2025.09.05

薬剤師も知っておきたいお金のコト|「103万円の壁」の引き上げ

 みなさんこんにちは。書籍『知らないと絶対損する 薬剤師のためのお金(マネー)の強化書』、愛称「薬マネ」の編集を担当したOです。

 令和7年度の税制改正について、サラリーマン薬剤師にとって影響のありそうな項目として前回の最後に挙げた4つのキーワードのなかで、今回は「『103万円の壁』の引き上げ」についてみていきたいと思います。

 前回に引き続き「薬マネ」著者のKeyさんにお話をお伺いします。

編集担当O
そもそも「103万円の壁」とは何でしょうか?

 

Key
パートやアルバイトなど給与所得者の配偶者の年収が「103万円以下」なら、基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計103万円の控除が受けられ、所得税・住民税がかからないラインのことです。103万円を超えると税負担が増えるため、働く時間を調整するラインとして「103万円の壁」と呼ばれてきました。

 

編集担当O
令和7年度から、この壁が引き上げられるとのことですが、具体的にはどういうことなのでしょうか?

 

Key
そうですね、ではまず「基礎控除」のことからお話ししますね。そもそも基礎控除とは、「生活維持のため、最低限の収入には課税しない」といった観点から創設されました。昔は全国民一律に同額の控除額でしたが、2020年からは年収(合計所得金額)に応じた控除額となっています。
さて、103万円の壁ができた1995(平成7)年から30年ちかく経っていますが、「消費者物価指数(総合)」は2023(令和5)年までで約10.1%、2024(令和6)年まででみても約13.1%上昇しています。消費者物価指数のうち、生活必需品を多く含む「基礎的支出項目指数」にいたっては、2023(令和5)年までで約20.5%、2024(令和6)年までで約24.7%も上昇しています。
こうした統計データ以上に昨今の物価高を実感されている方は多いと思いますが、足元の物価上昇傾向は今後も見込まれることを背景に、2025年1月1日以降の所得から、年間合計所得金額2、350万円以下の方の基礎控除額が48万円から58万円へ10万円引き上げられました。まずは冒頭にあった「最低限の収入」を全体的に底上げしたのですね。

 


Key
さらに、合計所得金額に応じて、基礎控除が上乗せされる特例が創設されました。
合計所得金額132万円以下については先ほどの引き上げ10万円に37万円が上乗せされ、基礎控除額は「95万円」となり、これは恒久的措置となります。
合計所得132万円超えからは下図のとおり段階的に加算がありますが、これは令和8年までの時限措置です。
この上乗せ措置については、いま支給されている月々の給与等には反映されず、今年(令和7年)の年末調整において適用されることになります。

 


編集担当O
物価急上昇局面への緊急避難的対応という感じですが、参議院においても少数与党政権となったこれからは、これが特例的時限措置で終わるのか、さらなる見直しにつながるのか、注視していきたいと思います。

 

Key
では次に、「給与所得控除」についてお話します。給与所得者(サラリーマンやアルバイトなどの被雇用者)は自ら経費計上ができないため、必要経費相当額(最低保障額)を給与所得控除として給与収入から控除することができます。
給与所得控除は、給与収入に対しての割合で計算される控除ですので、物価上昇とともに賃金も上昇すれば控除額も増加するのですが、年収が一定以下の場合は割合計算ではなく「最低保障額」が使われるため、収入が増えても控除額は固定されたままになってしまいます。物価上昇への対応とともに就業時間の調整にも対応するため、最低保障額が55万円から「65万円」に10万円引き上げられました。
これにより低めの年収でも実際の手取りがこれまでより増えることになります。

 


編集担当O
つまり・・・従来の
(基礎控除48万円)+(給与所得控除55万円)=「103万円」
の壁が、
基礎控除95万円)+(給与所得控除65万円)=「160万円
の壁になった!
ということですよね?

 

Key
そうです! ただこの「160万円の壁」は所得税だけのラインです。住民税や社会保険料に関する壁もあるので、トータルで照らし合わせてご自身やご家庭での最適なポイントを見つけるのがよいと思います。

 


編集担当O
家庭というお話ですが、子どもを含めた家族で税金の話って、消費税のことくらいしかしたことがないかも……

 

Key
今回の税制改正では、新たに大学生年代の子どもをもつ親への特別控除として「特定親族特別控除」が創設されましたよ。これは慢性化する労働力不足への対応として大学生のアルバイトの就業調整に対応しようというもので、特定親族(19歳以上23歳未満の大学生年代の親族)の合計所得金額が85万円(給与年収で150万円相当)までは、親が特定扶養控除と同額の63万円の所得控除が受けられることになりました。
従来の「特定扶養控除」だと特定親族の合計所得金額が48万円(給与年収で103万円相当)を超えると控除が一気にゼロになったのが、85万円を超えても以下のように控除額が段階的に減っていくように決められました。

 


編集担当O
いろいろある壁は壁として把握したうえで、それにあまり縛られずに収入増を目指したり、家族の時間の使い方との兼ね合いなども踏まえ、私の家庭にあったものを見つけていければなと思います。

 

Key
今回の税制改正で103万円の壁は改正されましたが、「薬マネ」では以下のSECTIONでいろいろな「壁」について全体が把握できるよう解説していますのでぜひご一読ください。
  • SECTION 145 薬剤師がアルバイト・派遣で働くなら 「年収の壁」を知ろう
  • SECTION 146 社会保険上の壁[1] 106万円の壁
  • SECTION 147 社会保険上の壁[2] 130万円の壁

薬剤師のためのお金の強化書

知らないと絶対損する

薬剤師のためのお金の強化書

定価3,850円(本体3,500円+税10%)

薬剤師のお金の「知る」「貯める」「稼ぐ」「増やす」「使う」を全167SECTIONで解説

薬剤師とお金にまつわる内容を「知る」「貯める」「稼ぐ」「増やす」「使う・ライフイベント」の5つにカテゴライズし、全12CHAPTER/167SECTIONでイラストや漫画を交えながら解説した、知識ゼロからでも理解できる「薬剤師が最初に読みたいお金の本」です。

Key

メディカルタックスを立ち上げ、サイト運営・記事執筆を中心に行っている。1986年生まれ。大阪薬科大学(現 大阪医科薬科大学)大学院卒。薬剤師、FP2級、基本情報技術者、簿記2級。現在は製薬企業に勤めながら、副業で個人事業主として株式会社PASSMEDのサイト運営・SEO対策・記事執筆・監修、メディカルライター業に取り組んでいる。著書に『知らないと絶対損する 薬剤師のためのお金(マネー)の強化書』(じほう)、『薬剤師になったら最初に読みたい 大学で教えてくれなかったお金の本』(じほう)、共著『新薬情報オフライン』(金芳堂)。

@key_Pharma_FP

シェア