薬剤師・医療ニュース from Jiho[2025年6月上旬]

アインHD、クラフト買収で中長期ビジョンを前倒し達成へ
アインホールディングス(HD)が、さくら薬局を運営するクラフトなど「さくら薬局グループ」の買収を発表した。両社の調剤売上高を合算すると5,000億円規模となり、直近の業績から単純計算するとアインHDは売上高トップの座を守ることになる。先に経営統合を公表していたツルハHDとウエルシアHDのドラッグストア連合の調剤売上高は4,000億円規模で、今回の買収がなければ首位を明け渡していた。
薬局・ドラッグストア業界では近年、再編が加速している。ツルハHDとウエルシアHDは、当初は2027年末としていた経営統合の時期を2025年12月に前倒しすることを4月に公表し、実現に向けて着々と準備を進めている。さらに、日本調剤が非上場化を検討していることも4月に明らかになっており、業界を取り巻く勢力図は今後急速に変わっていく可能性がある。
ただ、アインHDにとって、今回のさくら薬局グループの買収は、直近の競合他社の動向を見て急転直下で決めたわけではなく、もともと志向してきたM&A(合併・買収)を通じた事業拡大の延長線上にあったとも言える。
アインHDが3月に公表した中長期ビジョンでは、調剤を含むファーマシー事業は2024年4月期の売上高3,575億円から2030年4月期に5,000億円、2034年4月期に7,000億円まで引き上げる方針を掲げていた。目標時期の前倒しにはなるものの、今回の調剤売上高5,000億円という数字は中長期ビジョンで示した範囲内に収まっており、この規模への事業拡大は想定外ではなく、「既定路線」だった。
ー 都市部での事業展開に弾み
北海道を地盤に全国に店舗を広げてきたアインHD。首都圏、関西圏、東海圏といった人口密集地域を中心に展開するクラフトの買収は、店舗網を相互補完できるメリットがあるという。
アインHDは、「当社が本州に進出した際には、すでに出店する余地がないといった案件も過去にはあり、(クラフトのグループ入りで)これまで出店できていなかった場所にもアクセスすることにつながる」と説明。好立地の門前薬局などを含め、都市部での事業展開に弾みがつくことを期待する。
足元では、ドラッグストア勢を中心に競合他社がM&Aで調剤売上高をさらに拡大させることが見込まれる。こうした中で、アインHDはクラフトの買収を通じたシナジー効果をどこまで発揮できるのか、そしてさらにM&Aを進めていくのかが今後の焦点となりそうだ。
業界大手の調剤関連売上高ランキング
※1 アインHDは2024年4月期の数字
※2 スギHDがI&Hを連結子会社化したのは下期からのため、今回の本決算にI&Hの上期の売上高は含まれていない
※3 クラフトは持ち株会社NSSK-WWの2024年3月期の数字
※4 ツルハHDは2024年5月期の数字
|2025年5月30日・PHARMACY NEWSBREAK|
改正薬機法を公布、3段階で施行へ
政府は、改正医薬品医療機器等法を公布した。今後3段階で施行する。
公布後1年以内に施行されるのは、指定乱用防止医薬品の創設や要指導医薬品のオンライン販売解禁(特定要指導医薬品の新設含む)など。調剤業務の一部外部委託の解禁や新たに認定薬局制度に加わる「健康増進支援薬局」(旧健康サポート薬局)の新設などは公布後2年以内に施行される。
調剤済みの処方箋と調剤録の保存期間を5年にする変更は公布後2年以内の施行となる。
|2025年5月21日・PHARMACY NEWSBREAK|
財務省財政制度等審議会、中長期の「理想」として「薬剤師による処方」
財務省財政制度等審議会の「春の建議」には、持続可能な社会保障制度を構築するため、中長期的な視点からの医療・介護の「理想像」を示している。その中では、薬剤師による医薬品の処方も一例として取り上げた。詳細の記載はないが、医師の「処方権」の一部を薬剤師も行使できるようにするイメージのようだ。
「理想像」では、まず制度の在り方を整理。質の高い医療・介護の効率的な提供をするための方策として、タスクシフト・シェアを通じた多職種間の連携・分業、リフィル・長期処方の普及などを例示している。また、セルフケア・セルフメディケーションの浸透を通じた保険給付範囲の適切な設定なども「重要」とした。
薬剤師による処方は、医療に関わるステークホルダーごとに整理した「理想」の一つとして紹介。「調剤薬局から見れば、服薬管理が中心的な役割となっており、医師に代わり薬の処方を行うなど薬剤師の活躍の場が広がっていることなどが理想である」としている。
処方は現行の法制上、医師や歯科医師、獣医師のみに認められている。一方、諸外国では医師との契約の範囲内で薬剤師に処方を認めているケースなどもあり、国内でも薬剤師に「処方権」を求める署名活動をしている団体もある。
|2025年5月27日・PHARMACY NEWSBREAK|
▶ 参考資料
→春の建議に示された「医療・介護の理想像」について詳しく知りたい方は「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」のp.59をご覧ください。
厚労省、監査拒否の返還金逃れの再指定「拒否」へ
厚生労働省保険局は局長通知を発出し、監査拒否などで返還金が確定していない場合も保険医療機関・薬局の再指定を拒否できるという方針を示した。2025年6月1日から適用する。返還金の納付逃れの「逃げ得」を是正する狙いという。
厚労省はこれまでも再指定を拒否できるケースを通知で示していた。今回の通知では、その中の一つ「不正請求や不当請求の返還金(加算金を含む)を納付していないとき」という項目に、「監査拒否などで返還金が確定していない場合を含む」という文言を追加した。
ー 厚生局などから改善求める声
指定が取り消された保険医療機関・薬局は取り消し後5年間は再指定されない。一方、監査拒否などにより返還金の金額を確定させないことで返還金の納付を逃れた場合も5年経過することで再指定され得る「逃げ得」状況だったため、地方厚生局などから運用改善を求める声が上がってきていたという。
このほか、▽指定を取り消された医療機関などの開設者が別の施設の指定申請をした▽取り消し処分を逃れるために指定を辞退し、その後しばらくして指定申請した▽指定取り消しを2度以上重ねて受けた▽何度も指導監査を受けているのに指示事項を改善せず指定更新時を迎えた―ときも引き続き再指定を拒否できる。
ー 保険医・薬剤師の再登録拒否も
通知では加えて、不正請求・不当請求の返還金などを納付していない(監査拒否などで返還金が確定していないときを含む)開設者の保険医・保険薬剤師の登録の再登録拒否も示している。
通知の名称は「健康保険法第65条第3項第6号および第71条第2項第4号に該当するときの保険医療機関または保険薬局の指定拒否ならびに保険医または保険薬剤師の登録拒否について」。
|2025年5月20日・ PHARMACY NEWSBREAK |
介護職向けGL、「原則医行為ではない」39種類を掲載
厚生労働省の研究班は、介護職員向けの「『原則として医行為ではない行為』に関するガイドライン(GL)」をまとめた。▽血糖測定▽経管栄養▽食事介助▽喀痰吸引▽在宅酸素療法―などに関係する39種類を掲載。行為ごとに、前提となる知識、行為の実施方法、緊急時の医療職との連携方法などに関する要点を盛り込んだ。
これらの行為を巡り厚労省は、直近では2022年12月の医政局長通知で解釈を示している。介護現場への周知が不十分との指摘があったため、政府が2024年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」で、GLの策定方針を示していた。
GLには研究班が介護現場で行ったヒアリング調査を踏まえたQ&Aなども盛り込んでいる。記載された各行為は、利用者の病状が不安定などの理由で専門的な管理が必要な場合は、医行為とされる場合もあり得ると留意を促した。医師、歯科医師、看護職員に対して専門的な管理の要否を確認する必要があるとしている。
|2025年5月28日・MEDIFAX|
【原則として医行為ではない行為に関するガイドライン】
→原則として医行為ではない行為の内容について詳しく知りたい方は厚生労働省「『原則として医行為ではない行為』に関するガイドラインについて」(令和7年5月19日事務連絡)をご覧ください。
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