にっきょくんと学ぶ 「日本薬局方」のこれまで・これから――第2回

こんにちは。僕、にっきょくん。
2026年4月、「第十九改正日本薬局方 」が厚生労働省から告示され、7月には普及版もじほうから刊行された。
このコーナーでは、明治時代に初版がつくられた日本薬局方の、現在まで続く長い歴史を、若手編集部員のMさんとともにたどっていくよ。さあ、第2回の始まりだ。
※前回の記事は こちら

鎖国をやめたことで日本人が西洋の薬をどんどん輸入して使えるようになった反面、当時の日本には医薬品の品質を保証する基準がなかったから、粗悪品や偽物の薬が出回って大変なことになったって…。

そこで、まずは明治4年(1871年)に、当時の軍関係行政機関である兵部省が、「軍医療局方」を発行した。翌明治5年(1872年)になると、兵部省は陸軍省と海軍省に分離されたんだけど、その年のうちに、まず海軍が「海軍軍医療薬局方」を発行したんだ。明治時代の日本海軍は、当時世界最強といわれたイギリス海軍をお手本にしていて、この「海軍軍医療薬局方」もイギリスの薬局方を参考にしながら作成されたんだよ。
そうして、さらに、明治11年(1878年)には「陸軍病院薬局方第二版」も発行された。こちらは、明治4年(1871年)の「軍医療局方」を第1版とみなしたから、「第二版」と称されるんだね。ともあれ、こうして、陸軍・海軍それぞれの薬局方が発行されて、「日本薬局方」の先駆的な役割を果たしたんだ。


まず制度・法律の面では、明治7年(1874年)に、わが国最初の近代的医事衛生法規である「医制」が発布されている。この第62条には「薬舗ニハ精緻ノ秤量器及ヒ日本薬局方中ノ薬品純精ナルモノヲ撰テ之ヲ備へ缺亡アラシムヘカラズ」とあって1) 、「日本薬局方」を制定する意図があることが早くも示唆されているんだ。同じ年には、日本初となる医薬品の試験機関として、東京司薬場(しやくじょう)も設立され、外国人教師が多数招聘された。いまの国立衛研こと、国立医薬品食品衛生研究所の前身だよ。京都、大阪、長崎、横浜にも司薬場がつくられたんだ2)。


明治8年(1875年)になると、長与専斎が、当時、京都司薬場で指導していたオランダ人ゲールツに日本薬局方の草稿作成を依頼し、明治10年(1877年)には案が書き上げられたといわれている3、4)。その後、明治13年(1880年)になって日本薬局方の制定が許され、このオランダ文で書かれたゲールツ案とそれを翻訳した邦文が原案として提出されたんだけれど、これはもう古いとなってしまったんだ。さらに、当時はドイツ医学が採用されていたから、ドイツの薬局方を参照すべきという意見も出たんだ。そこで、もう一度、今度はドイツ文によって原案を作ることに決まった。そうして約5年もかけて、ドイツ文の原案がつくられ、さらにそれを邦訳して、明治19年(1886年)6月25日に「日本薬局方」の初版が公布され、翌明治20年(1887年)7月1日に施行された。ちなみに、ゲールツはこのドイツ文での原案作成にも関わったんだけれど5)、公布前の明治16年(1883年)、腸チフスのために40歳の若さで急逝してしまったんだよ6)。
こうして完成した「日本薬局方」は、近代的な国定薬局方としては、世界で21番目のものといわれている。ここまではゲールツら多数の外国人の協力を得ながら作成してきたけれど、第二改正からは、日本人のみによる改正作業が行われるようになるよ。それはまた次回お話ししよう!
1)医制.1874年8月18日、国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/pid/11444432/1/29)
2)本間正充、他:国立医薬品食品衛生研究所150年の物語とこれから.60(10):915-920、2024
3)伹野恭一、他:日本薬局方(JP)130周年記念シンポジウムとJP18に向けた今後の課題.薬史学雑誌、52(2):160-168、2017
4)江本龍雄、他:薬局方の一世紀.ファルマシア、22(11):1225-1230、1986
5)第十九改正日本薬局方.pp9-38(日本薬局方沿革略記)、厚生労働省告示第193号、2026年4月10日
6)川城 巌、他 編:国立衛生試験所百年史.国立衛生試験所創立百周年記念事業東衛会実行委員会、1975

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日本薬局方は学問・技術の進歩と医療需要に応じ、わが国の医薬品の品質を適正に確保するために必要な規格・基準および標準的試験法等を示す公的規範書です。
今回の第十九改正は5年ぶりの全面改正で、近年の科学技術の進展および医薬品流通等のグローバル化に伴う国際調和に対応するため、全面的な見直しが行われるとともに、多数の医薬品各条等が新規収載されました。
本書は資料編として、本改正に関連する告示・通知のほか、改正事項の趣旨やポイントがわかる事務連絡、技術情報等の資料を網羅し、生薬試験に関する資料や検索に有用なオリジナル索引を収載しています。

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