病態を理解するための

臨床検査値判読マニュアル

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●検査診断の流れに沿った構成で、臨床検査値を読み解き、より深く病態が理解できます!

 
薬剤師、看護師、臨床検査技師などの多職種連携によるチーム医療において、臨床検査データは病態を理解するために最も客観的で重要な共通言語の一つです。本書は、臨床検査値を読み解き、より深く病態が理解できるよう検査診断の流れに沿った構成になっています。第1章では、病態把握に必須の基本的検査の各項目を「Basic knowledge」「判読のPoint」「患者指導のヒント」「影響を及ぼす薬剤」の4セクションで、第2章では、まず「Overview」で基本的検査から病態別検査にむかう道標を示してから、各精密検査を「どういうときに検査するか」「Basic knowledge」「判読のPoint」の3セクションで解説しています。
編著
上硲 俊法/編
発行日
2025年8月
判型
B6変型判
ページ数
368頁
商品コード
56761
ISBN
9784840756761
カテゴリ
目次

序章 総論

1 臨床検査の目的と種類

2 検査結果の評価

3 臨床検査値の判読手順

 

第1章 基本的検査

1 AST/ALT

2 LDH

3 ビリルビン

4 ALP

5 γ-GT

6 ChE

7 TP/Alb

8 PT/APTT

9 BUN/Cre/eGFR

10 UA

11 白血球数/白血球分画

12 赤血球数/ヘモグロビン/ヘマトクリット/赤血球恒数

13 PLT

14 Na

15 K

16 GLU/HbA1c

17 TC/LDL-C/HDL-C

18 TG

19 CK

20 AMY

21 尿蛋白/尿潜血/尿糖

 

第2章 病態別検査

1 肝機能検査/肝炎ウイルスマーカー

 LDHアイソザイム

 ALPアイソザイム

 インドシアニングリーン(ICG)試験

 A型肝炎ウイルスマーカー

 B型肝炎ウイルスマーカー

 C型肝炎ウイルスマーカー

 E型肝炎ウイルスマーカー

2 腎機能検査

 クレアチニンクリアランス

 シスタチンC

 血清β2-MG/尿中β2-MG/尿中NAG

3 血液疾患をみる検査(特に貧血をみるための検査)

 血清鉄/TIBC

 フェリチン

 網赤血球

 ビタミンB12/葉酸

4 電解質検査

 Ca

 P

 Mg

5 血液ガス/酸塩基平衡検査

 酸塩基平衡の読み方

6 糖代謝検査

 経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)

 インスリン

 CPR 尿中/血清

 抗GAD抗体

 グリコアルブミン

 1,5-AG

 血中総ケトン体/尿中ケトン体

7 脂質代謝関連検査

 リポ蛋白分画

 レムナント様リポ蛋白コレステロール

 マロンジアルデヒド修飾LDL

 small dense LDL

 遊離脂肪酸

 リポ蛋白(a)

8 膵機能検査

 AMYアイソザイム

 尿中AMY

 リパーゼ

 血清エラスターゼ

 ホスホリパーゼA2

 トリプシン

9 心疾患をみる検査

 CKアイソザイム

 心筋トロポニンT

 高感度トロポニンI

 BNP

 NT-proBNP

 ANP

10 炎症マーカー

 SAA

 赤血球沈降速度(赤沈)

 プロカルシトニン

 プレセプシン

11 その他の生化学検査(蛋白/非蛋白窒素)

 蛋白分画

 免疫グロブリン

 アンモニア

12 ホルモン関連検査

 FT3/FT4

 TSH

 TRAb/TSAb

 抗TPO抗体/抗Tg抗体

 Tg

 カルシトニン

 PTH

 コルチゾール 尿/血清

 血漿アルドステロン

 血漿レニン活性

 成長ホルモン

 プロラクチン

 ACTH

 テストステロン

 HCG 尿/血清

 エストロン/エストラジオール/エストリオール

 プロゲステロン

13 腫瘍マーカー

 CEA

 CA19-9

 NCC-ST-439

 STN

 DUPAN-2

 Span-1

 AFP

 AFP-L3分画

 PIVKA-Ⅱ

 SCC

 CYFRA21-1

 SLX

 NSE

 ProGRP

 CA15-3

 BCA225

 HER2蛋白

 CA125

 CA72-4

 CA602

 GAT

 PSA

14 骨代謝マーカー

 骨形成マーカー

 骨吸収マーカー

 骨マトリックス関連マーカー

15 出血/凝固検査

 出血時間

 フィブリノゲン

 アンチトロンビン

 プロテインC

 プロテインS

 トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体

 フィブリンモノマー複合体

 プロトロンビンフラグメントF1+2

 フィブリン・フィブリノゲン分解産物

 Dダイマー

 α2-プラスミンインヒビター

 プラスミン・α2-PI複合体

16 免疫・血清学的検査

 リウマトイド因子

 抗核抗体

 抗シトルリン化ペプチド抗体

 抗ミトコンドリア抗体

 クームス試験

 血清補体価(CH50)/C3/C4

17 感染症検査

 塗抹検査

 培養・同定検査

 薬剤感受性検査

 抗原検査

 抗体検査(抗体価)

 遺伝子検査(核酸増幅検査)

 抗ストレプトリジン-O抗体

 梅毒血清学的検査

 HIV感染診療のための検査

18 尿検査

 尿中微量アルブミン

 尿沈渣

19 便検査

 便潜血反応

 寄生虫卵

 便中カルプロテクチン

 

索引

序文

はじめに

 

 診療は患者からの情報を正しく活用するところから始まる。患者からの情報には,患者の自覚症状,身体診察所見,各種画像診断所見に加え,さまざまな検査データの情報がある。これらの情報を読み解き,患者の病気の状態(病態)や病気の原因(病因)を明らかにすることを診断という。その結果を患者に正しくフィードバックすることは臨床医学の核心である。

 

 診断は医療行為の根幹であるため,従来の医療においては医師以外の医療職の関わりは少なかった。従来,医師以外の医療職が検査判読を行う場合,まず職種ごとに特に必要性の高い検査項目(たとえば薬剤師の場合は処方箋に記載された腎機能検査や電解質検査であり,管理栄養士なら栄養マーカーなどである)を中心に判読することにより,各々の日常業務や医師との議論に利用していた。しかし今日の医療においては,多くの医療職はチーム医療の一員として積極的に他の医療職と協調しながら,さまざまな医療現場で患者指導をすることが求められるようになっている。このようなチーム医療の現場では,薬剤師は患者ごとの病状にあわせた服薬指導を,看護師は療養の指導を,管理栄養士は栄養指導を行う。このような病状にあわせた高度な指導を行うためには,各医療職が共通の言語を使って患者の病態を深く理解していく必要がある。さまざまな患者からの情報のうち臨床検査データは最も客観的で重要な共通言語の一つである。このためすべての医療職は臨床データの意味を解釈し病態を理解することが従来よりも格段に高いレベルで求められる。

 

 検査データを利用した診断(検査診断)に利用し,われわれが目にする一般的な検体検査項目は1,000種類以上ある。これらの検査項目のうち,さまざまな病態を効率よく調べることができる検査を「基本的検査」と呼ぶ。この検査は外来初診や経過観察,救急外来などで利用される大まかな病態を調べる第一段階の検査(一次的検査)である。「基本的検査」のみでは,診断確定や疾患の経過観察にも不十分なこともあるが,この基本的検査の結果を踏まえて患者の病態を考えることで,さらに詳しく病態を調べることや病因を探ることを目的とする病態別の検査(二次的検査)を選択することができる。この「病態別検査」を行うことで精度の高い診断や経過観察を行うことができるようになる。このように「基本的検査」によって大まかな病態を洗い出して,「病態別検査(精密検査)」を行うという順番で検査することは日常臨床で行う検査診断の流れである。

 

 本書は「基本的検査」と「病態別検査」の2つの章に分けて構成されている。日常診療では,まず「基本的検査」を吟味し,その結果をもとに「病態別検査」を行い病名診断に利用するからである。この流れは日常よく行われる検査診断の思考の進め方であり,本書は検査診断の進め方について,医師のみならず薬剤師,看護師,臨床検査技師,管理栄養士など患者の検査データを吟味する必要のある医療職に理解していただくことを目的に執筆した。本書を利用して多くの医療職が検査診断の進め方を理解し,そこから導かれる深い病態理解を活用したチーム医療の実践ができることを願っている。

 

 2025年7月

 上硲 俊法