【連載】シンプルに始める 薬剤師の生成AI仕事術[Case2]

この連載では、薬剤師の日常業務で生成AIを活用する際に“どのようなプロンプト(質問、命令)を生成AIに入力すれば、どのような回答が得られるか”を、具体的な事例に沿って解説します。欲しい結果を得るためのプロンプト作成のコツが身につきます!
Case2 服薬指導チェックリストを作成したい
今回は、がん患者の疼痛管理に関するチェックリストを作成します。
入力プロンプト
ワンポイントアドバイス
👉 出力内容の薬学的な高い質を担保するために、生成AIに役割を与えましょう
👉 出力内容の教育的視点を担保するために、「教育的立場」という役割および使用者(若年者)を明示しましょう
👉 出力するチェックリストの分類を定義することで、作成されたチェックリストを理解しやすいものにしましょう
👉 分類ごとにナンバリングを依頼する場合、「ナンバリングしてください」などの日本語よりも「O1:」、「O2」などと、具体例を与えた方が伝わりやすいです
各生成AIのオススメ度
出力結果:Gemini(2.5Flash;無料版&有料版)
はい、承知いたしました。高血圧と糖尿病を合併している膵癌患者さん(65歳男性、アセトアミノフェン錠 800mg/日 + オキシコドン徐放錠 20mg/日で疼痛コントロール不良)に対する服薬指導のチェックリストを、若手薬剤師向けに作成します。ベテラン薬剤師として、O(観察項目)、C(ケア項目)、E(教育項目)に分類し、実践的な指導ができるよう項目を列挙します。
I. 観察項目(O)
患者さんの現在の状態と服薬状況を多角的に把握するための項目です。
O1: 患者さんの現在の疼痛の状態(部位、性状、強さ:NRS/VASで評価、増強・緩解因子)を確認する。特にオキシコドン服用後の疼痛変化を詳しく聞く。
O2: アセトアミノフェンの服用状況(服用時刻、服用量、残薬、自己調節の有無)を確認する。
O3: オキシコドン徐放錠の服用状況(服用時刻、服用量、残薬、自己調節の有無)を確認する。頓用薬(レスキュー薬)の有無と使用状況も確認する。
O4: 疼痛コントロール不良の原因として考えられる因子(疼痛の種類、薬効不足、副作用による服薬中断、不規則な服薬など)を詳細に聴取する。
O5: 現在の内服薬全体(癌治療薬、高血圧治療薬、糖尿病治療薬、その他常用薬、サプリメント、市販薬含む)を正確に把握する。特に併用禁忌・注意薬の確認。
O6: 高血圧のコントロール状況(自宅血圧測定の有無、平均値、変動)を確認する。
O7: 糖尿病のコントロール状況(血糖値測定の有無、HbA1c、SU薬などによる低血糖の既往・症状)を確認する。
O8: 一般状態(食欲、睡眠、活動性、気分)を確認する。疼痛や薬の副作用が日常生活に与える影響を把握する。
O9: 副作用の有無と程度(便秘、吐き気、眠気、めまい、口渇など、特にオピオイド関連症状)を確認する。便秘の状況は詳細に把握する。
O10: アレルギー歴(薬剤、食物など)を再確認する。
O11: 患者さんの薬に対する理解度、現在の薬物療法に対する不安や疑問、期待を聴取する。
O12: 患者さんのアドヒアランス(服薬に対する意欲、理解、実行度)を評価する。
O13: 家族や介護者の同席の有無と、その方の患者さんの服薬管理への関与度を確認する。
II. ケア項目(C)
患者さんの問題点に対して、薬剤師が具体的に介入・調整する項目です。
C1: 疼痛コントロール不良の原因を医師・看護師と共有し、疼痛管理計画(薬剤の増量、変更、頓用薬の導入・調整など)の提案を行う。
・特に、オキシコドン徐放錠の用量が20mg/日と少ないため、疼痛増強時に対するレスキュー薬の有無を確認し、未処方であれば処方提案を検討する 。
・アセトアミノフェンの用量も800mg/日と低いため、医師へ増量提案を検討する(常用量上限は4000mg/日)。
C2: オピオイドによる便秘に対し、予防的・治療的に緩下剤の適切な選択と用量調整を医師に提案する。
C3: 疼痛コントロールが不十分な場合、患者さんの状態に応じた薬剤変更(例: NSAIDs併用、神経障害性疼痛への薬剤追加など)を検討し、提案する。
C4: 高血圧や糖尿病の治療薬について、疼痛コントロール薬との相互作用(例: オピオイドによる血糖値変動の可能性)や、各疾患のコントロール状況を踏まえた用量調整の必要性を医師と連携して検討する。
C5: 副作用(吐き気、眠気など)が日常生活に与える影響が大きい場合、制吐剤や眠気軽減策などの対症療法を医師に提案する。
C6: 残薬がある場合や自己調節している場合は、その理由を深く掘り下げ、今後の服薬計画に反映させる。
C7: 患者さんが薬を管理しやすいように、一包化や服薬カレンダーの活用など、具体的な工夫を提案する。
C8: 必要に応じて、NST(栄養サポートチーム)や緩和ケアチーム、精神科リエゾンチームなど、多職種連携を推進し、患者さんの全人的ケアに繋げる。
III. 教育項目(E)
患者さんへの説明や情報提供を通じて、知識を深め、自己管理能力を高めるための項目です。
E1: 患者さんの現在の疼痛治療の目標(QOLの向上、疼痛緩和のレベルなど)について、患者さんと共通認識を持つ。
E2: アセトアミノフェン錠について、効果発現までの時間、持続時間、推奨用量、過量服用のリスク(肝障害)について具体的に説明する。自己調節の危険性を強調する。
E3: オキシコドン徐放錠について、徐放性の意味(決められた時間に継続して服用することの重要性)、効果発現までの時間、持続時間、疼痛緩和のメカニズムを説明する。
E4: レスキュー薬(もし処方されている場合)の必要性、使用タイミング、使用量、使用後の評価方法を明確に説明する。徐放剤との区別を徹底する。
E5: オピオイドの一般的な副作用(特に便秘、吐き気、眠気)とその対処法(例: 便秘に対する食事、水分、運動の推奨、下剤の必要性)について具体的に説明する。吐き気や眠気は服用開始初期に多いこと、慣れてくることで軽減される可能性があることも伝える。
E6: 疼痛がコントロールできない場合の相談窓口(担当医師、看護師、薬剤師)を明確に伝え、我慢せずに相談するよう促す。
E7: 高血圧治療薬と糖尿病治療薬の重要性、服薬継続の必要性、中断した場合のリスク(合併症の進行)について、患者さんの理解度に合わせて説明する。
E8: 糖尿病の食事・運動療法が薬物療法と密接に関わることを説明し、血糖コントロールの目標値を共有する。
E9: 併用注意薬(特に市販の風邪薬、鎮痛剤、サプリメントなど)の確認の重要性を伝え、新たに服用する際は必ず薬剤師に相談するよう指導する。
E10: 薬の保管方法、期限、廃棄方法について説明する。
E11: 自動車運転や危険な機械操作に関する注意点(特にオピオイドによる眠気や集中力低下)を説明する。
E12: 患者さんが薬物療法に積極的に関わるよう、質問を促し、患者さんの言葉で理解できたかを確認する(「フィードバック法」を活用)。
このチェックリストはあくまで一般的な項目であり、個々の患者さんの状態や状況に応じて柔軟に対応することが重要です。若手薬剤師には、このリストを参考にしながら、患者さんとのコミュニケーションを大切にし、個別のニーズに応じた服薬指導を実践するよう指導してください。
2年目の病院薬剤師が患者との面談に行く際、このチェックリストは役立ちそうでしょうか。入力プロンプトで「対象症例」の部分を変更することで、さまざまな症例のチェックリストを生成してくれます。また「出力内容」を、分類方法やチェック欄をすべての先頭に付けるなどと変更することで、目的に合った出力結果を得ることができます。
興味深いことに、同じプロンプトであっても生成AIによって出力されるチェック項目は異なりました。しかし、有料版の生成AI間で明らかな質の違いはみられません。
なお「対象症例」に、実在する患者の情報をあまりに細かく入力すると、患者の特定につながりかねませんので、個人情報に配慮しながら活用する必要があります。
1996年北海道大学卒。医薬品情報専門薬剤師、上級医療情報技師、診療情報管理士、日本メディカルAI学会公認資格、ディープラーニング実装師A級などの資格をもち、情報(AI)に強みをもつ
