【学会レポート】第58回日本薬剤師会学術大会

第58回日本薬剤師会学術大会が10月12、13の両日、国立京都国際会館で開催。メインテーマ「そうだ、薬剤師に聞いてみよう!~プロフェッショナリズムの涵養~」のもと、5疾患6事業を強く意識したプログラムが組まれ、参加登録者は8,000名を超えた。
Hospital at homeで薬剤師に求められることとは
初日午後の分科会「感染症の薬学的管理に求められる薬剤師の専門性」では、宮本雄気氏(京都府立医科大学救急・災害医療システム学教室)が、新しい医療モデルであるHospital at homeと、それを実践すべく組織された医療チーム「KISA2隊」について紹介し、在宅医療での薬剤師の活躍に期待を寄せた。
宮本氏によると、Hospital at homeとは、在宅医療において一般病棟と同程度の急性期医療を一定期間提供すること。皮下注射や人工呼吸器を使用したり、遠隔モニタリングシステムで患者の状態を把握するなど、急性期病院で行われる医療をそのまま在宅に導入する。
フランスに端を発したHospital at homeは、米英両国をはじめ各国に広まり、アジアでもシンガポールや台湾などで行われている。入院治療と比較した研究では、死亡率を下げずにADL低下を抑制、患者満足度向上につながったとのエビデンスが得られているという。宮本氏は2021年、新型コロナのパンデミックで多くの患者が自宅療養を余儀なくされるなか、国内でのHospital at home提供を念頭に置き、在宅医療チーム「KISA2隊」を結成。その活動により、ADLが低下した75歳以上の新型コロナ患者の約9割が自宅で治療を完遂するなどの成果が得られた。
宮本氏は、Hospital at homeに求められるのは継続性と多職種連携だとしたうえで、薬剤師が参画するうえで求められる能力として、①新規介入時の薬剤調整、②CYP3A4阻害薬使用時の相互作用の評価、③状態悪化時の初期対応と感染対策――などを挙げた。そのうえで、感染症対策においては「“(培養により耐性が認められ)セフトリアキソンがダメだったらどうしよう”というときに処方設計を一緒に薬剤師に考えてほしい」と呼びかけ、適切な抗微生物薬の選択のほか、患者の療養状態に応じた用法・用量の提案などを求めた。
服薬指導で“利き脳”を踏まえたアプローチを
一般演題では、薬局での対人業務の質向上を目指す取り組みが多く発表された。2日目午前に行われた口頭発表では、廣井淳二氏(さくらの薬局)が、患者に応じた服薬指導を行ううえでのハーマンモデルの有用性を報告した。
廣井氏によるとハーマンモデルとは、人間にはそれぞれ利き手があるように“利き脳”があり、思考のパターンは「A:論理・理性脳」、「B:堅実・計画脳」、「C:感覚・友好脳」、「D:冒険・創造脳」の4つに分類できるとする考え方。Aは数字で説得されるのが心地よい、Bは計画されたことを行うのが得意、Cは人情を重視し、自分よりも他人のために動く、Dはあまり細かいことを気にせず、大きなビジョンを語るのが好き――などの特徴がみられるという。
ハーマンモデルのイメージ
廣井氏は、4タイプの特徴を踏まえた患者指導の効果を検証。残薬確認時の声かけのパターンをA~Dのタイプ別に作成し、自薬局グループ4店舗の患者120名を対象に使用したところ、それぞれのタイプに合った声かけを行った場合は、そうでない場合と比べ、患者も薬剤師も満足度が高いという結果が得られた。例えば、論理的に考える傾向のあるAに対し、親身になって人情味のあふれるアプローチ(Cに適するアプローチ)をしても面倒くさがられたといった例もみられたそうだ。
廣井氏はこの結果を踏まえ、「受け入れられやすいアプローチとそうでないアプローチがあった。対物から対人(業務)へ向かうなかでコミュニケーションツールとしてハーマンモデルは有用」と主張。①評価が薬剤師の主観に依存する、②患者の各タイプへの割り付けの精度を高める必要がある、③患者への不利益が生じるため、タイプに極端に合致しないアプローチを行うことができない――という課題はあるものの、円滑な服薬指導に活かせる可能性があるとの認識を示した。
骨粗鬆症治療継続にチェックシールを活用
ポスター発表では、福岡市薬剤師会が骨粗鬆症治療継続率向上を目指して取り組んできた「福岡Boneアーバンモデル」の成果が報告された。この取り組みは、骨粗鬆症治療でビスホスフォネート(BP)内服薬が処方された患者に対し、日常の注意点などをまとめたチェックシールをお薬手帳に貼るというもの。患者に服薬アドヒアランス維持を促すとともに、指導する薬剤師が患者の状況を経時的に確認しやすくする。骨粗鬆症の薬物治療継続率は開始後1年で半数程度に低下するとの報告もあることから、その改善に薬局薬剤師が寄与するのがねらいだ。
ポスターでは、この取り組みの成果を2019年10月1日~2021年7月31日のデータで紹介。それによると、BP内服薬開始1年後に服用を継続できた患者は、介入実施群で91.4%(66/73名)、非実施群で78.8%(119/151名)と差がみられた。また、服用継続率は女性のほうが男性より有意に高かったという。これを踏まえ考察では、薬局薬剤師による介入の意義を強調、服薬後フォローアップなどを通じた地域への貢献の重要性を指摘した。
