2026.03.31

【刊行記念特別インタビュー】 最初から完璧じゃなくても大丈夫。読者とともに悩み、成長する等身大のエール ──足立参希先生

 『月刊薬事』の大人気連載が、大幅なブラッシュアップを経て『臨床現場の「なぜ?」を誰でも研究にできる本 すべての医療従事者のための臨床研究スタートガイド』として書籍化されました。本書に込めた想いと最大の読みどころについて、著者である足立参希先生にお話を伺いました。


――本書では、研究未経験の若手薬剤師として「足立先生」が漫画に登場し、読者と同じ目線で悩み、成長していきますよね。

 連載が始まるタイミングと、私自身が初めて原著論文を書くタイミングが重なっていたんです。そのため、一から先生方に指導いただいているような感覚で、まさに「自分ごと」として本書に携わらせていただきました。
 漫画のなかでの私の発言は、当時の私の悩みや疑問とほぼシンクロしています。先生方の原稿を読ませていただいた際、自分がわからなかった部分については「ここをもっと具体的に教えてほしい!」と率直にフィードバックさせていただくこともありました。自分がわからないことは、きっと読者のみんなもわからないはずと考え、研究室で教授に質問するような素直な気持ちで執筆に関わっています。ちなみに、臨床研究の重要な指標である「FINER」という言葉も、実は本書で初めて学びました(笑)。


――若手が研究を始めようとする際、「何から始めればいいかわからない」、「統計が難しそう」といった壁にぶつかると思います。足立先生ご自身は、こうした初学者の壁をどのように乗り越えてこられましたか?

 最初はわからないことだらけで、何から手をつけたらいいか途方に暮れてしまいますよね。ただ、英語への苦手意識や統計の知識といったものは、今の時代、AIなどのツールを駆使すればどうにかなる部分でもあります。
 私にとって一番高かったハードルは、テクニック以前の「自分は何を明らかにしたいのか?」を明確にすることでした。臨床現場で感じる疑問は、最初はとてもふわっとしています。何がわからないのかが自分でもわかっていないから、一歩目が踏み出せないんです。まずは「何がわかっておらず、自分は何を明らかにしたいのか」。ここを言語化することに全力を注いでみてください。そこさえ決まれば、あとは指導医や先輩に揉まれながら進むだけで、必ず形になっていくと思います。目標がはっきりすると、研究は一気に楽しくなりますよ!


――日々の業務と研究活動を両立されている足立先生から見て、本書のポイントを教えてください。

 読みやすい・わかりやすい・おもしろいの三拍子が揃っている点です! 寝転びながらでも読めるくらいハードルが低いのに、内容は非常に凝縮されていて、研究に必要な思考力をつけるための情報がギュッと詰まっています。
 また最大のポイントは、これなら自分にもできそう!と思わせてくれる絶妙な構成です。難しい用語も、先生方の優しい語り口によって、現場でそのまま使える知識として整理されています。だから、読んでいるというより、隣で優しく語りかけられているような感覚になり、専門的な内容でもサラッと入ってくるんです。こんなに臨床研究を身近に、そして「自分ごと」として感じさせてくれる本は、今までなかったのではないでしょうか。
 あとは何といっても4コマ漫画ですね。めちゃくちゃ面白いです(笑)。八木先生の「モモとチェリーの誘惑」のオチが一番のお気に入りなので、ぜひ誌面でチェックしていただきたいです。


――若手が「最初からうまくできなくても大丈夫」というマインドをもつためのコツや、失敗を恐れずに進めるためのアドバイスをお聞かせください。

 個人的には、この「マインド」の部分が一番大切だと思っています。そもそも、未経験の状態でどれほど時間をかけて一生懸命悩んだとしても、完璧にできるわけがないんです。そこは「無理なものは無理!」と、いい意味で割り切ってしまいましょう(笑)。一人で悩み続けるのは決して無駄ではありませんが、時間がもったいないのも事実です。
 世の中には、自分一人では到底辿り着けないような「視界が一気に開ける道」を示してくれる先達が必ずいます。その存在を知り、頼る勇気をもつこと。完璧を目指して足踏みするよりも、信頼できる指導者や相談者を見つけて、プロの視点を借りてみる。それが、結果として一番の近道になるのだと私は学びました。


――臨床現場のちょっとした「なぜ?」が、実際に研究の形(学会発表や論文)になったとき、ご自身のなかでどんなやりがいや変化を感じましたか?

 自分が積み重ねてきた努力が「形」になる瞬間は、想像以上に誇らしく、嬉しいものです。私はまだ研究経験が浅いものの、研究を通じて一つの物事を深く掘り下げる経験をしたことで、日々の臨床業務の見え方が少しずつ変わり始めているのを感じます。
 「なぜこの薬剤なのか?」、「このエビデンスは目の前の患者さんに当てはまるのか?」と、根拠をもって立ち止まれるようになったこと自体が、私にとっての大きな変化です。自分の抱いた小さな「なぜ?」が世界とつながる喜びを、これからもっと積み上げていきたいと思っています。


――最後に、これから初めての臨床研究にチャレンジしようとしている若手コメディカルや学生の皆様に向けて、エールをお願いします!

 初めから強い信念やスキルをもっている人はいません。まずは「やってみたい」という素直な好奇心があれば十分で、その気持ちこそが、いつか自分を支える芯になっていくのだと思います。私自身も「楽しい」という純粋な気持ちを原動力に一歩ずつ進んできました。研究を続けていると、しんどい局面もありますが、自分の中に芯があれば必ず踏ん張ることができます。まずは難しく考えず、「これってどうしてだろう?」という目の前の小さな疑問を大切にすることから始めてみてください。
 その先には、素晴らしい仲間との出会いや、視界を大きく広げてくれる経験、そして想像以上に刺激的で広い世界が待っています。皆さんのチャレンジを心から応援しています。一緒に頑張りましょう!

臨床現場の「なぜ?」を誰でも研究にできる本

定価3,850円(本体3,500円+税10%)

すべての医療従事者に贈る「はじめての臨床研究」の教科書

臨床現場で感じる「なぜ?」を出発点に、研究テーマの設定からデータ収集・解析、口頭やポスターによる学会発表、論文投稿までの流れをやさしく解説する入門書です。専門用語を極力避け、マンガや図表、用語解説を交えて構成することで、研究未経験者でも無理なく読み進められるよう工夫しました。日常業務と研究をつなぐ実践的な内容で、「研究、やってみたい……」を「研究、やってみた!」に変えられる1冊。臨床で「なぜ?」を抱えるすべての医療従事者に贈ります!

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