑われる相談に薬剤師はどう対応する?

予防を続けていても、インフルエンザをはじめとする呼吸器感染症にかかることはあります。薬局では、診断を受ける前の段階で「インフルエンザでしょうか」と相談されることもあるでしょう。
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などでは似たような症状がみられるため、薬剤師は診断をするのではなく、患者の状態を把握し、必要な相談や受診につなげる視点を持ちましょう。

症状や経過、患者背景を確認して必要な受診につなげる

症状がいつ始まったのか、どのように変化しているのか。呼吸が苦しい、強い倦怠感があるなど、気になる症状はないか。さらに、年齢や持病など、重症化につながり得る背景にも目を向けましょう。

患者の状態を知ったうえで、医療機関への相談が必要と考えられる場合には受診につなぐ。緊急性が高い症状がみられる場合には、適切な医療につながるよう案内する。
そうした判断のために、症状や経過を具体的に把握していきます。

特に持病がある人などでは、感染症によって体調が大きく変化することもあります。
「インフルエンザかどうか」だけに意識を向けず、その人自身の状態を見ることが大切です。

市販薬の相談では症状だけでなく患者背景も確認する

発熱や頭痛、鼻水などがあると「とりあえず市販薬で様子を見たい」と薬局を訪れる人もいます。

年齢や持病、現在使っている薬、アレルギー歴など、市販薬を選ぶうえで必要な情報があります。症状の程度や経過によっては、セルフケアを続けるより医療機関へ相談した方がよい場合もあるでしょう。

薬剤師だからこそ「この人はいま市販薬で対応してよいのか」という視点を持っておきたいところです。

抗インフルエンザ薬について正確な情報を伝える

インフルエンザと診断された患者から「薬を飲めばすぐ治りますか」「家族も同じ薬を飲んだ方がよいですか」と相談されることもあります。
薬剤師が担うのは、処方の必要性を決めることではありません。

処方された薬について、用法・用量や使用方法を患者が理解できるよう説明し、正しく使えるよう支えることが中心になります。吸入剤のように使用方法が治療に関わる製剤であれば、実際に使えるかどうかまで意識した説明が必要です。

薬ごとの特徴や注意点は異なるため「抗インフルエンザ薬はこう使う」とひとまとめにするのも避けたいところです。処方された製剤に合わせて、必要な情報を丁寧に伝えましょう。

インフルエンザと感染対策を薬剤師がさらに学ぶには

ここまで、2026年の流行状況を踏まえながら、インフルエンザの予防、薬局内の感染対策、体調不良の患者から相談を受けたときの考え方を見てきました。

  • インフルエンザワクチンについて根拠から学び直したい
  • 感染症発生動向調査の情報を診療や薬局業務にどう生かせばよいか知りたい
  • 呼吸器感染症を幅広い視点から理解したい
  • 感染対策について、教科書より一歩先の知識を身につけたい

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インフルエンザだけに視野を限定せず、感染症を臨床につながる形で学び直したい方にもおすすめです。

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まとめ

2026年は、8月の時点で昨シーズンより早い段階から報告数が増えているため、薬局でも例年の冬を待たずに備えておきたい状況です。

咳や発熱などについて相談された場合には、症状だけでインフルエンザと決めつけず、経過や患者背景を踏まえて必要な受診やセルフケアにつなげましょう。
抗インフルエンザ薬が処方された患者には、それぞれの薬に応じた適切な使用を支えることも薬剤師の大切な役割です。

流行の時期や規模は毎年同じではありません。
最新の発生動向を追いながら、日頃の感染対策と患者対応をアップデートしていくことが、インフルエンザ流行期の薬局には求められます。

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