薬剤師・医療ニュース from Jiho[2025年5月上旬]

財務省、次期改定に向けて調剤基本料1の適用範囲「縮小すべき」
財務省は、社会保障制度を議題にした財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=十倉雅和・経団連 会長)で、2026年度調剤報酬改定に向けて調剤基本料1の適用範囲を縮小すべきだと提案した(写真)。これまでの改定でも処方箋の受け付け回数や集中率などに応じた見直しが進んできたが、「さらなる適正化の余地がある」と指摘している。
この日の分科会に示した資料では、調剤基本料について「薬局の運営維持に要するコストを、処方箋の集中率と受け付け回数の側面を含めた効率性の観点から、経営の実態を踏まえて評価したもの」と説明。集中率が高い薬局では在庫している医薬品の品目数が少なくなる傾向があるため、「集中率の低い薬局に比べて低コスト」と改めて解説している。
一方で、処方箋の受け付け回数が1,800回を下回る薬局を中心に、処方箋集中率が高くても調剤基本料1が算定されていると指摘。改革の方向性として、「経営の実態を踏まえながら、 処方箋集中率が高い薬局等における調剤基本料1の適用範囲を縮小すべき」と要求した。
ー 「真の対人業務」の重点評価を
調剤報酬全体の在り方を巡っては、「対人業務を重点的に評価する報酬体系への一層のシフト」を求めた。対人業務の具体例として、重複投薬・多剤投薬の防止や残薬の解消、セルフメディケーション支援などの健康サポート業務、かかりつけ機能(服薬情報の一元的・継続的把握や24時間対応、在宅対応など)の発揮などを挙げた。
財務省はさらに、薬学管理料の中でも「真に『対人業務』を評価する項目」として、かかりつけ薬剤師指導料や服用薬剤調整支援料を取り上げ、評価の「重点化を進めるべき」と提案。いずれの報酬も算定割合が低迷し、薬局現場ではほとんど普及していない実態も併せて示している。
ー 地域支援体制加算も「検証と対応検討を」
このほか同日示した「参考資料」の中では、地域支援体制加算にも言及。2024年度改定での算定要件の見直しを踏まえつつ、「引き続き、地域支援体制加算が、地域医療への貢献を的確に評価できているか検証し、必要な対応を検討する必要がある」としている。
|2025年4月23日・PHARMACY NEWSBREAK|
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財務省、OTC類似薬「新たな選定療養」化を提案
財務省は財政制度等審議会・財政制度分科会で、セルフケア・セルフメディケーションの一環として、OTC類似薬の保険適用の在り方の見直しに触れ、技術料に保険診療と自費を組み合わせるなどの「新たな選定療養」に位置付ける案を示した。降圧剤といった生活習慣病治療薬や検査薬のスイッチ化の推進も盛り込んでいる。
財務省が示したOTC類似薬の保険適用の見直し策は2つ。1つ目は、単純に保険適用から外す方式で「混合診療の原則禁止」の下、薬剤費と技術料なども全額自己負担にする。もう1つは保険外併用療養費制度を活用し、薬剤費は全額自己負担にしつつ、技術料などについては保険外の自費と保険診療の自己負担を組み合わせた方式を提案している。
スイッチOTC化については、OTC薬の適正使用の確保・販売体制の改善や、使用方法などに関する国民の理解促進を含めた環境整備を前提に、▽長期間状態が安定▽対処方法が確定▽自己による服薬管理が可能―の条件がそろう場合は「スイッチ化を着実に進めていくべき」とした。
その上で、具体例として、「すでに医師の処方を受け、症状が長期間安定しているような生活習慣病患者にかかる医薬品(降圧剤など)・検査薬」を挙げている。
終了後に会見した増田寛也分科会長代理(日本郵政 社長)は、OTC類似薬は「秋の(建議の)大きなテーマの1つになる」との認識を示した。この日の会合では各委員から「直接的な意見はなかった」という。
|2025年4月23日・PHARMACY NEWSBREAK|
日本薬剤師会が財務省主張に反論、後発品促進は薬剤師の実績
日本薬剤師会の岩月進会長は会見で、財務省が財政制度等審議会・財政制度分科会で処方箋料や後発医薬品調剤体制加算の見直しを主張したことに対し、医薬分業の進展や後発品の使用促進は薬剤師が取り組んできた「実績」だとして、「そこを評価しないと言われると『勘弁して』と申し上げる」と述べた。
医薬分業などの「(体制が)できたからいらない」という考え方は「一断面の見方」にすぎないとし、今後も体制を維持していく観点も踏まえ、中医協で総合的に議論していくことが重要と強調した。
調剤報酬について財務省は、対人業務へのシフトのため「真に対人業務を評価する項目」に評価を重点化するべきだとも提言している。
これについて岩月氏は、対人業務は対物業務の質的向上のために必要なものであるとして、「対人業務を充実させるために、対物業務を効率化するというのは話が逆」と主張。「(対物業務が)効率化しているから調剤報酬を減らそうという議論とは全く合わない」とし、「一つの断面で、そのような議論をするのは間違い」と断じた。
|2025年4月24日・PHARMACY NEWSBREAK|
厚労省、リオシグアトとアゾール系抗真菌剤の併用禁忌解除へ
厚生労働省の薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は、肺高血圧症治療薬リオシグアト(先発医薬品=アデムパス®)と、いずれもアゾール系抗真菌剤のイトラコナゾール(イトリゾール®)およびボリコナゾール(ブイフェンド®)との併用禁忌の解除を了承した。今後、添付文書を改訂する。
リオシグアトと、イトラコナゾールおよびボリコナゾールについて、現状では「禁忌」「併用禁忌」として互いの薬剤が記載されているが、これらを削除し、代わりに「併用注意」の項で注意喚起する。
一方、リオシグアトとエンシトレルビル フマル酸(ゾコーバ®)およびロナファルニブ(ゾキンヴィ®)との併用禁忌の解除の可否も議題に含まれていたが、同調査会委員の要望により、in vitroの試験データを精査した上で、改めて判断することになった。
ー ドンペリドンの妊婦禁忌解除
消化管運動改善剤ドンペリドン(ナウゼリン®)については、「禁忌」から「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」を削除することを了承した。「妊婦」の項に「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」との記載を追加する。
|2025年4月25日・日刊薬業|
NCGG・溝神氏、厚労科研でポリファーマシー対策の新フォーマット作成
ポリファーマシー対策に必要な情報提供を行うため、主に病院薬剤師が使用する新たなフォーマット「薬物療法情報提供書」が2024年度厚生労働科学研究で作成、公開された。従来の「薬剤管理サマリー」に代わるもので、患者の生活背景も含めて多職種と共有できる。研究代表者の溝神文博氏(国立長寿医療研究センター高齢者薬学教育研修室長)は、薬剤情報のみでは情報提供の「体を成さない」と指摘。薬剤師向けではなく、医師や看護師ら多職種に向けた情報提供を意識するよう促している。
溝神氏は、ポリファーマシーは単に薬剤数の多さではなく「薬物に起因する問題全般」を意味するとし、対策には薬物に関する情報とともに、患者の生活背景や療養環境の情報収集が不可欠だと説明。ただ全国の特定機能病院・地域医療支援病院で情報提供書をホームページで公開している15施設のうち、患者背景にまで踏み込んでいたのは1施設のみだった。そこで、特に高齢者の機能を総合的に評価する「CGA」の考え方を落とし込んだフォーマットの開発を行った。
ー 必要な情報端的に、ガイドでは場面ごとの注意点記載
開発した薬物療法情報提供書はA4判1枚で、作成者の手間、送り相手の読み疲れを考慮し、必要な情報を端的にまとめた。患者背景については▽老年症候群▽認知症診断▽日常生活活動(ADL)▽栄養状態―などの有無や具体的な状態をチェックボックスから選択。また中止した薬や開始した薬の有無を明確にした上で「中止したが再開の検討が必要な薬」「開始したが調整の検討が必要な薬」などについて提案できる仕様にした。
薬物療法情報提供書と共に公開している作成ガイドでは、急性期から回復期、慢性期の場面ごとのポリファーマシー対策のポイントや、移行時の注意点も記載。入院中に服用を開始し、退院後に中止を考慮する必要のある薬剤の例としては、睡眠導入薬(ベンゾジアゼピン系)や、手術後の疼痛に用いられる鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェン)を挙げた。薬剤師が医師や歯科医師、看護師と連携する上でのポイントも列挙した。
溝神氏は、薬剤師が行う情報提供の根本的な課題は「薬剤師に送るもの」との認識で情報提供書を作成していることだと強調。「そもそもの考え方を180度変え、多職種に向けるものとして情報提供書を作成してほしい。それが本当の意味での多職種連携につながる」と述べた。また、統一的なフォーマットの普及によって、現在は紙やファクスに依存している情報提供の電子化も進みやすくなると見通した。
|2025年4月21日・ PHARMACY NEWSBREAK |
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