薬剤師・医療ニュース from じほう[2026年7月下旬]

薬局での腎機能把握、5.5%にとどまる――医薬品情報学会、考慮必要な患者でも低水準
日本医薬品情報学会の学術大会が11日、東京都内で開催された。シンポジウム「腎機能障害患者における医薬品情報」では、薬局での腎機能情報の把握率が依然として低く、腎排泄型薬剤の過量投与を防ぐ疑義照会などにつながりにくい現状が報告された。
メディカルシステムネットワークの鈴木すみれ氏は、熊本大大学院の近藤悠希氏らが全国42万人の患者を対象に実施した調査で、薬局における腎機能の把握率が全来局者の5.5%にとどまったとの報告を紹介した。腎機能の把握率は、がん患者で24.2%、関節リウマチ患者で13.3%、高齢者(70代)でも7.6%にとどまり、鈴木氏は、腎機能に配慮した薬物治療が必要な患者で「腎機能が適切に把握されていない」と指摘した。
さらに、腎機能に応じた用量調節が求められる抗ウイルス化学療法剤バラシクロビルについて、直近1年以内の腎機能検査値情報がある腎機能障害患者の帯状疱疹・水痘に対する処方を鈴木氏らが調査したところ、682件のうち171件(25.1%)で過量投与となっていた。このうち111件(64.9%)は院外調剤で、鈴木氏は「薬局薬剤師の適切な関与で過量投与を防げる可能性がある」と述べた。
鈴木氏は、これまで薬局で患者情報を入手しにくかったことが、腎排泄型薬剤の適正使用を難しくする一因だったと説明。オンライン資格確認や、近く稼働する電子カルテ情報共有サービスの普及により、薬局でも腎機能に関する情報を入手できる環境が十分に整うことを期待した。さらに、2027年4月施行予定の改正労働安全衛生法で定期健康診断の項目に血清クレアチニン値が追加されることに触れ、「薬局でも腎機能検査値が分かることが当たり前になるかもしれない」との見方を示した。
一方、過去の調査では、疑義照会の実施は腎機能情報の有無ではなく、投与量チェックの重要性の認識や過量投与による副作用の経験が強く関連していたことを紹介。情報が得られつつある今こそ、腎排泄型薬剤に気付き、その重要性を認識し、検査値の確認や疑義照会などの行動につなげることで、薬局薬剤師としての責任を果たすべきとの考えを示した。
― 「知識と実践」のギャップ、システムで解消へ
熊本大大学院の近藤氏は、薬局における腎機能を考慮した薬物療法の提供では、必要性を理解していても実践できない「知識と実践のギャップ」があると指摘した。薬局薬剤師への教育で知識は向上した一方、処方提案の増加には結び付かなかったという。こうした背景には、検査値を入手しにくい構造的な問題や、処方鑑査・疑義照会に十分な時間を確保できない勤務実態、知識や経験だけに頼る限界があると分析した。
近藤氏は、南日本薬剤センターと共同で開発した、腎排泄型薬剤の注意喚起や、腎機能を入力することで適切な投与量を表示する鑑査支援システムを紹介。薬局での検証において、腎機能確認や疑義照会が促進され、処方鑑査時間も短縮したとして、仕組みづくりが重要だと提言した。
|2026年7月13日・PHARMACY NEWSBREAK|
厚労省、29成分の添文改訂を指示――PPI10成分、低マグネシウム血症を追記
厚生労働省医薬局医薬安全対策課は14日付の課長通知で、PPIなど29成分について、添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう製造販売業者に指示した。
このうちPPI(配合剤含む)10成分(▽オメプラゾール▽ラベプラゾールナトリウム▽ランソプラゾール▽エソメプラゾールマグネシウム水和物▽ボノプラザンフマル酸塩―など)は「重大な副作用」の項目に、低マグネシウム血症を加える。PPIと低マグネシウム血症との因果関係が否定できない症例が集積したことを踏まえた。
PPIの要指導医薬品3成分も同様に「相談すること」の項目に「低マグネシウム血症」を追記する。
また免疫チェックポイント(CP)阻害剤9成分(▽ニボルマブ▽セミプリマブ▽チスレリズマブ▽アベルマブ▽アテゾリズマブ▽デュルバルマブ▽レチファンリマブ▽イピリムマブ▽トレメリムマブ)は、重大な副作用に「血管炎」を加える。血管炎とCP阻害剤との因果関係が否定できない症例が集積したことから判断した。
ニボルマブは血管炎のほか、重大な副作用に「血栓性微小血管症」も追記する。因果関係が否定できない症例が集積されたことを受けて対応した。
|2026年7月14日・日刊薬業|
27日に第二部会、新有効成分3品目審議――国内初の気管支拡張症治療薬も
厚生労働省は27日に薬事審議会医薬品第二部会を開催する。新有効成分含有医薬品として、▽インスメッドの気管支拡張症治療薬「ブリヌスプリ錠25mg」(一般名=ブレンソカチブ水和物)▽グラクソ・スミスクラインのB型肝炎治療薬「ヒブサーゴ皮下注150mgシリンジ」(ベピロビルセンナトリウム)▽バイエル薬品の抗がん剤「ヒアニュオ錠10mg」(セバベルチニブ水和物)―の3品目が登場する。いずれも製造販売承認の可否を審議する予定。
ブリヌスプリは経口型のジペプチジルペプチダーゼ1(DPP1)阻害剤だ。対象疾患は「非嚢胞性線維症性気管支拡張症」。承認されれば気管支拡張症の効能・効果を持つ国内初の治療薬になる。インスメッドは同剤の大型化を期待している。
ヒブサーゴの対象疾患は「B型肝炎ウイルス持続感染における機能的治癒」。既存のB型肝炎治療薬には核酸アナログ製剤があるが、ヒブサーゴはアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤だ。同剤には▽HBs抗原の減少▽B型肝炎ウイルスのゲノム複製阻害▽免疫賦活化―という3つの作用がある。日本では先駆的医薬品に指定されている。
ヒアニュオはHER2のチロシンキナーゼ阻害剤。対象疾患は「HER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」。同剤は希少疾病用医薬品に指定されている。
― ゲムシタビン膀胱内投与も
そのほかにも審議品目が7件ある。ヤンセンファーマの膀胱がん治療薬「イネレクスゾ膀胱内システム225mg」(ゲムシタビン塩酸塩)は新投与経路医薬品。従来のゲムシタビンは点滴静注液や注射用だが、イネレクスゾはカテーテルを使用した膀胱内投与だ。
ブリストル マイヤーズ スクイブの白血病治療薬「オヌレグ錠150mg」「同200mg」(アザシチジン)も新投与経路医薬品。注射剤には既に日本新薬の「ビダーザ注射用100mg」(アザシチジン)があるが、オヌレグは経口薬。「急性骨髄性白血病における維持療法」が対象疾患だ。希少疾病用医薬品の指定を受けている。
アッヴィのヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤「リンヴォック錠7.5mg」「同15mg」(ウパダシチニブ水和物)は、「既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎」の効能追加を審議する。またリンヴォックの「内用液0.1%(1mg/mL)」の剤形追加も諮る。
アストラゼネカの気管支喘息治療薬「ビレーズトリ14.4エアロスフィア56吸入」「同120吸入」(ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物)は、既存品の有効成分の含有量を変更した新医療用配合剤。対象疾患は「気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤および長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」。
オーファンパシフィックの遺伝性血管性浮腫(HAE)急性発作抑制薬「オラデオ」(ベロトラルスタット塩酸塩)は、既存品にカプセル剤があるが、第二部会では顆粒分包の剤形追加を審議する。12歳未満の小児にも投与できるよう、「新用量」医薬品としても諮る。希少疾病用医薬品の指定を受けている。
ファイザーの血友病治療薬「ヒムペブジ皮下注150mgペン」(マルスタシマブ〈遺伝子組換え〉)は、既に血友病の適応を持つが、「インヒビター非保有」の患者が対象だった。第二部会では「インヒビター保有」患者への適応拡大を諮る。体重も、現在は「35キロ以上」が投与対象だが、「25キロ以上」の患者に下限の拡大を審議する。
― ジーラスタBSの2番手も
報告品目は7品目。グローバルレギュラトリーパートナーズの「ペグフィルグラスチムBS皮下注3.6mg『GRP』」は、協和キリンの持続型G-CSF製剤「ジーラスタ」のバイオシミラー(BS)。上市されれば持田製薬に続く、2番目の参入となる見込み。
|2026年7月13日・日刊薬業|
【26年度改定】在薬総2の届け出が激減、新基準の壁厚く――近畿など17府県で、基本料は1・3のハが他区分にシフト
2026年度調剤報酬改定が適用された6月以降、東海・北陸・近畿・四国の各地域で、在宅薬学総合体制加算2(個人在宅=100点、施設在宅=50点)の施設基準の届け出が激減していることが、じほうの改定影響調査で分かった。調剤基本料は、薬局規模別で比較的点数の高い基本料1(47点)や3のハ(37点)から、それ以外の区分にシフトしている傾向がうかがえた。地域支援・医薬品供給対応体制加算(地支体加算)は、加算2のみ届け出件数が減少していた。
各薬局が届け出た施設基準は、地方厚生局が毎月公表している。じほうは、改定直前の5月1日現在の届け出状況と、7月10日までに改定後のデータを公表した東海北陸、近畿、四国の各厚生局・支局が管轄する17府県の届け出状況を(7月1日現在)を比較。改定の影響を確かめた。未発表の都道府県分を分析に加えた場合、各種届け出の割合は変化する可能性がある。
最も影響が顕著だったのは、在薬総加算2の届け出件数。改定前は全体の9.7%が届け出ていたが、改定後は2.8%まで落ち込んだ。届け出を店舗数ベースで見ると、約7割減。数字上は、ほぼ3店舗に1店舗しか届け出を継続できなかったことになる。
在薬総加算2の施設基準には、直近1年間の個人在宅の実績要件や常勤薬剤師3人以上体制などが新たに追加され、届け出のハードルが上がったことが落ち込んだ要因とみられる。一方、同加算1の届け出は、改定前の43.4%から1.3ポイント減の42.1%と、大きく変わらなかった。
― 基本料1、1.4ポイント減の64.0%
基本料の届け出割合にも影響が見られた。減少が認められたのは、基本料1(1.4ポイント減の64.0%)と基本料3のハ(1.8ポイント減の18.3%)。一方、基本料2(30点)は0.7ポイント増の3.2%、基本料3のイ(25点)は1.3ポイント増の5.8%、基本料3のロ(20点)は1.2ポイント増の7.3%と、基本料1・基本料3のハからシフトしている傾向が浮かび上がった。
基本料2の対象範囲の拡大や、同一建物・敷地内の医療機関を一つと見なしたり、施設在宅の処方箋を除外したりした集中率の計算方法の見直しなどが影響したとみられる。
敷地内薬局を対象とした特別調剤基本料Aの届け出割合に変化はなかった。今回の改定では、へき地にある敷地内薬局については特Aではなく、特例的に基本料1を算定できるようになったが、顕著な増減は見られなかった。
― 地支体加算、加算2のみ届け出減少
旧後発医薬品調剤体制加算に旧地域支援体制加算1~4を上乗せした形で新設された地支体加算2~5は、加算区分によって影響度合いが分かれた。基本料1が対象の加算3(旧地域支援体制加算2)と、チェーンを中心とした基本料1以外の加算4(同3)と加算5(同4)では、ほぼ横ばいの結果だった。一方、施設基準のハードルが比較的低い基本料1の加算2(同1)は4.1ポイント減の13.2%に落ち込んだ。
地支体加算のうち、旧後発品加算部分の加算1の届け出は48.1%だった。改定後、加算2のみが落ち込んだのは、後発品割合85%以上に加え、流通改善に関連した「原則全品目で単品単価交渉」など旧後発品加算部分の新要件を中小規模の薬局などがクリアできなかった可能性がある。地支体加算1~5は全薬局の91%が届け出ていた。
|2026年7月13日・PHARMACY NEWSBREAK|
レケンビ皮下注、初期療法でFDA承認――エーザイ/米バイオジェン
エーザイと米バイオジェンは14日、抗Aβ抗体「レケンビ」(一般名=レカネマブ)の皮下注射製剤「LEQEMBI IQLIK(レケンビ・アイクリック)」について、米FDA(食品医薬品局)が早期アルツハイマー病(AD)の初期療法として生物製剤承認一部変更申請を承認したと発表した。これにより、同剤は初期療法から維持療法まで一貫して在宅で投与できる世界初の抗アミロイド療法となる。初期療法として8月下旬に発売予定。
今回承認された皮下注製剤はオートインジェクターを使用し、250mgの注射2本(計500mg)を週1回投与する。投与はそれぞれ約15秒で完了する。18カ月間の初期療法終了後は、360mgを週1回投与する維持療法としても使用可能。静脈内投与から皮下投与への移行や、その逆の切り替えにも対応しており、通院負担の軽減や投与の利便性向上が期待される。皮下注製剤は日本でも申請中。
|2026年7月14日・日刊薬業|