2025.12.26

【学会レポート】第35回日本医療薬学会年会

第35回日本医療薬学会年会

 第35回日本医療薬学会年会が11月22~24日、神戸国際展示場などで開催された。メインテーマは「医療薬学の深化と広がり―患者アウトカムの改善を目指して―」。生成AIやタスクシフトなど時宜を得たテーマで企画されたシンポジウム数は66に上り、全国から集まった薬剤師の声が各会場で活発に飛び交った。

 

 

抗精神病薬の代謝異常リスクを解説

 2日目午後のシンポジウム“「精神疾患×糖尿病×心不全」~複雑化する症例に対して薬剤師ができること~”では、精神疾患・糖尿病・心不全が併存しやすい背景や、患者の特徴、対応時の注意点などが5人の演者から語られた。
 赤嶺由美子氏(秋田大学医学部附属病院薬剤部)は、抗精神病薬による糖尿病・心疾患の発症リスクを解説した。統合失調症治療は薬物療法が大きなウエイトを占めるが、選択される抗精神病薬は第1世代から第2世代にシフトしてきており、処方実態調査(全国86施設対象)によると第2世代のオランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールが上位に並ぶ。赤嶺氏は、同調査のデータを紹介するとともに、「統合失調症患者は一般人口と比較して平均寿命が約10年以上短いことが報告されており、そのなかでも心血管疾患による死亡率が一般人口の約2倍」と説明。その背景にはメタボリックシンドローム(MetS)の有病率の高さがあり、要因として抗精神病薬の使用が挙げられると語った。
 抗精神病薬が誘発する代謝異常は、各受容体に対する薬剤の親和性の高さと関連する。赤嶺氏は、各抗精神病薬のプロフィールを示し、第2世代のなかでもH1、M1、5-HT2C受容体に親和性をもつMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)に注意すべきとしたうえで、特にクロザピンについて複数の報告を紹介。ある研究において同薬の血中濃度とトリグリセリドとの相関がみられたことから、「クロザピンの血中濃度から代謝異常に関しては予測できるかもしれない」とする一方、心血管疾患への影響に関しては見解が分かれていると述べ、薬剤師によるTDMの意義を説いた。

体重は“増加”とともに“減少”にも目を

 続いて椎崇氏(北里大学病院薬剤部)は、精神科専門薬剤師の視点から、薬剤師が押さえておくべき統合失調症患者の特性をさまざまなデータで紹介。そのうち喫煙率の高さについては、日本人全体で喫煙者が減少している現在でも、統合失調症患者は男性52.9%、女性24.4%といまだに高いことから、喫煙との相互作用をもつ薬剤を使用する際には留意するよう求めた。
 また、赤嶺氏と同様にMetSの有病率の高さにも言及。統合失調症患者では肥満症が48.9%、MetSが34.2%と一般人口よりも発症率が高いとしたうえで、特に外来患者は、喫煙を含む生活習慣の乱れがあるため入院患者よりもリスクが高いと説明した。
 そのような現状を受け、各ガイドラインでは抗精神病薬使用後のモニタリング項目のひとつとして体重が挙げられている。これについて椎氏は、抗精神病薬投与開始後12~16週は体重増加が発現しやすいとの報告を紹介する一方、入院患者ではBMI18.5未満の低体重の問題もあると強調。統合失調症の入院患者では低体重が17.5%と一般と比べ高く、特に50歳以上や女性で顕著であることや、低体重では死亡リスクが高まることを示し、注意を呼びかけた。




自己管理ツール「心不全ポイント」を連携に活用

 ポスター発表では、心不全管理を目的とした地域連携の報告が散見され、そのうち仙台循環器病センター薬剤部の笹野智子氏らの発表では、外来患者の症状変化を把握するツールとして心不全ポイント自己管理用紙(以下、心不全ポイント)を活用した成果が示された。
 心不全ポイントは、患者の自覚症状を点数化するツールで、大阪心不全地域医療連携の会(OSHEF)が作成。例えば、「外出時などの息切れ」、「むくみの悪化」、「咳」、「食欲低下」のうち1つ以上みられたら1点、主治医より至適体重が設定され、その基準を逸脱したら3点、脈拍が120回/分以上なら4点などと計算し、合計3点以上が早期受診を呼びかける目安とされる。地域の薬局は心不全ポイントを用いることで、適切なタイミングでの受診勧奨が可能だ。
 ポスターでは、心不全ポイント活用の実例が紹介された。同センター退院後の96歳男性がかかりつけ薬局を訪れた際に、対応した薬剤師は患者とのやり取りのなかで心不全増悪を疑ったため、心不全ポイントで症状を点数化。圧痕が残る下肢浮腫や体重増加があり4点以上と判定されたことから、同薬剤師は同センターに電話で相談し、同センターからの受診勧奨により翌日の受診、即日入院につながった。

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