【山本雄一郎のWebエッセイ】本の管理に妙案はないものか?

大掃除の難問はシュレッダーの先にある
年末の行事といえば? そう、大掃除だ(笑)。埃を払い、雑巾がけをし、溜まりに溜まった書類をシュレッダーにかけていく。薬剤師会や学会から送られてくる会誌、学術講演会の抄録集などは逡巡することなく紐で縛り、資源ごみの回収所へ。じぶんの名前がそこにあるかないかは関係ない。それらを再び手にすることなど、まったくと言っていいほどないからだ。
ここまでの作業を終えても、僕の部屋がきれいになった感じがしないのはいつものこと。ここから毎年恒例の難問に挑むことになる。
循環が止まった本棚が格納庫と化す
とにかく、本をなんとかしないといけない。会社と自宅にある計4つの本棚に収まりきらず増殖しつづけるそれらは、優に3,000冊を超え、デスクの上はもちろん、あらゆる収納スペースを侵食している。時折、同じものがいくつもみつかることがあって、そのたびにじぶんの頭の悪さにほとほと嫌になる。
まずはデスク上の大量の本を動かし、デスク本来の機能を回復させる。まあ、これも1カ月と持たずに元に戻ってしまうのだが、それは仕方がない。いや、ある意味では必要なことだといってもいい。手の届く範囲にある本こそが、必要な資料たりえるからだ。
それよりも問題は本棚のほうだ。本棚は本読みにとって必要な什器には違いないが、同時に、そこには2つの欲求を刺激する誘惑がある。ひとつは本棚に(本を)並べたい欲求、もうひとつは本棚を(本で)埋めたい欲求だ。
前者は誰もが思い当たるのではないだろうか。シリーズものを並べていけば必ずといっていいほどコンプリートしたくなる。これは人間の性で、抗うには強い意志が必要となる。後者も本棚を持っている方なら経験があるはずで、たくさん本を読めるようになりたいなら、それだけ大きな本棚を設置すればいい。みるみるうちに本棚は隙間なく埋まっていくに違いない。積み重なり、あるいは手前と奥の二重収納になって背表紙すら見えなくなっていく。やがて本棚の基本的な機能すら失われていき、ただの格納庫と化していく。そう、いまの僕の本棚がまさにその状態で、新年に向けてなんとかしないといけないわけだ。
といっても、本棚の機能を回復するためには、本棚に余裕を持たせるだけでいいわけで、そしてそれは、乱雑に積まれたデスク上の本とも密接な関係があったりするのだ。
問題なのは、机のまわりに積み上げられた本と、格納庫たる本棚との循環がうまくいかないことだ。目の前の仕事が終わって、用済みになった本はもとの本棚に収めれば、またあらたに必要な本を、身のまわりに待機させることができる。ところが、そのときには収めるべき本棚はすでに満杯で、本棚の前にも床から積み上げられた本の壁ができている。用は済んでも、帰るべきところがないのである。こうなると、本棚はあってもなくても同じで、ただ手元に引き寄せた数百冊の本だけが、真に有効利用できる資料ということになってくる
——岡崎武志:蔵書の苦しみ.光文社新書、p59、2013
先ほどデスク上にあった大量の本は、未読のもの、これから資料として用いるもの、そしてその役目を終えたものが混在となっていた。いや、役目を終えたものがその多くを占めていた。それは帰るべきところがなかったからで、これでは本棚はあってもなくても同じなわけだ。
本棚に余裕さえあれば、帰るべきところさえあれば、僕はもっと満足いくものが生産できていたかもしれない。
捨てて、並べて、また読みたくなる
ということで、本棚の余裕を確保するために本の処分を行うことになる。これが毎年恒例の難問なのだ。まず、既読の本で書き込みやラインをたくさん引いているものは、なるべく処分しない。だって、読んで時間を費やした本でないと何が書いてあるかがわからないわけだし、必要箇所を探すときには手がかりがあったほうがいいに決まっている。
それよりも処分すべきは読んだが格闘の跡がない本(僕の場合、その多くは小説)、そして買ったはいいが読まなかった本だ。積んでおけば時が来るかもしれないが、背に腹は代えられない。というわけで、資源ごみの回収所で300冊ほどを、ブックオフに221冊(¥3,555-)を持ち込み処分した。
本棚に余裕が出れば、以前より考えていた並べ方を試してみたくなる。もちろん、お気に入りの作家には特別枠を用意したうえでの話だ。かくして大掃除は、毎年恒例の難問を経て、いつの間にか本読みの楽しみの時間になっていた。
1998年熊本大学薬学部卒。製薬会社でMRとして勤務した後、株式会社ファルマウニオン(本社:福岡市城南区)の前身である有限会社アップル薬局に入社。2014年1月から日経ドラッグインフォメーションOnlineコラム「薬局にソクラテスがやってきた」を連載(全100回)。2017年3月『薬局で使える実践薬学』(日経BP社)、2022年10月『誰も教えてくれなかった実践薬学管理』(じほう)、2024年3月『ソクラテスが贈る若手薬剤師研修テキスト~薬局薬剤師として輝くために~』(kindle)、2024年9月『誰も教えてくれなかった実践薬歴 改訂版』(じほう)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授、同年8月より有限会社アップル薬局の代表取締役に就任。2024年1月より合同会社ファーマエディタ代表社員。有限会社アップル薬局の吸収合併に伴い、2025年1月より株式会社ファルマウニオンの代表取締役に就任。
