2026.08.31

【レポート】薬学部生の学力低迷にどう向き合うか――『薬単』の開発と今後の展望

 第11回日本薬学教育学会大会が2026年8月22日・23日に大阪医科薬科大学薬学部で開催されました。
 23日のランチョンセミナーでは「薬学部における学力低迷者を対象とした学習教材のプロセスと今後の展望」と題し、『薬単』の著者である木元貴祥先生が講演されました。ここでは、その内容の一部をご紹介します。

 

『薬単』開発の背景

 この10~20年で入学時の学生の学力低下がみられ、入学者の確保も課題となっている現状がある。薬学部を留年なく進級・卒業し、薬剤師国家試験(以下、国試)に現役で合格することは容易ではなくなっており、直近の2019年度入学者の2025年度国試合格率は58.8%である。
 こうした背景のなかで学生が抱えるさまざまな課題のうちのひとつとして、「医薬品の暗記をどうするか?」ということがあった。
 大学受験で使った英単語帳のように、毎日の移動時間や就寝前などの短時間で使える、暗記に特化した教材は少なかった。そこで、医薬品を五十音順ではなく薬効別に掲載し、単語帳のように医薬品を覚えられる教材として開発されたのが『薬単』である。
*厚生労働省:薬学部における修学状況等 2025年(令和7年)度調査結果


4年次から6年次まで、同じ教材を使い続ける

 国試対策の勉強を 6年次の4月に始め、1年間でそのすべてを習得していくことは多くの学生には困難と思われる。
 想起機会を増やし長期記憶の定着を促進するためには、4年次のCBT対策から使い始め、5年次の実務実習に携行し現場でメモを書き溜め、6年次の国試対策に使用する、といった複数年にわたる継続使用を著者は推奨している。
 講演では、『薬単』ユーザーを対象としたアンケート結果も紹介された。
 「主な使用目的」は、国試対策が76.4%、次いで実務実習が30.7%、CBT対策が17.1%と続いた。



 総合評価では、87.4%が継続使用の意向を示した。
 また、「総合満足度」(「非常に満足」+「満足」)は92%、他人への推奨度を示すNPS(Net Promoter Score)は+36であった。



暗記に特化しつつ、理解につなげる工夫

 『薬単』は医薬品を薬効別に整理し、それぞれの薬剤について「どのような薬であるか」を平易な言葉で記述することを基本方針としている。国試の水準を担保するために、実際の国試で使用されている文章をできるだけ取り入れつつ、なるべく専門用語の多用を避けることで幅広い学力層に対応できるようにした。
 また、実務実習中の知識の維持・定着を支援し、実務実習にも活用できるよう、本文には主な商品名、規制区分、剤形を掲載し、巻末には商品名索引を設けている。国試では商品名が出題されることはほぼない一方、実務実習では商品名を目にする機会が多いためである。
 さらに、収載868品目の医薬品名と作用機序のみを36ページにまとめた「薬単mini」を別冊として付録化した。赤シートをあてると医薬品名の頭文字だけが見えるようにし、その1文字を手がかりに医薬品名を想起する「トリガーシート学習」を取り入れた。
 『薬単』ユーザーに対するアンケート結果では、薬効別の構成、書籍サイズの携帯性、出題が見込まれる新傾向マーク、赤シート対応、用語解説といった他書との差別化要素が高く評価されている。




『薬単』は理解を伴う暗記に役立ったか?

 受容体や酵素などの基礎概念が理解できない場合、暗記そのものが成立しにくい点に着目し、『薬単』では巻末に用語解説を収載しており、表層的な丸暗記に留まらないように理解と暗記を往復できる構成としている。
 『薬単』ユーザーに対するアンケート結果では、医薬品名の暗記に手応えを感じた(強く感じた+感じた)が87.4%、丸暗記ではなく“理解を伴う”暗記になったと感じた(強く感じた+感じた)が76.9%であった。使用後、一定の手応えを感じているユーザーが多数いた。


まとめと展望

 学力低迷者が増えてきている現状にあわせ、医薬品の暗記に特化、薬効別の整理と平易な記述、国試水準の担保によって、幅広い学力層の学生が利用できる教材として『薬単』が開発された。長期記憶の定着のために、複数年の継続利用が推奨されている。
 これまでの学生の声に加え、著者が臨床現場との接点を一層強化できる体制となったため、現場薬剤師の知見も教材開発へ反映し、実効性の高い学習支援の在り方を今後も模索していく。


薬単

薬学生のための薬単
試験にでる医薬品暗記帳

定価3,300円(本体3,000円+税10%)

“丸暗記”で終わらせない,理解を伴う暗記をサポート!

本書は、薬剤師国家試験によく出題される医薬品に絞り、適応・作用機序・主な副作用・ポイントをコンパクトにまとめた単語帳形式の医薬品暗記帳です。国家試験出題基準に基づき、薬効別に868品目を厳選して収載しています。覚えるべき語句を赤字で表示しているため効率よく学習でき、付属の赤シートですぐに暗記を始められます。さらに、出題実績を反映した「重要度」マーク、出題傾向をリサーチした「新傾向」マークを付し、国試出題基準に沿って「適応」「作用機序」などを整理することで、理解を伴った暗記ができるよう編集しています。また、本書から取り外して使えるBook in Bookの付録として、医薬品名の暗記を一気に進められる「薬単mini 高速暗記BOOK」を用意しました。

木元 貴祥(きもと たかよし)

株式会社PASSMED代表取締役。
全国の大学や専門学校で講義を行う傍ら、新薬情報オンライン薬学生プレミアなどのWEBサービスも展開している。
主な著書には『イラストでつながる薬のはたらき』(KADOKAWA)、『薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳』(メディカ出版)、『新薬情報オフライン』(金芳堂)、『知らないと絶対損する! 薬剤師のためのお金(マネー)の強化書』『薬問 薬剤師国家試験のための薬理 一問一答問題集』(以上、じほう)がある。

@passmed_kimoto

シェア