これからのグローバル製薬産業における競争軸―グローバル大手製薬企業15社の多面的分析②―

GLP-1作動薬の市場が飛躍的に拡大し、新薬市場全体の成長とともに企業間の順位にも大きな変化が見られた2025年のグローバル製薬産業。各社が革新的新薬の創出にしのぎを削る中、これからの企業価値を左右する競争軸はどこにあるのか─。本書「主要製薬企業の動向」著者で、約半世紀にわたり製薬産業を見つめ続けてきたファーマセット・リサーチ株式会社代表取締役の三島茂氏にお話を伺いました。

編集担当
第1回目では、グローバル製薬企業のタイプは大きく「技術プラットフォーム型」と「ポートフォリオ依存型」に分化しつつある、というお話を伺いました。今回はこの点を踏まえてグローバル大手製薬企業15社の2025年最新決算における医薬品事業実績の特徴をご解説いただきます。最新決算を発表通貨ベースのまま並べると、売上規模と成長率の順位が必ずしも一致していないようにも見受けられますが、この背景にはどのような要因があるのでしょうか。

三島氏
一般に売上規模が大きくなるほど分母が拡大するため、成長率は低下しやすくなります。しかし、成長率の順位と売上順位の不一致はそれだけでは説明できません。重要なのは、各社の主要製品がどのような背景で創出されたかという点です。上位企業を見ると、自社の技術プラットフォーム(技術基盤)から継続的に新薬を創出している傾向が強く、一方で下位に位置する企業は、技術基盤よりも個別製品への依存度が高いという、研究開発の構造的な違いが成長率の差として表れています。


編集担当
「技術プラットフォーム型」を軸に成長している企業について、もう少し教えてください。

三島氏
例えば、特定の領域において、かつての技術を現代の高度な改変技術へと発展させ、単一で中堅製薬企業の売上規模を上回るような大型製品を誕生させているケースが象徴的です。これらは突発的なヒットではなく、特定の研究プラットフォームから必然的に創製されたものです。このように、主力製品となる新薬を自社の技術プラットフォームから一貫して創出できている企業こそが、現在、非常に高い成長率を叩き出しています。

編集担当
成長が落ち着いていると思われる企業に見られる「ポートフォリオ依存型」とはどういったものですか?

三島氏
こうした企業では、技術プラットフォームを軸とした研究開発よりも、個別品目の社内研究や事業開発によって候補品を導入し、プロジェクト単位で開発を進める色彩が強くなっています。最大製品が他社との共同開発品であったり、新発売の製品が外部導入品であったりするケースが目立ちます。現在では、企業全体を牽引する明確な技術プラットフォームが必ずしも存在していないように見え、それが個別製品への依存度を高める要因となっています。

編集担当
この2つの企業モデルは今後どのように推移していくと考えられますか。

三島氏
メルクやファイザーのように、かつて多くの大型新薬を生み出してきた名門企業であっても、現在は「ポートフォリオ依存型研究」への移行が見られます。しかし、持続的な高成長を目指すのであれば、やはり自社を象徴する技術プラットフォームの再構築が問われるでしょう。プロジェクト単位の「ポートフォリオ」によるリスク分散と、技術基盤による「突破力」、この両者のバランスをどう再定義するかが、今後の企業の成長性を占う最大の焦点となります。

編集担当
ありがとうございました。次回は、「資本市場は企業の持続的成長をどこで見ているか」についてお話を伺っていきたいと思います。