薬剤師・医療ニュース from じほう[2025年12月上旬]

セレコキシブのスイッチ化、全団体「反対」――評価検討会議、「ロコアテープ」も
厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は21日、非ステロイド性消炎・鎮痛剤(NSAIDs)のセレコキシブ(製品名「セレコックス」)など4成分のOTC化に向けた検討を始めた。セレコキシブを巡っては、関係学会・医会、日本OTC医薬品協会を含めた全4団体がOTC化に「反対」するなど慎重意見が相次いだ。
セレコキシブは1992年に米サール社(現・ファイザー社)で合成された、世界初のコキシブ系のNSAIDs。スイッチOTCした際の効能・効果は「各種鎮痛」。同種同効薬・類薬では2025年にメロキシカムを有効成分とする「メロキシン」のスイッチ化が承認された。
一方、日本整形外科学会と日本臨床整形外科学会、日本臨床内科医会、日本OTC医薬品協会の4団体は、セレコキシブのOTC化にそろって反対する見解を示した。
日本臨床内科医会は、セレコキシブが高用量、長期投与の場合、心血管疾患リスクが高まると指摘。「医療現場では、服薬前のリスク評価、服薬後のきめ細かい経過観察あるいはモニタリングが必須」として、適正使用の観点からスイッチ化には「不向き」とした。日本整形外科学会は、同剤の適応疾患である関節リウマチは医師の診断が必要であると指摘した。
OTC薬協は、セレコキシブが開発された米国でもスイッチ化されていない現状から、米国でスイッチ化が議論されるなど「状況変化があった場合に、改めて検討することとしてはどうか」と先送りを提案。その上で磯部総一郎構成員(OTC薬協理事長)は「今後医療リソースが厳しくなった時に、リウマチ患者などの鎮痛剤をどう考えるかは、将来的な議論があるだろうと思っている」と述べた。
― 高い経皮吸収性、複数枚使用を危惧
このほか、経皮吸収型NSAIDsのエスフルルビプロフェン・ハッカ油(「ロコアテープ」)を巡っても慎重意見が相次いだ。スイッチ化した際の効能・効果は「鎮痛、消炎」。同剤は経皮吸収性が高く、2枚貼付時の全身曝露量がフルルビプロフェン経口剤の通常用量投与時と同程度に達するため、用法・用量では「同時に2枚を超えて貼付しないこと」とされている。
日本整形外科学会、日本臨床整形外科学会、OTC薬協共にスイッチ化には「反対」した。日本整形外科学会は、貼付剤は患者が1回に複数枚を使用する可能性の高い製剤で、過剰投与につながる恐れがあることなどを危惧した。
富永孝治構成員(日本薬剤師会常務理事)は、医師や薬剤師が指導をしても「(用法・用量を)守らない人がいる現実がある」とした上で、同剤は「医療用医薬品として、医師と薬剤師が連携して初めて適正使用が確保される薬だ」と強調した。
|2025年11月21日・PHARMACY NEWSBREAK|
血液凝固阻止剤、副作用に「脾破裂」追加――厚労省が添付文書改訂を指示
厚生労働省医薬局医薬安全対策課は26日付の課長通知で、血液凝固阻止剤5製品などについて添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう指示した。5製品はブリストル マイヤーズ スクイブの「エリキュース」、第一三共の「リクシアナ」、日本べーリンガーインゲルハイムの「プラザキサ」、バイエル薬品の「イグザレルト」、エーザイの「ワーファリン」。「重大な副作用」に「脾破裂に至る脾臓出血」を追加する。国内外の症例報告と文献報告で、脾破裂と経口抗凝固剤の因果関係が否定できない症例が認められたことなどを踏まえての対応。
アストラゼネカ(AZ)の直接作用型第Xa因子阻害剤中和剤「オンデキサ」は、「重要な基本的注意」の項目に、「投与終了4時間後の時点で、直接作用型第Xa因子阻害剤または低分子ヘパリンによる本来の抗凝固作用が期待できる」と追記する。AZが提出した薬物動態と薬力学モデルを用いたシミュレーション結果を反映させた。
ヤンセンファーマの循環器官用剤「トラクリア」は、「警告」と「用法・用量に関連する注意」「重大な副作用」の欄に「自己免疫性肝炎」を追記する。
サノフィの酵素製剤「セレザイム」は、「重要な基本的注意」と「重大な副作用」の欄に「Infusion reaction」を加える。
中外製薬の抗PD-L1抗体「テセントリク」は、「重大な副作用」に「溶血性貧血」を追記する。
合成抗菌剤トスフロキサシントシル酸塩水和物(一般名)は「重大な副作用」に「尿路結石」を加える。また、結晶尿を伴う急性腎障害に関する注意を追記する。同剤は富士フイルム富山化学の「オゼックス」やヴィアトリス製薬の「トスキサシン」など。トラクリアとセレザイム、テセントリク、トスフロキサシントシル酸塩水和物は、薬剤と副作用の因果関係が否定できない症例が集積したことに伴う対応となる。
このほか再生医療等製品では、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬「ゾルゲンスマ」について、「重要な基本的注意」の項に記載している心筋トロポニンI測定の内容を改める。従来は心筋トロポニンIの測定を、投与前と投与後は初月に週1回、2カ月目以降は月1回行っていたが、改訂後は投与前と投与後、おおむね1カ月以内に測定を行うことになる。心筋トロポニンIの上昇をきっかけに心機能が低下したという症例報告がこれまでなかったことから、記載を修正する。
|2025年11月26日・日刊薬業|
都道府県に会議体設置――地域フォーミュラリで厚労省提案、自民・維新に
自民党と日本維新の会は26日、与党の社会保障制度改革協議体で、地域フォーミュラリの推進・促進策を検討した。厚生労働省は推進策として、2026年度中に各都道府県で地域フォーミュラリ策定のための会議体を設置することを提案。自民側の代表者の田村憲久衆院議員は会議後、「政府が目標としてやっていただければ」と述べ、容認する姿勢を示した。
厚労省は議員向けの配布資料で、地域フォーミュラリの普及が進まない要因を列挙。今後の普及に向け、26年度中に各都道府県に「策定する場を設ける」との目標を掲げ、地域フォーミュラリ策定に向けた合意形成や会議運営、薬剤リストの作成などを国が支援する方針を示した。
具体的には▽都道府県単位での医療関係者間の合意形成促進▽会議運営支援による安定的な活動継続▽医療現場での認知拡大と処方選択に活用するためのフォーミュラリの理解促進▽フォーミュラリの効果検証のため、生活習慣病薬等の後発医薬品の成分別使用割合のレセプトデータを把握・分析・共有すること―を国が支援することを提案した。支援に当たっては、資料中に「大阪府の取り組みを参考にする」との方針も明記した。
自民・田村氏によると、こうした提案に対して「地域によって後発品などの流通状況が違うので、一定の地域の裁量は当然ある。ただ、その中でフォーミュラリを(地域が)作りやすいような環境を(国が)つくるべきだ」との意見が出た。また、別の議員によると「(薬剤費の)削減効果があるからというだけで全国に普及させるのは難しく、地域ごとの違いを考慮する必要がある」との趣旨の意見が出たようだ。
― 長期品選定療養、自己負担「さらなる引き上げ」
同日の協議では、長期収載品の自己負担の見直しも議題に上がった。現状では後発品と長期品の差額の4分の1が自己負担(「特別の料金」)となっているが、厚労省は資料中で、今後の方向性として「『特別の料金』の割合のさらなる引き上げを検討」と明記。引き上げの是非の論点提示にとどまらず、事実上、引き上げ自体に前向きな姿勢を示した形だ。田村氏によると、議員から「引き上げを含め検討すべき」との意見が出たという。
中医協や社会保障審議会医療保険部会では、これまでに厚労省の事務局案として、自己負担を「2分の1」「4分の3」「1分の1」のいずれかに引き上げることについて、「どのように考えるか」との表現で、委員の意見を求めていた。ただ、保険者らは自己負担の引き上げに賛成する一方、医療関係者らは引き上げに慎重姿勢で、政府としての方向性は明確に示されていなかった。
具体的にどの程度の引き上げとすべきかについては、与党の社会保障制度改革協議体で引き続き検討される見込み。維新の梅村聡衆院議員は、現時点で後発品の使用割合が9割を超えている現状を指摘。仮に自己負担の割合をさらに上げた場合、「同じ効果が出るのかも、見極める必要は当然ある」と述べた。
OTC類似薬に関する2度目の検討は次回になる見通し。
|2025年11月26日・日刊薬業|
子宮筋腫薬「イセルティ」など審議――3日に第一部会、新有効成分は4件
厚生労働省は12月3日に薬事審議会医薬品第一部会を開催する。審議品目には新有効成分含有医薬品が4件あり、キッセイ薬品工業の子宮筋腫治療薬「イセルティ」などが含まれている。
イセルティは、「子宮筋腫に基づく下記諸症状の改善 過多月経、下腹痛、腰痛、貧血」を対象疾患とするGnRHアンタゴニスト。キッセイの自社創製品で成長ドライバーの一つ。国内での開発は同社が行っており、子宮筋腫に続いて、今年3月から子宮内膜症を対象とした臨床第3相試験も開始している。欧州では、導出先の英セラメックス社が2024年9月に子宮筋腫治療薬として発売し、同年12月には子宮内膜症の適応も追加している。
ほか3件のうち、PTCセラピューティクスの「セピエンス」は、「フェニルケトン尿症」を対象疾患とする。同剤は、細胞内テトラヒドロビオプテリン(BH4)の前駆物質であるセピアプテリンを化学合成した経口剤だ。
オーファンパシフィックの「ラヴィクティ」の対象疾患は、「尿素サイクル異常症」。同社は、尿素サイクル異常症を適応として「ブフェニール」を13年1月から販売済み。成分は異なるが、ラヴィクティも体内でフェニル酪酸となるプロドラッグとなる。
クリニジェンの「プリミーフォート」の対象疾患は「極低出生体重児等の体重増加不全を呈する新生児および乳児の栄養管理」。同剤は人乳や各種栄養成分を配合した経腸用液で、栄養補給によって乳児の成長を手助けする。
― 参天の後天性眼瞼下垂薬も
新有効成分以外では、参天製薬の後天性眼瞼下垂治療薬「アップニークミニ点眼液」が審議される。申請区分は新効能と新用量、剤形追加。参天は20年にRVL ファーマシューティカルズ社との間で同剤に関する独占的ライセンス契約を締結し、国内での開発を進めてきた。米国では、RVL社が販売している。
同一成分の医療用医薬品として、かつて佐藤製薬の点鼻・点眼用局所血管収縮剤「ナシビン点鼻・点眼液0.05%」があった。適応は、耳鼻科用が「上気道の諸疾患の充血・うっ血」で、眼科用は「表在性充血(原因療法と併用)」だったが、すでに終売している。同じ成分を配合した同社のOTC医薬品「ナシビンMスプレー」は現在も販売している。
バイエル薬品の非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬「ケレンディア」は新効能、新用量医薬品が申請区分で、「慢性心不全(ただし慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)」の適応追加を審議する。同剤は22年3月に2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の適応で承認されている。
ヤンセンファーマ(J&J)の「オプスミット」は「肺動脈性肺高血圧症(小児用量の追加)」が対象疾患。申請区分は小児用分散錠1mgと2.5mgが新用量・剤形追加、錠10mgが新用量医薬品。同剤は25年3月31日付で特定用途医薬品に指定されている。
報告品目は1件で、武田薬品工業の先天性血栓性血小板減少性紫斑病治療薬「アジンマ」。申請区分は新用量医薬品で、対象疾患は「先天性血栓性血小板減少性紫斑病(小児用量の追加)」。同社は25年3月、12歳未満の小児患者への適応拡大に関する一部変更承認申請を行っていた。
承認関係以外では、ウルトラジェニクス ジャパンの長鎖脂肪酸代謝異常症(LC-FAOD)治療薬トリヘプタノイン(一般名)について、条件付き承認制度の適用の可否の判断結果を報告して諮る。同社は25年8月に条件付き承認制度に基づき、国内で承認申請を行っていた。このほか希少疾病用医薬品の指定7件の審議などを予定している。
|2025年11月19日・日刊薬業|
専門薬剤師、「第三者機関」が認定へ――厚労科研・益山班、制度整備指針案を年度内に
現在、各学会や職能団体が認定している専門薬剤師を、「第三者機関」が認定する仕組みへ移行する準備が進んでいる。東京薬科大薬学部の益山光一教授は24日、日本医療薬学会年会(神戸市)で講演し、自身が研究代表者を務める厚生労働科学研究班で、今後の第三者機関の運営や各学会での制度整備の指針となる「専門薬剤師制度の在り方」と「整備指針」の案を年度内に作成する方針を示した。
専門薬剤師制度を巡っては、学会や職能団体がそれぞれ独自に制度を構築してきたことで、認定要件(基準)の不統一や、専門薬剤師の質の不均一が生じており、「標準化」の必要性が指摘されてきた。さらに、認定関連費用が学会の収入となるなど、学会が認定を行うことに対する利益相反の問題も指摘され、「第三者機関が認定を行う仕組み」の検討が求められている。
こうした背景を踏まえ、益山氏が研究代表者を務める2024~25年度厚労科研「専門薬剤師が医療の質に与える効果とその評価に関する研究」では、医師・歯科医師の専門認定制度の在り方も参考に、専門薬剤師の評価・認定方法や、認定機関の業務内容などを検討。年度内に「専門薬剤師制度の在り方」として取りまとめるとともに、「在り方」を踏まえて各学会がどのように制度を整えるべきかを示す「整備指針」の案も作成するという。
将来的には、厚労科研の案を基に、第三者機関が「在り方」と「整備指針」を策定し、各学会の専門薬剤師制度を審査するための「審査対象項目と評価指標」を設定。各学会にはこれらに準拠した制度を再設計し、第三者機関の認証を得るよう促す。また、認定試験は各学会が行い、各学会から合格者の報告を受けた第三者機関が客観的立場から認定する仕組みを想定している。
― 第三者機関は「既存機関」活用も
益山氏は講演後の取材に対し、第三者機関を新設する可能性は否定しないものの、「既存の機関の活用を含めて、現実的な対応が必要と考えている」と述べた。
また、専門薬剤師制度は患者のためにこそあるべきで、「患者に分かりやすい制度にすることが最も重要」と強調。第三者機関の認定を受けた専門薬剤師は、専門医と同様に、患者向け広告を可能とするよう厚生労働省に提案することも視野に入れていると話した。
|2025年11月25日・PHARMACY NEWSBREAK|