2026.05.08

【山本雄一郎のWebエッセイ】薬局薬剤師のためのプロブレム考

 プロブレムについて考えている。保険薬局に勤務する薬剤師が書いた症例報告を、大量かつ集中的に読む機会があったからだ。

 その症例報告の基本方針は、まずProblem Orientedであること、次に標準的な薬学的管理を行っていること、そして最後に指導や提案の根拠、outcomeが示せること、この3つだ。ということは、どんな症例が望ましいかというと、患者が明らかなプロブレムを抱えていて、薬剤師が薬学的に関わり、その介入がガイドラインなどに準じた標準的なもので、かつ根拠のある明確なoutcomeを示せるもの、ということになる。

 報告用紙には、「Problem Orientedであること」を受けて、管理するプロブレムを記入する欄があるのだが、これがちゃんと書けていないものがじつに多い。薬学的管理の要約、つまり報告内容のメインに当たる部分では、薬剤師として素晴らしい薬学的管理を行っているにもかかわらず、そのプロブレムネームときたら……。

そのプロブレムは広すぎる

 例えば、「高血圧」というプロブレムネーム。これが医師のカルテに、もしくは病院で多職種が共有するmedical recordsに記載されているプロブレムであれば話はわかる。ただ、保険薬局において薬剤師が取り上げるプロブレムとしては、不適切と言わざるを得ない。

 なぜ「高血圧」は、薬剤師が取り上げるプロブレムとして不適切なのか。確かに高血圧は、薬剤師が関与すべきテーマではある。ではあるのだが、薬剤師が責任をとれる範囲のものではないのだ。簡単に言えば、僕たちは患者の高血圧をコントロールするために、医師の処方に基づいた投薬はできても、自ら処方することはできない。つまり、プロブレムとして広すぎるがゆえに不適切というわけだ。

 適切な広さで設定されたプロブレムは、「継続的な薬学的管理」のカギとなる。そしてそれは、その場限りの刹那的な服薬指導を退ける。適切で、明確なプロブレムがあり、そしてそれがフェイスシートに記載されていれば、それを目にした薬剤師が参考にしないはずがない。つまり、“点”であった服薬指導が、“線”になるわけだ。

プロブレムを適切な大きさに切り出す

 では、プロブレムをどう考えるか、POSのサイクルに沿って整理してみる。まずPOSそのものについて。はじめに、プロブレムに対するケアプランを立てる(Plan)。次に、プロブレムごとにSOAP形式の経過記録、つまり薬歴を残す(Do)。そして、その記録をもとに症例検討会などを行い、薬物療法の効果や安全性などに対するケアプランや、プロブレムそのものの検証をしていく(See)。このビジネスでいうPlan-Do-Seeのサイクルを回しながら、患者にとってベストなもの(best patient care)を求めていく。これがPOS(Problem Oriented System)だ。

 この前提を踏まえ、まずプロブレムをクラスタリングによって抽出する。この段階では、プロブレムの輪郭はまだぼやけていることが多く、ひょっとすると、その広さも適切ではないかもしれない。そこで、プロブレムを考える一つ目のポイントが、SOAP形式の薬歴を書くときにはプロブレムネームを最後につける、もしくは最後に見直すようにすること。これだけで、ぼやけていたプロブレムの輪郭がはっきりしてくることがある。そして二つ目のポイントが、症例検討によるプロブレムそのものの検証で、患者の経過によってはプロブレム自体が変化することも少なくない。

 僕らは、患者にとってベストなものを求めていきたいと考えている。でも、「ベストを求める」と一口にいっても、たいへんそうだし、どうアプローチすればよいのだろうか。その手法がPOS、Problem Orientedに考えること。ケアすべきところをプロブレムとして抽出し、一つひとつ順番に取り組んでいくことだ。プロブレムとしてテーマを小分けに設定しなければ、成果というものはなかなか見えてこない。そして、そうして小分けにしたテーマは、患者本人が取り組むべき長期的なテーマへと接続しているものなのだ。

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山本 雄一郎(やまもと ゆういちろう)

1998年熊本大学薬学部卒。製薬会社でMRとして勤務した後、株式会社ファルマウニオン(本社:福岡市城南区)の前身である有限会社アップル薬局に入社。2014年1月から日経ドラッグインフォメーションOnlineコラム「薬局にソクラテスがやってきた」を連載(全100回)。2017年3月『薬局で使える実践薬学』(日経BP社)、2022年10月誰も教えてくれなかった実践薬学管理』(じほう)、2024年3月『ソクラテスが贈る若手薬剤師研修テキスト~薬局薬剤師として輝くために~』(kindle)、2024年9月『誰も教えてくれなかった実践薬歴 改訂版(じほう)を発刊。2017年4月より熊本大学薬学部臨床教授、同年8月より有限会社アップル薬局の代表取締役に就任。2024年1月より合同会社ファーマエディタ代表社員。有限会社アップル薬局の吸収合併に伴い、2025年1月より株式会社ファルマウニオンの代表取締役に就任。

@kumamotoPh usan_appleph

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