月刊薬事 2026年4月臨時増刊号(Vol.68 No.6)

Complex case カンファレンス

複雑症例を薬物療法のプロフェッショナルの視点で考える

¥4,620

●カンファレンスの臨場感を体感しながら共に考える力を養う新感覚テキスト!


高齢化で増加している多疾患併存患者において、薬物治療は中心的役割を果たします。一方、薬剤数の増加に伴い、薬物相互作用や有害事象のリスクも飛躍的に高まります。このように、複数のプロブレムが複雑に絡み合った「Complex case」の薬物治療では、疾患ごとの標準治療を越えた総合的判断力が求められています。
そこで本臨時増刊号では、臨床現場での具体例をとおして、こうした「Complex case」への薬物治療のアプローチやリスク回避の考え方を解説し、日常臨床で悩ましい症例への対応に奮闘する薬剤師にとって役立つヒントをお届けします。
編著
木村 丈司、鈴木 大介/編
発行日
2026年4月
判型
B5判
ページ数
200頁
商品コード
91327
カテゴリ
目次

第1章 総論:基本的考え方

1 Complex caseでの薬物治療の考え方

  ──複雑症例を薬物療法のプロフェッショナルの視点で考える

   木村 丈司

2 Complex caseの薬物動態の注意点 ①腎機能障害

   鈴木 大介

3 Complex caseの薬物動態の注意点 ②薬物相互作用

   大野 能之

4 Complex caseでの副作用への対応

   西海 一生

5 Complex caseの急性期薬物治療

   中薗 健一

 Complex caseの退院後を見据えた地域連携

   安田 知弘

7 Complex caseの保険薬局でのフォローアップ

   菅原 鉄矢

8 Complex caseにガイドラインやエビデンスを適用する際の注意点

   門村 将太

9 医師からみたComplex caseの考え方とプロブレムの整理の仕方

  ──多疾患併存・高齢患者の薬物療法をどう組み立てるか

   西村 翔

10 盛り上がるケースカンファのコツ

   北原 加奈之

11 Dr. TT流! ケースレポート作成におけるComplex caseの扱い方

   谷口 智基

 

第2章 各論:実践的アプローチ

1 心不全×CKD(貧血)

  CKDと貧血を合併した心不全患者の

  薬物治療について考えてみよう

   木下 照常,鈴木 雄太

2 AML×発熱

  複数疾患を合併した高齢者における急性骨髄性白血病の

  治療について考えてみよう

   阿部 史誉,浦上 宗治

3 関節リウマチ×急性腎障害

  急性腎障害と汎血球減少を合併した関節リウマチ患者の

  治療について考えてみよう

   角田 隆紀,林 八恵子

4 乳がん×VTE

  がんと循環器疾患併存患者の薬物治療について考えてみよう

   伊勢崎 竜也,木下 照常

5 腎移植×感染(CMV,アスペルギルス)

  腎移植患者における感染症の薬物治療について考えてみよう

   辻本 高志,浦上 宗治

6 乳がん×マルチモビディティ+薬局

  マルチモビディティの乳がん患者の薬物治療と

  薬局でのフォローについて考えてみよう

   橋口 宏司,木村 貴徳

7 食道がん×血管内感染症(真菌)

  複雑な背景を有する食道がん患者の薬物治療について考えてみよう

   藤本 亜弓,中野 祐樹,篠田 康孝

8 透析×心膜炎

  透析患者における心膜炎,心房細動の薬物治療について考えてみよう

   吉田 拓弥,木下 照常

9 悪性リンパ腫×結核

  悪性リンパ腫と肺結核を合併した患者の薬物治療について考えてみよう

   湯山 聡,篠田 康孝

序文

 高齢化や医療の高度化を背景に,われわれは日常で複数のプロブレムが絡みあった複雑な症例,いわゆるComplex caseにしばしば遭遇します。Complex caseでは,一つの疾患に対する標準的な薬物療法がほかの併存疾患の治療薬との相互作用のために使用しにくい場合があります。また,本来第一選択薬である薬剤が臓器障害のために使用しにくい場面も多くあります。複数のプロブレムに優先順位をつけて薬物治療を行う必要もあるかもしれません。さらに,診療科間の考えの違い,医師と薬剤師の考えの違い,患者・家族と医療従事者の考えの違いなど,疾患や薬物療法だけにとどまらないプロブレムに向きあう場面もあるかと思います。そのようなComplex caseの薬物療法について,各領域のプロフェッショナルはどう考えるのか,誰しも一度は聞いてみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。

 本企画では,「がん×感染症」,「循環器疾患×腎疾患」のように,プロブレムが複数領域にまたがるComplex caseを題材に,各領域のスペシャリストが薬物療法をどのように考え組み立てているか,その理路についてケースを通じて学ぶことを目的に,各領域のプロフェッショナルの先生に執筆をお願いしました。

 前半では総論として,腎機能障害や薬物相互作用,副作用など,Complex caseで問題となりやすいテーマや,急性期から薬局までシームレスに対応するための考え方,エビデンスを適用する場合の注意点,プロブレム整理の仕方,さらにはカンファレンスやケースレポートにつなげる場合の注意点など,幅広いテーマについて解説しています。

 そして後半の各論では,Complex caseを題材に,がん,感染症,循環器,腎疾患など,さまざまな領域のスペシャリストの薬剤師が専門的な視点から解説しています。カンファレンスの臨場感を再現できるよう,各症例のディスカッションポイントや質問事項もそれぞれあげています。複雑な症例といっても,ただレアな症例や薬物療法を取り上げるのではなく,各領域の薬物療法の基本に立ち返ることで,より良い選択肢を導けるような症例を選択しました。

 Complex caseの薬物治療は,専門医でも意見が分かれる場面が多いことと思います。薬剤師としては,1人で頭を悩ませるのではなく,立場の異なる他者の考えや患者の価値観を理解したうえで,医師を含めた多職種で議論することが重要と考えます。

 ガイドラインどおりの治療の適用が難しいComplex caseでこそ,薬剤師の真の価値が問われると考えます。本書を通じて,経験値の浅い薬剤師も多い薬剤師も多くの学びが得られること,そして薬剤師がComplex caseの薬物療法により深く関わっていくことを期待しています。

 

 2026年4月

 

 神戸大学医学部附属病院薬剤部 木村 丈司

 JA愛知厚生連海南病院薬剤部 鈴木 大介