2025.11.19

サクッと学べる! OTC薬ポケットメモ [第1回]

 この連載では、薬剤師や登録販売者が押さえておきたいOTC医薬品の選び方や販売時の注意点について、ポイントを絞って解説することで、明日からの実務に役立つ知識がサクッと身につきます!
 患者さんからよくあるQ&Aや、より詳しい商品比較については、書籍「商品選びの超決定版 OTC薬ポケットマニュアル」をご参照ください。

 新型コロナウイルス感染症やインフルエンザは、症状が軽い場合には自宅療養で対応できる場合があります。しかし、OTC医薬品の選び方や検査キットの選び方には注意が必要です。そこで今回は、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザの自宅療養時の対応と、検査キットの使い分けを解説します。



自宅療養時の対応


新型コロナウイルス感染症

 新型コロナウイルス感染症は、感染しても症状が軽いことが多いため、通常の風邪と症状が変わらない場合は、必ずしも医療機関を受診する必要はなく、自宅療養で対応することも可能です。典型的な症状としては発熱、咳、咽頭痛、倦怠感などがあり、一般的な風邪と区別がつかないことも多々あります。『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第10.1版』1) によると、重症化リスクの低い軽症患者では、特別な医療によらずとも自然軽快することが多く、解熱鎮痛薬や鎮咳薬などの対症療法を必要に応じて行うとされています(NSAIDsが新型コロナウイルス感染症の予後を悪化させるというエビデンスはない)。


インフルエンザ

 インフルエンザも症状が比較的軽い場合は、必ずしも医療機関を受診する必要はなく、自宅療養をすることが可能です。自宅療養をする場合に用いる総合感冒薬や解熱鎮痛薬は、比較的安全性の高いアセトアミノフェンを配合した商品を選択します。アスピリンなどのNSAIDsは、小児に起こりやすいインフルエンザ脳炎・脳症に何らかの関与をしている可能性があり、インフルエンザ治療に際してはNSAIDsの使用は慎重にすべきです。


重症化リスクがある場合

 前述のように、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに感染した場合でも、軽症であればOTC医薬品で様子をみることができます。ただし、高齢者糖尿病などの基礎疾患のある人は重症化リスクが高いため、早めの受診を検討しましょう。



検査キットの選び方


新型コロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原検査キット

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原・インフルエンザウイルス(Flu A+B)抗原検査キットの検体は、鼻腔ぬぐい液です。ただし、インフルエンザ発症後早期はウイルス量が少なく、偽陰性になる可能性が比較的高いとされています。そのため、陰性であった場合でもインフルエンザウイルスの感染を否定するものではない点に留意する必要があります。インフルエンザウイルスの流行期など、新型コロナウイルス感染症と同時に感染の有無を調べたいという場合に選択するとよいでしょう。


新型コロナウイルス抗原検査キット

 新型コロナウイルス抗原検査キットの検体には、唾液を使うタイプ鼻腔ぬぐい液を使うタイプの2種類があります。『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針第6版』2)によると、唾液は医療者が採取する鼻咽頭ぬぐい液と検出感度が同程度と考えられ、鼻腔ぬぐい液は鼻咽頭ぬぐい液と比べると検出感度はやや低いとの報告があります。また、鼻腔ぬぐい液は基本的に無症状者の抗原定性検査には適さないとしつつも、感染拡大地域でのスクリーニングに使用可能としています(唾液を使うタイプは非推奨)。
 唾液を使うタイプの場合は、ウイルス検出に影響するため、唾液採取の30分前から飲食、喫煙、歯磨き、口内洗浄を控えなければなりません。そのため、タイミングを気にせず検査できるものは鼻腔ぬぐい液を使うタイプとなります。

【引用文献】

1)診療の手引き編集委員会:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第10.1版.2024(https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf

2)国立感染症研究所、他:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針第6版.2022(https://www.mhlw.go.jp/content/000914399.pdf

OTC薬ポケットマニュアル

定価3,630円(本体3,300円+税10%)

来局者の背景から"選んではいけない商品"を見分けるテクニックが満載!

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