臨床検査専門医が教える

異常値の読み方が身につく本 新装版

¥4,180

●専門医だから教えられる検査値の読み方、異常値・パニック値の判断のコツ
●ケーススタディだから、たくさんの検査値を関連づけて読み解くスキルが身につく
●疾患の鑑別、薬の効果判定、患者アセスメントの質が上がる

 
「ASTが高い」「BUNが高い」など、単一の検査値だけを見て判断していませんか? 本書は臨床検査専門医ならではの視点から、複数の検査値を関連づけて病態を読み解く考え方を、豊富なケーススタディを通して解説。異常値の背後にあるメカニズムを理解し、鑑別診断や追加すべき検査、治療につなげる思考プロセスが自然と身につきます。
大好評だった初版をアップデートした本書では、最新の知見を反映し、内容をさらにブラッシュアップ。医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師など、検査値を日常診療で活用するすべての医療者に役立つ1冊です。
編著
村上 純子/著
発行日
2026年9月
判型
A5判
ページ数
280頁
商品コード
57263
ISBN
9784840757263
カテゴリ
目次

Introduction 検査に関する基本的な知識

Lesson 1 尿・血算・生化学検査の基本を理解する

Lesson 2 血算のパニック値とそのメカニズムとは

Lesson 3 肝機能を正しく評価するためのアプローチ

Lesson 4 メカニズムから考える凝固・線溶系

Lesson 5 “腎臓からの手紙”尿検査に強くなる

Lesson 6 一歩踏み込んで考える血糖とHbA1c

補  講 これだけは知っておきたい血ガスの読み方

Lesson 7 白血球・CRPの陥りがちなピットフォール

Lesson 8 カンファレンス実況中継① 若年女性の異常値をどう捉えるか

Lesson 9 短時間で検査値が急変化…そのとき何を考える?

Lesson 10 小児の検査値の読み方はじめの一歩

Lesson 11 高齢者の高蛋白血症ときたら外せない鑑別は?

Lesson 12 何気ない貧血を見過ごすと痛い目に!

Lesson 13 カンファレンス実況中継② 再び,若年女性の異常値をどう捉えるか

Lesson 14 腫瘍マーカーの陥りがちなピットフォール

Lesson 15 普段スルーされがちな検査から病態を絞り込もう

序文

そして今,本書が目指すもの(2026年)

 地域の基幹病院として急性期医療の最前線に立つ病院の検査科医師の立場で,私は8年ぶりに,「異常値の読み方が身につく本」の新装版に携わる機会を得ました。

 8年前,私は初版の序文に次のように記しました。

 

==============================================================

本書が目指すもの(2018年)

 

 検査は誰が何のために行うのでしょうか?

 従来から,検査は,医師が医療の現場で,患者さんの疾患や病態を「診断するために」あるいは「治療を行うために」あるいは「経過観察のために」実施するものでした。検査データは診療録(カルテ)に綴じ込まれ,医師の手許にありました。

 私は,1996年に“臨床検査専門医”という認定資格を取り,約20年間,検査の業界にいるのですが,特にここ数年,医学生や研修医だけでなく,看護師,薬剤師,臨床検査技師,臨床工学技士,栄養士など,多職種のメディカルスタッフから,「検査データが読めるようになりたい」という要望の声を聞くことがすごく多くなったように感じています。なぜでしょうか?

 その理由の一つは,チーム医療の必要性・重要性が,医療現場だけでなく,社会全体に理解されてきたことでしょう。チーム医療とは「医療に従事する多種多様な医療スタッフが,各々の高い専門性を前提に,目的と情報を共有し,業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い,患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義されています。メディカルスタッフが医師とともに医療に深く関わる場面は今後ますます増加するものと思われます。

 もう一つの大きな理由は,電子カルテの普及でしょう。電子カルテシステムへのアクセス権さえあれば,いつでも,どこからでも,患者さんの検査データを見ることができますので,熱心なメディカルスタッフがそのデータを業務に活かすために「解釈する能力を習得し,医師とディスカッションできるようになりたい」と考えるのはもっともなことです。

 では,どのようなトレーニングを積めば,検査データを的確に解釈する力がつくのでしょう。

(中略)

 そこで,「the検査力 in 現場」を涵養するために,これまで主に医学生や研修医を対象とする検査医学教育において実施されてきたReversedClinicopathological Conference(RCPC)の技法を用いてみてはどうかという企画が持ち上がりました。

 臨床の現場では,まず患者さんからよく話を聞き(医療面接),身体所見を十分に把握し(身体診察),それから検査計画を立てますが,RCPCでは,ほぼ検査の結果のみから患者さんの病態解析を試みます。ちなみに“reverse”とは,裏返すとかひっくり返すという意味です。

 これまでRCPCを経験したことがない読者は,普段「大切にしなさい」と言われている医療面接や身体診察の情報なしに,検査の数値だけであれこれ考えるのは邪道のような気がするかもしれません。しかし,RCPCは,合理的な検査成績の読み方(=臨床推論能力)を習得することを目的とした,確立した学習法です。同時に,検査成績から病態解析ができる範囲や限界を自覚することも学習目標の一つです。

==============================================================

 

 この8年間に新規検査項目は加速度的に増加しました。その多くは遺伝子検査のように特異度・感度が高く,「はい,これで決まりね!」というような疾患・病態の本質に迫る“決め手”検査です。そして,だからこそ,いつもの普通の検査(ルーチン検査)を徹底的に読み尽くす重要性を痛感する“今”なのです。ルーチン検査というのは,医療現場において患者さんの状態を把握するため,診療科によらず必ず実施されるべき基本的な検査であり,本書で取り上げた全15症例のデータ解析の入口はすべてルーチン検査です。

 ルーチン検査のちょっとした異常,わずかな動きが私たちに伝えようとしているのは何なのか? それをきちんと捉え,合理的な検査成績の読み方(=臨床推論能力)を習得しましょう。この点において,本書が目指すものは8年経った今でも変わりありません。

 “決め手”検査は,ルーチン検査(入口)を読み切った先に待っています。検査は雄弁です…聞く耳さえあれば。

 

埼玉協同病院検査科 部長

村上 純子