【連載】シンプルに始める 薬剤師の生成AI仕事術[Case4]

この連載では、薬剤師の日常業務で生成AIを活用する際に“どのようなプロンプト(質問、命令)を生成AIに入力すれば、どのような回答が得られるか”を、具体的な事例に沿って解説します。欲しい結果を得るためのプロンプト作成のコツが身につきます!
Case4 適応外使用に関する情報を検索したい
今回は、女性の男性型脱毛症におけるスピロノラクトンの適応外使用について、情報収集します。
入力プロンプト
#役割:あなたは、病院の臨床倫理に関するエキスパートで、病院内で使用される医薬品の適応外使用について、情報収集を行い、その臨床使用の適正性について判断する立場にあります。今回、適応外使用として以下の申請がありました。情報収集を行い、その使用の妥当性について、根拠の提示およびレポートを作成してください。
# 対象医薬品:スピロノラクトン錠
# 対象適応:女性の男性型脱毛症
# 出力内容:対象医薬品の対象適応への適応外使用について、エビデンスレベルの高い情報を収集し、それらの情報を個別に要約してください。また、それらの情報を統合的に判断し、臨床適応における判断の材料として、ベネフィットとリスクの面からレポートを作成してください。
ワンポイントアドバイス
👉 適応外使用であることを明記し、効率良い情報収集を依頼しましょう
👉 生成AIに役割を指定することで、回答の質を向上させましょう
👉 情報収集を依頼する医薬品名と使用用途を具体的に明示しましょう
👉 各情報について個別に要約を提示するよう依頼することにより、元情報のリンクをたどって詳細を確認すべき情報源か判断できます
👉 ベネフィットリスクバランスも記載依頼することで、臨床適応のデメリットについても判断しやすくなります
各生成AIのオススメ度
出力結果:ChatGPT(o4;有料版)
了解です。最新の系統的レビューや皮膚科系ガイド・総説を中心に、女性の男性型脱毛症 (FPHL/FAGA)に対するスピロノラクトン (以下 SPT)の適応外使用について調査・要約し、最後にベネフィット/リスクの統合評価と臨床実装時の留意点を示します。
1 ) 個別エビデンスの要約 (エビデンスレベルが高い順)
A. 系統的レビュー・総説 (査読誌)
1 . 系統的レビュー (2023, Clin Cosmet Investig Dermatol)
女性FPHLにおける経口SPTの有効性・安全性を解析。複数の観察研究や小規模試験を統合し、「毛量改善・脱毛抑制に有効」と結論。重大な有害事象は稀で、主な副作用は低血圧/高Kなどと整理。無作為化比較試験(RCT)の不足が限界と明記。全体として“有望だがエビデンス質は中等度~低”と評価。PMC
〈中略(エビデンスレベル順に全14文献の要約が提示されている)〉
2)ベネフィット/リスク評価(適正使用の妥当性)
ベネフィット
・ 有効性の一貫した示唆: 毛量増加・脱毛進行抑制の報告が複数(観察研究・前向きオープン試験)。併用(外用ミノキシジル/低用量経口ミノキシジル)で効果増強の可能性。PMC、+1、RACGP
・ 用量の実務目安: 50mg/日開始、100–200mg/日へ調整。評価は少なくとも6か月以降。PMC
・ コンセンサスの後押し: スペイン専門家ステートメントでは一次治療の選択肢 (エビデンス2a/グレードB)。actasdermo.org
リスク/限界
・ エビデンス質: 高品質RCTの不足。観察研究中心でバイアスの懸念(選択・情報 ・併用治療)。PMC、+1
・ 有害事象: 高K血症(特に高齢・腎機能低下・RAAS阻害薬併用時)、低血圧、月経不順、乳房緊満、利尿に伴う頻尿など。高Kは若年健常女性では稀だが、FPHLでは高年齢層が多く注意。PubMed、PMC、jaad.org
・ 妊娠: 妊娠中禁忌(男性胎児の外性器形成障害の懸念)。避妊指導は必須。総説・患者資材でも周知。PMC、bad.org.uk
・ 本邦制度面: 適応外・原則自費。使用時は十分な説明と同意(IC)、保険請求・救済制度の扱いにも留意。池袋スカイクリニック
〈以下、「3 )候補レジメンとモニタリング提案」、「4 )倫理・運用面」と続くが、中略〉
5 ) 統合判定(本申請の妥当性)
・ 総合評価:
・ 有効性: 観察研究・前向き単群・系統的レビューで一貫して改善傾向。ただし高品質RCT不足のためエビデンスの確実性は中等度以下。PMC、+1
・ 安全性: 適切な患者選択とモニタリングで概ね良好。ただし高齢者/腎機能低下/RAAS阻害薬併用では高Kリスク上昇。PubMed
・勧告: 条件付き承認 (施設内)が妥当。一次選択は外用ミノキシジル、これで不十分な妊娠可能性のない女性に、SPT25-50mg/日開始→最大100-200mg/日で試行、6か月で効果評価。併用療法(外用/低用量経口ミノキシジル)は選択肢。明確なIC取得と計画的モニタリングを前提に実施。PMC、actasdermo.org
結論(病院内審査用サマリー)
・ 推奨: 条件付き可。FPHL に対する SPT の適応外使用は、外用ミノキシジル不応・再発例、妊娠の可能性のない女性、腎機能良好で高Kリスクの低い患者を対象に、説明同意+モニタリング計画を明文化して実施。
・ プロトコル要点: 開始25-50mg/日、忍容性と効果で最大100-200mg/日、6か月で効果判定。開始前/増量時はK・Cr/eGFR・血圧をチェックし、高齢者/併用薬ありは頻回に。妊娠は厳格禁忌。PMC、PubMed
必要でしたら、この内容を院内申請書様式に合わせた ** 審査用レポート(様式付き)**に整形します。
マルチプレイヤーのChatGPTは、インターネット上の情報収集は苦手とされ、最新情報の検索では他の生成AIに遅れをとってしまうことが多いです。しかし、今回の課題についてはChatGPTでも、ファクトチェック可能なリンクを示しながら、かなり質の高いエビデンスと統合レポートを生成してくれました。もちろん、他の生成AIも有用な結果を出力してくれました。本Caseの入力プロンプトの「医薬品」と「適応」を変更するだけで、さまざまな適応外使用のレビューを実行させることが可能です。
臨床適応へのエビデンス収集およびレビューとして、時間短縮につながる十分に臨床活用可能なレベルの回答内容であると考えられます。
1996年北海道大学卒。医薬品情報専門薬剤師、上級医療情報技師、診療情報管理士、日本メディカルAI学会公認資格、ディープラーニング実装師A級などの資格をもち、情報(AI)に強みをもつ


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