臨床で使える抗がん薬治療の知識と学び方 新たな治療レシピを生み出す担い手になろう

抗がん薬治療には、数多い抗がん薬の存在、それら抗がん薬を組み合わせたレジメンの複雑さ、副作用に応じた支持療法、そして手術や放射線治療と組み合わせた集学的治療があり、学ぶことがとても多い。湘南医療大学薬学部の佐藤淳也氏は、まず「五大がん」(肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、血液がん)の標準的なレジメンを軸に学ぶことの重要性を強調する。基礎から臨床へとつながる知識をどのように身につければよいのか? 学生から新人薬剤師、さらには専門薬剤師レベルの学び方について、話を伺った。
抗がん薬治療を学ぶための基本構成とは
――本書の特徴やねらいを教えてください。
本書は、抗がん薬治療を体系的に学べるように構成されています。特に意識したのは、初学者でも全体像を理解できるようにしたことです。抗がん薬治療は領域が非常に広く、個々の薬剤や作用機序から入ると全体が見えにくくなります。そこで、臨床で活用していただくことを見据えて、本書では、実際に臨床で使用される標準治療のレジメンを中心に、がん種ごとの治療方針・特徴、薬物療法を解説しています。レジメンには支持療法も含めて記載し、薬学的な視点から、レジメン開始前の遺伝子多型などの検査を含む確認事項、処方監査、調製上の注意、副作用モニタリング、投与時の注意点などを丁寧にまとめました。
臨床だけでなく、薬学教育、薬剤師国家試験の観点からも、「五大がん」が知識の軸になることが多いです。これらは罹患率や死亡率の面でも代表的ながんであり、 医療職としてまず押さえておくべき領域といえます。これらを軸に標準治療を理解することで、抗がん薬治療の考え方を学ぶことができます。
がん領域はきりがない? 暗記に頼らない学び方
――どのように活用するとよいでしょうか?
本書を手に取ってみていただくとわかりますが、代表的ながん薬物療法、支持療法がひととおり網羅され、しかも深くなりすぎないレベルで1疾患10ページ程度にぎゅっと収められています。原稿の段階では気がつきませんでしたが、読み切れるボリューム感になっています。これは、薬学部の学生にも活用できそうです。
教育現場の話になりますが、最近は、学生も実務実習でがん治療に関わる機会が増え、患者指導などに参加する場面もあります。その際、標準的な抗がん薬治療を理解しているかどうかで、実習の学び方が大きく変わりますから、実務実習前の学習にもぜひご活用いただきたいです。
私は、薬理作用などの暗記だけに偏るのではなく、臨床でその医薬品がどのように使われているかという視点を大事にしています。薬学教育カリキュラムのなかに「薬物治療学」という科目群があり、これは薬理学と実務の間をつなぐ学問なのですが、この科目群のなかでの、ガイドラインあるいは治療指針を理解し、多様な薬をどのように選択し、使い分けるかを学ぶ教材としても適していると思いました。
標準的な抗がん薬治療がコンパクトにまとまっているので、学生や初学者にとっては教科書として、教員や指導者にとっては実習指導などの参考として、またがん領域の資格取得のための学習としても活用できます。
読者にとって、「がん薬物療法(がんに携わる薬剤師人生)の基盤をつくる存在になればよい」と語る佐藤淳也氏。
知識をアウトプットして、実践力を身につける
学びのコツは1冊を使い倒すこと
――実践力を身につけるための学び方のポイントは?
大事なのは、知識をアウトプットできるレベルまで理解することです。例えば、国家試験のように与えられた選択肢のなかから正解を選ぶような知識というのは、臨床現場ではありえません。選択肢が提示されていないところから答えを見つける力が必要です。つまり実際の臨床では、個々の患者さんに対して、治療法などについて自分の言葉で説明し、もし悪心などの副作用があればどの薬を提案するのがよいかを自分で考えなければなりません。
近年は、多様な分子標的薬など新規医薬品が上市されて情報も更新されますが、従来から使用されているカルボプラチンやパクリタキセルなどの細胞傷害性抗がん薬などは基本的には使われ方は変わりませんから、レジメンという基本の軸をしっかり理解しておけば、新しいレジメンになっても自分でアレンジしやすくなり、その後のよりよい抗がん薬治療につながると思うんです。
とはいえ、白紙の状態からレジメンを書き起こし、支持療法まで組み立てる…までには、おそらく10年近くかかると思います。私自身も、がん化学療法に関する書籍がまだ少なかった20年ほど前に、レジメン審査の資料作りを任されていた時期がありましたが、当時は、納得のいく資料を作れるようになるまで、多くの時間を要していました。そのとき参考にした支持療法の本は、ボロボロになるまで読み込んだのを覚えています。読者の皆さんも、そういった頼れる本に出会えるとよいです。よい本との出会いで、がんに関わる薬剤師人生は大きく変わってくると思います。
卒業後3〜5年が一番吸収できるとき
――4月は、新たに働き始める薬剤師さんも多いかと思います。メッセージをお願いします。
薬剤師としての成長を考えると、卒業後3〜5年の期間はとても重要だと思います。この時期は、スポンジのように知識を吸収する力が高く、その後の成長に重要な栄養を蓄える時期です。この期間にどれだけ学ぶかで、その後のキャリアが大きく変わってくると思います。
だからこそ、学生のうち、あるいは卒業後早い段階で標準的な抗がん薬治療を体系的に学んでおくことが重要です。まずは基本を押さえ、その後に支持療法や緩和医療などへと学びを広げていくと、臨床の理解も深まっていくのではないでしょうか。
本書は、そういった存在になれる内容になっていると思います。ぜひ、ボロボロになるまで読んで、知識をインプットしてください。

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