小西 竜太先生(前 関東労災病院救急総合診療科 部長)
本書を読み終わった後、ある研究者の顔を思い出しました。「私は論文発表する際には、研究に従事したすべてのメンバーの名前を入れています。なぜなら、それが仲間たちと一緒に頑張った証であり、読み返すたびに当時を思い出します」と彼が話したことを。
本書は、臨床研究の初学者が正しい研究計画を立てることを目標とした教科書です。と紹介すると、多くの類書にみられるような、単調で、退屈で、途中で脱落してしまうような本を想像するかもしれません。でもタイトルに「ときめく」と書くような作者ですから、読者を飽きさせない仕掛けを随所に埋め込んでいるのです!
ストーリー仕立て、各章数ページにわたる漫画、多彩なイラストや図、コラムやケーススタディが散りばめられ、読者は一気に最終ページまで到達します。私は漫画を見た瞬間、“安っぽい本”と第一印象をもってしまいましたが、読み進めると内容的な充実度・網羅性だけでなく、巧妙にデザインされた教育プロセスに圧倒されました。公衆衛生大学院で1年かけて学ぶエッセンスが見事に凝縮されているのです。
とはいえ、この種の本を読んでも、実際に行動するまでたどり着かないことはありませんか? ダイエットにせよ、筋トレ本にせよ、なかなか行動に移すのは難しいですよね。本書で特筆するべき点は、QMentor(キュー・メンター)というアプリが連動していて、自分のリサーチ・クエスチョンから構造化された研究計画が作成できるような仕掛けもあるのです!
最前線の医療現場で気づいた疑問や課題を解決する臨床研究は、患者だけではなく皆さんの同僚やスタッフにも新しい価値を与えるはずです。そんな現場全体が“ときめく”ような瞬間を味わいたいですね。そして医師を続けていくなかで、そんな経験が一生の思い出となり、糧となるのでしょう。
狭間 研至先生(ファルメディコ株式会社 代表取締役社長)
私が医師になったとき、先輩から「臨床・教育・研究」にバランスよく取り組めと教えられた。採血一つできずに右往左往している状態で、誰かに何かを教えるという教育はもとより、自分で何かを考え解決していく研究というテーマは、私にとって非常に縁遠いものだった。しかし、毎日の業務での症例報告や論文発表、大学院での研究を通じて、研究マインドを何とか身につけたが、このことが私の人生に大きな影響を与えたことは間違いない。
特に、2008年から薬剤師にはバイタルサインが必要と唱え、薬剤師の業務は薬をお渡しするまでではなく、飲んだ後までをフォローし医師にフィードバックすることが重要という概念にたどりついたのは、医師・薬局経営者としての毎日の生活のなかで感じる疑問を見逃さずに、大学院時代に学んだアカデミックマインドを活用できたおかげである。本書は、大学院で学ぶようなこういった考え方のコツやポイントを、現場経験もあり大学でも教鞭を執られている医師と薬剤師が、いま風に漫画を交えながら、知らず知らずのうちに学べるようにまとめられたものだ。今後、エビデンスの創出も求められるようになる薬剤師にとっては必携の一冊と言えよう。
そして特筆すべきは、そのキーワードに「ときめき」をあげているところである。片付けを「ときめき」と結びつけたかの女史は、いまや米国に拠点を移し、さらに多くの方のライフスタイルのみならず人生にまで大きな影響を与え始めている。「ときめき」とは、それほどの大きなパワーを秘めているし私も実感している。
毎日の業務や薬局薬剤師としてのあり方に限界を感じている方には、ぜひ手にとってご一読いただきたい。その小さなアクションが、あなた自身の心に小さな火をともす。そして、その火が、きっと、将来のあなたを形づくる大きなパワーの源になるはずだ。
奥田 真弘先生(大阪大学医学部附属病院 教授・薬剤部長)
薬剤師は臨床研究を実践することで、臨床で直面した問題を自ら解決する姿勢が求められる。
日常臨床において、薬剤師は無数の漠然とした疑問、すなわちクリニカル・クエスチョンに遭遇している。臨床研究を実践するには、クリニカル・クエスチョンを実現可能なリサーチ・クエスチョンに変換する必要があるが、しばしば必要な要素が抜けていたり、測定が困難であったりして、結論が得られなかったり、そもそも研究自体が実施できなかったりする。デザインなき臨床研究は、地図を持たずに旅に出るようなものなのである。
本書はお二人の著者と監修者である福原俊一先生が、臨床研究をテーマとして『月刊薬事』に連載執筆された記事をもとに書籍化されたものである。漫画とレクチャーを交えたスキット方式で進められ、新人薬剤師が日常臨床を通じて臨床研究リテラシーを高めるストーリー展開が、親しみのもてる内容となっている。
前半ではPECOやFIRM2NESSチェック、データ測定の考え方など臨床研究デザインの基本的要素が解説され、One More LectureやOne More Questionなどが挿入されることで説明が補足されている。
後半は実践的な内容となっており、具体的な研究計画の作成方法が事例に基づいて解説されている。本書は、通し読み、章単位での拾い読み、索引からの拾い読みなど、どの角度から読み始めても理解が進み、これから臨床研究を始めようとする初心者やこれまで臨床研究デザインについて学ぶ機会がなかった医療スタッフなど、幅広い層の読者が学べる内容になっている。
「ときめき」のある人生は充実して楽しい。本書を足がかりに臨床研究を始めた読者が、日常臨床を「ときめき」で満たしていただきたいと切に願うものである。
鈴木 雅雄先生(福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座 准教授)
これからはり師・きゅう師になる方も、すでにはり師・きゅう師の先生も、いま読むべきはこの書籍だと思います。
鍼灸の臨床現場は患者さんの多種多様な訴えを網羅的に扱っているため、さまざまな臨床上の疑問で日々悩んでいる先生も多くいると思います。「治療Aと治療Bはどちらを優先的に行ったほうがよいのか?」、「在宅往診では家族関係をどうしたらよいのか?」など。
これらの疑問は基礎研究では解決できず、唯一の解決方法が臨床研究になります。でも、「臨床研究はどうやったらいいの?」と不安を抱えている先生も多くいると思います。また、昨今では多職種で医療を展開していくチーム医療が主流になっていますが、臨床研究もチームで行う研究です。
本書は薬剤師(研究の素人)のビート君が、医療現場のさまざまな問題を臨床研究を駆使して解決していく成長型医療研究物語です。漫画と文章の組み合わせなので読みやすく、わかりやすいです。
一方、現在医療は目まぐるしく変化をしており、現代医学では解決できない問題が山積しています。はり師・きゅう師の先生方の治療院では、現代医学では解決できない患者さんをたくさん抱えており、日々奮闘していることと思います。鍼灸は、現代医学では解決できない問題を解決してくれる手段の一つだと私は考えていますが、多くの国民には知られていないのが現状です。国民に広く知ってもらうには、臨床研究をコツコツと行い、研究成果を医学論文にして公表する必要があります。臨床研究は先生方が行っている鍼灸臨床を公にする手段でもあります。公にされた結果が多くの国民を救うと信じてやみません。
はり師・きゅう師の先生方もビート君と一緒に臨床研究の旅に出ましょう。私は一足先にビート君と旅に出ています。書籍のなかに登場するふうたろう先生の名言です。
「良き臨床家は良き研究者である」