2026.09.11

プレコンセプションケアとは?薬剤師が知っておきたい基本と薬局での関わり

「プレコンセプションケア」という言葉を、医療現場やニュースなどで目にする機会が増えています。
一方で、「妊活を始めた女性への支援なのか」「薬剤師にはどのような関わりがあるのか」と、まだイメージしにくい方もいるのではないでしょうか?

プレコンセプションケアは、妊娠する直前になってから始める準備だけではありません。性別を問わず、自分の健康や将来について考え、必要な知識を得ながら健康管理に取り組むという考え方で、妊娠・出産を希望するかどうかにかかわらず、自分の心身と向き合うことも含まれています。

薬局では、処方薬や市販薬の相談をはじめ、サプリメント、生活習慣、避妊など、プレコンセプションケアにつながる話題に触れる場面があります。

この記事では、プレコンセプションケアの基本的な考え方や主なテーマを整理し、薬剤師がどのような場面で関わる可能性があるのかを紹介します。

プレコンセプションケアとは?薬剤師が知っておきたい基本

プレコンセプションケアは、英語の「Preconception Care」に由来します。
「妊娠前のケア」と訳されることもありますが、現在の日本で進められている取り組みは、妊娠を目前に控えた人だけを対象にしているわけではありません。

こども家庭庁では、性別を問わず、適切な時期に性や健康について正しい知識を持ち、妊娠・出産を含むライフデザインや将来の健康を考えながら健康管理を行う取り組みとしてプレコンセプションケアを位置づけています。

薬剤師がプレコンセプションケアについて考えるときも、「妊活をしている人への服薬指導」と狭く捉えず、まずはこの基本的な考え方を知っておくことが大切です。

プレコンセプションケアは将来の健康やライフデザインを考える取り組み

プレコンセプションケアでは、現在の健康状態や生活習慣に目を向けながら、将来どのような生活を送りたいのかを考えていきます。

そこには、妊娠や出産を希望するかどうか、いつごろ考えたいのかといったことも含まれます。一方で、結婚や妊娠・出産を選ぶかどうかは一人ひとり異なります。プレコンセプションケアの目的は、特定のライフコースへ導くことではありません。

つまりプレコンセプションケアは、「いつか妊娠するために何をすればよいか」という話に限らず、今の自分の健康を知り、将来について考えるためのきっかけとして捉える取り組みです。

プレコンセプションケアは女性や妊活中の人だけが対象ではない

「妊娠前」という言葉から、プレコンセプションケアを女性向けの取り組みだと考えることもあるでしょう。

しかし、こども家庭庁では性別を問わない取り組みとして示されており、男性にとっても、自分自身の健康や将来の妊娠・出産との関わりについて考える機会になります。また、現在は妊娠を希望していない人にとっても、自分の心身を守り、将来の選択肢について考えるという意味があります。

薬局でも、妊娠の可能性がある年代の女性だけをプレコンセプションケアの対象として考える必要はありません。
男性から健康や薬について相談を受けたとき、若い世代へ市販薬を販売するとき、持病の治療を続けている人と話すときなど、さまざまな場面が将来の健康を考える接点になります。

プレコンセプションケアではどのようなことを考える?

プレコンセプションケアで扱われるテーマは、妊娠や出産に直接関係することだけではなく、ライフプラン、生活習慣、食事・栄養、検診、ワクチン、避妊、性感染症、婦人科・泌尿器科の病気、妊娠前の準備、不妊症など、幅広いテーマがあります。

まずはプレコンセプションケアにどのような領域が含まれているのかを知り、薬局業務との接点を考えてみましょう。

食事・栄養や生活習慣など日々の健康管理

食事や栄養、体重、運動、喫煙、飲酒といった日々の生活は、プレコンセプションケアを考えるうえで重要なテーマです。

妊娠を考えるようになってから急に生活を変えるというより、自分の健康状態や生活習慣に普段から目を向けることが、将来の健康管理にもつながります。

薬局では、サプリメントを購入する人から「妊活を始めるので何か飲んだほうがよいですか」と尋ねられることも考えられます。そのような相談も、プレコンセプションケアについて情報を提供する一つのきっかけになります。

感染症・ワクチン・持病など妊娠前から確認したい健康上の課題

プレコンセプションケアには感染症やワクチン、現在治療している病気について考えることも含まれます。

持病がある人にとっては、妊娠を考え始めた時点で初めて治療について考えるのではなく、日頃から自分の病気や治療内容を理解しておくことが必要になります。

薬局では、継続して薬を受け取っている患者との会話から、将来の妊娠についての希望を知ることもあります。
妊娠前にどのような確認や調整が必要かは、疾患や治療内容によって異なります。服薬について心配がある場合には、処方医などと相談できるようサポートすることが求められます。

妊娠・避妊や将来のライフデザインについて考える

プレコンセプションケアでは、妊娠を望む場合の準備と同時に、現時点では妊娠を希望しない場合について考えることも大切です。

妊娠や出産をいつ希望するのか、そもそも希望するのかといった考えは、一人ひとり異なります。そのため、避妊や性感染症について正しい知識を持つことも、将来の健康やライフデザインを考えることにつながります。

薬局は、避妊や性に関する情報と接点を持つ場所でもありますが、こうしたテーマは非常にプライベートな内容です。薬剤師側は相談があったときに必要な情報へつなげられるよう、知識と相談先を把握しておく姿勢が求められます。

プレコンセプションケアを「妊娠するための支援」と捉えると、こうした視点が抜けやすくなります。本人が望む将来を考えることまで含めて理解しておくことが大切です。

なぜプレコンセプションケアに薬剤師が関わるのか

プレコンセプションケアには、医師や看護師、助産師、管理栄養士など、さまざまな人が関わります。
薬局は、病気の治療を続けている人や市販薬を購入する人、サプリメントについて相談する人など、さまざまな背景を持つ人が訪れることもあり、妊娠前からプレコンセプションケアの情報に触れられる場の一つとして位置づけられています。

薬局には妊娠前から薬や健康について相談できる接点がある

持病の治療で定期的に薬局を利用している人もいれば、頭痛やアレルギーなどで市販薬を購入する人、健康維持のためにサプリメントを利用する人もいます。

そのなかで「そろそろ妊娠を考えている」「この薬は妊娠前から飲んでいてもよいのか」「サプリメントについて知りたい」といった相談につながることがあります。ただ、個別の薬について妊娠前の継続・変更・中止をその場で一律に判断することはできません。疾患の状態や治療の必要性、薬剤の特性などを踏まえて検討する必要があります。

薬局では、相談内容や服薬状況を確認し、必要に応じて処方医などにつなぐことができます。薬に関する身近な相談先という薬局の特徴を、プレコンセプションケアにも生かすという考え方です。

薬剤師は薬だけでなく生活や健康に関する相談にも接する

薬局で交わされる会話は、薬の飲み方だけとは限りません。
「最近食生活が乱れている」「禁煙したい」「サプリメントを使いたい」「ワクチンについて気になっている」といった相談から、プレコンセプションケアに関係する話題へ広がることもあります。

ここで、薬剤師がすべての課題を解決しようとする必要はありません。
薬剤師として説明できる情報を伝え、専門的な診療や検査が必要な内容であれば適切な医療機関へつなぐ。自治体などに相談窓口があるテーマであれば、その利用を案内する。こうした関わり方もプレコンセプションケアを支える一つの方法です。

プレコンセプションケアの知識を持つことで、日常の健康相談のなかにある「将来の健康につながる話題」に気づきやすくなるでしょう。

男性へのプレコンセプションケアも薬剤師が知っておきたい

プレコンセプションケアを考えるうえで、男性の存在を忘れることはできません。

妊娠や出産について話すとき、女性側の健康管理に注目が集まりやすい一方、こども家庭庁はプレコンセプションケアを性別を問わない取り組みとして示し、男性についても早い段階から知識を持つことの重要性を伝えています。

男性自身にとっても、生活習慣や持病、現在使用している薬など、自分の健康について考えることはプレコンセプションケアの一部です。
薬局で男性患者から「パートナーと妊娠を考えている」と相談された場合にも、「女性側の問題」として扱わず、本人の健康や服薬状況について必要な情報を確認する視点が求められます。

薬局でプレコンセプションケアに関わるときに大切な視点

妊娠や出産、避妊、不妊などは、本人の価値観やプライバシーに深く関わるテーマです。
薬剤師側に悪意がなくても、声のかけ方によっては「妊娠することを期待されている」「年齢だけで判断された」と感じさせてしまう可能性もあります。

薬局でプレコンセプションケアに関わるときは、知識を伝えることと同じくらい、本人の考えを尊重する姿勢が求められます。

妊娠や出産について本人の希望を決めつけない

「この年代なら、そろそろ妊娠を考えているだろう」「結婚しているから子どもを希望しているだろう」といった推測から話を進めることは避けたいところです。

妊娠や出産についての希望は外見や年齢からはわかりません。
また、妊娠を望んでいても人には話したくない場合や不妊治療中、流産の経験があるなど、薬剤師には見えない背景を抱えている可能性もあります。

薬剤師から情報提供する場合も「妊娠するならこうすべき」という伝え方より、本人が必要なときに情報へアクセスできるようにすることを意識しましょう。薬局内に啓発資材を置く方法もその一つです。

薬や健康について不安があれば相談できることを伝える

妊娠と薬について「妊娠してから医師に聞けばよい」と考えている人もいれば、「薬を飲んでいるから妊娠できないのでは」と不安を抱えている人もいます。

こうした不安を抱えたまま自己判断で薬を中止したり、必要な治療から距離を置いたりしないよう、妊娠前から相談できることを伝えておくことも必要です。

薬剤師は、現在使用している処方薬や市販薬、サプリメントなどを確認し、患者が何を不安に感じているのかを聞くことができます。そのうえで、個別の薬剤や治療について処方医との確認が必要な場合は、相談につなげましょう。

薬局だけで完結させず必要な支援につなげる

プレコンセプションケアには幅広いテーマが含まれているため、薬局ですべての相談に対応できるわけではありません。

持病の治療については処方医、月経や妊娠、不妊に関する相談では産婦人科など、相談内容に応じて適切な専門職や医療機関へつなぐ必要があります。また、自治体などが設けている相談窓口が役立つ場合もあります。

薬剤師が担えるのは、相談を受けた時点で必要な情報を確認し、患者が次にどこへ相談すればよいかを考えるための手助けをすることです。
相談の入口の一つとして患者と関わり、必要な支援につなぐことが、薬局でのプレコンセプションケアを考えるうえで大切な視点です。

プレコンセプションケアを薬剤師がさらに深く学ぶには

ここまで、プレコンセプションケアの基本的な考え方と、薬局・薬剤師との関わりを紹介してきました。

全体像を知ると、今度は実際の業務でより具体的な疑問が出てきます。

  • 妊活前に服用している薬をどのように考えるのか
  • 避妊が必要な薬について患者へどう説明するのか
  • 葉酸やワクチン、栄養について何を伝えるのか
  • 男性のプレコンセプションケアにどう関わるのか
  • 不妊治療の処方箋では何を確認するのか
  • 妊娠や避妊といった話題を患者へどう切り出すのか

こうしたテーマでは、プレコンセプションケアの考え方に加え、個々の薬剤や治療、患者背景を踏まえた薬学的な知識が必要になります。

「調剤と情報 2026年9月号(Vol.32 No.11)」では、「薬局が地域の未来のためにできること——プレコンセプションケア 妊活・妊娠前からの健康管理」を特集しています。

調剤と情報 2026年9月号(Vol.32 No.11)

調剤と情報 2026年9月号(Vol.32 No.11)

特集 薬局が地域の未来のためにできること——プレコンセプションケア

妊活・妊娠前からの健康管理

不妊治療の保険適用拡大や緊急避妊薬のOTC化により、生殖や妊娠準備に関わる相談が薬局に持ち込まれる機会は確実に増えています。
本特集では、プレコンセプションケアを軸に、薬局が妊活前から関わるために必要な薬学的知識と実践的なアプローチを整理します。

まとめ

プレコンセプションケアは、妊活中の女性に限った取り組みではありません。
性別を問わず、自分の健康や将来について考え、妊娠・出産を含むライフデザインも見据えながら健康管理に取り組むという考え方です。

食事や栄養、生活習慣、感染症やワクチン、持病、避妊など、プレコンセプションケアに関係するテーマは幅広くあります。そのなかには、薬やサプリメントの相談など、薬局と接点を持つものもあります。

患者の希望や価値観を尊重し、薬剤師として提供できる情報を伝え、必要な場合には医師やほかの専門職、相談窓口へつなげるようにしましょう。

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