にっきょくんと学ぶ 「日本薬局方」のこれまで・これから――第1回

はじめまして。僕、にっきょくん。
2026年4月、「第十九改正日本薬局方」が厚生労働省から告示され、7月には普及版もじほうから刊行された。「第十九改正」というとおり、日本薬局方の歴史はとても古くて、初版がつくられたのはなんと明治19年(1886年)だ。
医薬品業界にいる人なら誰もがその名前を耳にしたことのある日本薬局方だけれど、140年もの長い時間のなかで、どんな歴史を歩んできたのかについては、知らない人も多いかもしれないね。
そこで今日から、日本薬局方のこれまでとこれからをやさしくレクチャーしていくよ。聞き手は、普及版制作にも見習いとして加わっていた若手編集部員のMさんだ。




…それはさておき、江戸時代の日本では、ほぼすべての期間、「鎖国」というキリスト教国との国交を断絶する政策がしかれていた。だから、当時の日本人が学ぶことのできる西洋の医学知識といえば、かろうじて交流が許されていたオランダ(当時の日本語表記で和蘭または阿蘭陀)から入ってくるもの、すなわち蘭方医学だけだったんだ。そんななか、蘭方医・中川淳庵(1739~1786)がオランダの薬局方「アポテーキ(Apotheek)」を「和蘭局方」と訳したのが、我が国で作られた書物に「局方」という言葉がついた最初といわれているんだよ。
ちなみに、Apotheekを英訳するとPharmacopeia(アメリカ英語)になる。これは、日本薬局方の英文版タイトルThe Japanese Pharmacopoeiaでおなじみだね。


ちなみに、徽宗皇帝は芸術家としても非常に有名で、彼が描いたとされる桃鳩図(ももはとず)は、日本の国宝にもなっているんだ。はっとしたかい? 鳩だけに。


江戸時代の終わりに鎖国が解除された後、明治時代になると、日本はオランダ以外の西洋諸国からも学問や技術を積極的に吸収する政策をとった。日本人がドイツ医学をはじめとする当時最先端の医学知識にも触れられるようになったし、西洋の医薬品を輸入できるようになった。そうして、それまで使われていた「和漢薬」に代わって、「洋薬」が多く用いられるようにもなったんだ3)。
ところが、当時の日本には医薬品の品質を保証する基準がなかったから、粗悪品や偽物が横行したし、同じ名称の医薬品でも輸入国によって主薬の含有量が異なる、なんて問題も起きてしまった。外国商人からも「偽物が安く売られているせいで、真正品が適正価格で販売できない」というクレームがついたりしたんだ4)。現在の薬機法の言葉を借りると「医薬品の正常及び品質の適正を図る」ことが、明治新政府にとって喫緊の課題となったわけだね。
ちなみに、先ほどオランダの薬局方の話をしたけれど、西洋における薬局方の歴史はとても古い。1772年にはデンマーク薬局方が世界初の国定薬局方として刊行されているし、都市単位の薬局方となるとさらに古くからあって5)、それぞれに定められた独自の基準のもとで医療が行われていたんだ3)。で、近代日本としてもこれらを参考にして、国定の薬局方を作成することにしたんだね。
…ということで、次回はいよいよ、初版「日本薬局方」の誕生だ。お楽しみに。
1)改訂新版 世界大百科事典.30巻、p550(「和剤局方」の項)、平凡社、2007
2)日本薬科大学:「太平恵民和剤局方」(和剤局方)
(https://www.nichiyaku.ac.jp/kampomuseum/3.html)(2026年8月10日閲覧)
3)伹野恭一、他:日本薬局方(JP)130周年記念シンポジウムとJP18に向けた今後の課題.薬史学雑誌、52(2):160-168、2017
4)川城 巌、他 編:国立衛生試験所百年史.国立衛生試験所創立百周年記念事業東衛会実行委員会、1975
5)日本大百科全書.23巻、pp182-183(「薬局方」の項)、小学館、1988
・医薬品医療機器総合機構:日本薬局方の歴史
(https://www.pmda.go.jp/files/000249603.pdf)(2026年8月10日閲覧)

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