【学会レポート】日本臨床試験学会 第17回学術集会総会

2026年2月19日からの3日間、神戸国際会議場にて日本臨床試験学会第17回学術集会総会が開催されました。「臨床試験が紡ぐ人々のしあわせ―対極の共存、協働による調和―」をメインテーマとし、臨床試験に携わる関係者が、それぞれの立場を超え、闊達な議論を交わしました。
日本臨床試験学会(以下、JSCTR)が展開してきたGCPパスポートやエキスパート、がんCRPといった認定制度は、専門領域の拡大とともに大きな転換期を迎えています。これまで多くの認定取得者が現場で活躍してきましたが、「取得した専門性をどうキャリアに結びつけるか」、「認定制度そのものを社会にどう根づかせるか」という具体的な道筋については、現在も継続的に議論がなされています。
シンポジウム「JSCTR認定取得者のキャリアプランと認定の価値化」では、認定取得者が取得した後の現状をどう感じていて、そして何を考えているか、そのリアルな声と具体的な取り組みを提示しつつ、認定制度を“取得するだけで終わらない価値”へどう高めていくのか等について多角的に議論され、認定取得者の未来を切り拓くヒントを共有する場となりました。
認定資格の力を科学的なデータで示し、「制度的な価値」へと結びつける ―永田翔子氏
永田翔子氏(独立行政法人国立病院機構静岡医療センター 臨床研究部治験管理室)は、自身が保有する「GCPエキスパート」や「がんCRP」等の資格が、単なる知識の蓄積ではなく、臨床試験現場における“考える力”の証明であり、その力を科学的なデータで対外的に示すべきだと語った。
永田氏はGCPエキスパートの資格取得の過程を振り返り、特別な試験対策よりも、日常業務に対してJ-GCPやICH-GCP等の根拠を常に確認すること、また、被験者保護や品質管理の観点から導き出した解決策を言語化するといった習慣が、試験合格に必要なスキルの練磨に直結していたと示した。
また、施設によっては認定資格が業務上必須ではなく、取得による直接的なメリット(昇給等)が少ない現状を認めつつも、エキスパートクラブへの参加によって仲間との繋がりができたことや、対外的に知識と経験を明確に示すことができるようになった等、取得後の実利面を紹介した。認定資格の取得は、背景にある根拠を理解し、主体的に判断できる能力を対外的に示す武器となること、また、専門家としての「過去の努力と実力」が可視化されることで、自身のキャリアに対する自信にも繋がっていると示した。
さらに永田氏は、資格保持者が臨床試験の質の向上や活性化に寄与していることを科学的なデータや数字で証明する必要性を訴えた。そして最終的には、認定者の存在が診療報酬のような公的な評価や、施設内でのスキルにふさわしい待遇といった「制度的な価値」へと結びつけることが理想だと語った。そのために、認定者が自分自身の存在価値を積み重ねていくことが重要であるとし、学会に対しては認定者の繋がりの促進や、成果の集積等を行っていくことを求めた。
認定取得者が繋がり、共に成長し、新たな価値を創造するためのネットワークがある ―長尾典明氏
長尾典明氏(がん研有明病院 先進がん治療開発センター)は、GCPエキスパートおよびがんCRP認定取得者のネットワーキングおよび成長と活躍の場づくりを目指した活動内容について講演した。
長尾氏ははじめに、2020年のコロナ禍に発足したGCPエキスパート取得者による「小集団活動8」の活動を紹介。次世代の教育担当者の育成と、参加者がともに学び成長できる場作りを目的とした本集団は、当時の認定制度委員長である樽野弘之氏の「こういう(コロナ禍の)時にこそ、GCPエキスパートが集まり、何かしらの取り組みをするべきではないか」という呼びかけに応じ、有志の数名で臨床研究・治験等に関する課題調査を開始したことにはじまる。
GCPエキスパート取得者を対象とした学会活動への要望調査(アンケート調査)の結果、取得者からは「認定者同士で情報交換やディスカッションができる場が欲しい」といった声が強く上がったことを示し、こういった意見を実現させるために結成されたのが「OLIVE」(Organization of Leaders in Innovation、 Validation、 and Excellence in Clinical Trials)であることを紹介した。
また、長尾氏は、認定取得者の成長プロセスを定義する「6段階のモデル」を提示。このモデルは、ネットワークへの興味(レベル1)から始まり、主体的な議論(レベル3)を経て、最終的には自組織や業界全体に影響を与え、課題解決を支援できるインフルエンサー的な役割を担う「レベル6」へと至る成長の軌跡を可視化したもの。上述のOLIVEは、本定義でいうレベル1~3の方々を対象に想定しているものであることを併せて示した。
また、長尾氏はOLIVEのほかに、「GCPエキスパートクラブ」の活動についても紹介。定期的な情報交換会の開催や学会セミナーやポスターセッションでの座長・ファシリテーターへの参画に繋げていることも示した。GCPエキスパート取得者およびがんCRP認定取得者がこういった役割を担うことが、自らの知識をブラッシュアップするだけでなく、「学会という公的な場で役割を果たした」という実感を獲得し、結果として、認定取得者が所属する組織内で自信をもって発言・行動するための大きな糧になっていると指摘。実際に参加者からは、「自ら学ぶ機会になった」、「他施設との交流で勇気をもらった」といった声が上がっており、認定取得者が“孤独な専門家”にならず、互いに高め合い、新たな価値を創造する仕組みが機能し始めていることを示した。
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