よくある不安や疑問に応える
≪第1部 妊娠と薬≫
◆第1章 妊娠と薬の基礎知識
1 妊娠周期と胎児への薬の影響
2 妊娠中の薬物療法に関する情報源
◆第2章 代表的な薬の安全性と妊婦への対応
第2章を読む前に
1 解熱消炎鎮痛薬
2 抗菌薬,鎮咳・去痰薬
3 抗ウイルス薬
4 抗アレルギー薬
5 喘息治療薬
6 消化器官用薬
7 抗うつ薬
8 睡眠薬
9 ステロイド外用剤
10 飲酒・喫煙
11 ワクチン
◆第3章 妊娠と薬の相談Q&A
※紙面の都合により,目次ではの内容を一部省略して記載しています。
●解熱鎮痛薬
Ⓠ歯痛・頭痛で,市販のバファリンを飲んでも心配ないでしょうか?
Ⓠ熱が出ましたが,市販の解熱鎮痛薬を使ってもよいでしょうか?
Ⓠ妊娠反応(+)と出ました。3週間前に飲んだ歯科の痛み止めの影響は?
●風邪薬
Ⓠ風邪でPL配合顆粒を3回飲みました。胎児への影響は?
●うがい薬
Ⓠイソジンでうがい・のどスプレーをしましたが、胎児への影響は?
●予防接種(インフルエンザ)
Ⓠ予防接種を受けたいのですが、胎児への影響が心配です。
●抗ウイルス薬(インフルエンザ)
Ⓠタミフルが処方されたのですが、内服してもよいでしょうか?
●抗アレルギー薬(花粉症)
Ⓠ花粉症で、市販の点鼻剤(抗アレルギー薬)を使ってもよいでしょうか?
●酔い止め薬
Ⓠ6日前に酔い止めの薬を飲みましたが、心配ないでしょうか?
●睡眠薬
Ⓠ眠れないので、眠剤を飲んでもよいでしょうか?
●サプリメント、医薬部外品など
Ⓠ栄養ドリンクを飲んでもよいでしょうか?
Ⓠ葉酸をサプリメントで摂っています。いつまで摂る必要がありますか?
●喫煙
Ⓠタバコがやめられません。1日に10本程度吸ってしまいます。
≪第2部 授乳と薬≫
◆第4章 授乳と薬の基礎知識
1 母乳分泌の仕組みと母乳育児のメリット
2 授乳による乳児への薬の移行
3 授乳中の薬物療法に関する相談に応じる際の心構え
4 授乳中の薬物療法に関する情報源
◆第5章 代表的な薬の安全性と授乳婦への対応
第5章を読む前に
1 解熱消炎鎮痛薬
2 抗菌薬,鎮咳・去痰薬
3 抗ウイルス薬
4 抗アレルギー薬
5 喘息治療薬
6 消化器官用薬
7 抗うつ薬
8 睡眠薬
9 ステロイド外用剤
10 飲酒・喫煙
※授乳中のワクチン使用については,妊娠中の使用とあわせて2章で解説しています。p.128参照。
◆第6章 授乳と薬の相談Q&A
※紙面の都合により,目次ではの内容を一部省略して記載しています。
●解熱鎮痛薬
Ⓠ風邪をひいて頭が痛い。市販の痛み止めを飲んでも大丈夫でしょうか?
●局所麻酔薬
Ⓠ歯科治療で局所麻酔を使っても大丈夫でしょうか?
●抗菌薬
Ⓠ中耳炎でアモキシシリンが処方されました。授乳してもよいのでしょうか?
Ⓠ乳腺炎でセフジニルが処方されました。授乳中に飲んでも大丈夫でしょうか?
●予防接種(麻疹・風疹)
Ⓠ麻疹・風疹の予防接種を受けたのですが、授乳してよいでしょうか?
●予防接種(インフルエンザ)
Ⓠインフルエンザの予防接種をしましたが,子どもへの影響が心配です。
●抗ウイルス薬(インフルエンザ)
Ⓠリレンザを使ったのですが,母乳を飲ませてもよいでしょうか?
●抗アレルギー薬(皮膚炎)
Ⓠアトピーの症状が悪化したのですが,授乳中は薬を使わないほうがよいのでしょうか?
●抗アレルギー薬(花粉症)
Ⓠ花粉症で鼻炎がつらいです。授乳中でも飲める市販薬はありますか?
Ⓠ花粉症で予防的治療(皮内注射)をしたら,乳児に移行しますか?
●睡眠薬・抗不安薬
Ⓠ授乳中にエチゾラムを飲んでも大丈夫でしょうか?
●胃腸薬・止瀉薬
Ⓠ下痢をしましたが、ビオフェルミンを内服してもよいでしょうか?
Ⓠ正露丸・百草丸を1回内服しましたが、問題ないでしょうか?
●便秘薬
Ⓠ便秘でピコスルファートを4、5滴使っています。子どもへの影響は?
●子宮収縮薬
Ⓠ産後に出血が続き,メチルエルゴメトリンが1 週間分,処方されました。授乳してよいのでしょうか?
●肝機能改善薬
Ⓠ胆石症でウルソデオキシコール酸が処方されました。授乳への影響は?
●消化管造影剤
Ⓠ胃がん検診でバリウムを飲むのですが、授乳への影響は?
●外用剤
Ⓠ緑内障で目薬を使っていますが、授乳してよいのでしょうか?
●喫煙
Ⓠストレスでタバコを吸ってしまいます。子どもへの影響が心配です。
●飲酒
Ⓠストレスで眠れず,缶ビールを1 本飲んでしまいます。授乳への影響は?
索引
はじめに
妊娠中・授乳中の女性にも,しばしば薬剤治療が必要な状況は起こります。処方する場合の情報源として,医薬品添付文書は,基本的に参照すべき情報です。しかし,この記載に従えば,ほとんどの薬剤は妊娠中・授乳中の女性に使用することができません。この古くて新しい課題に対し,愛知県薬剤師会では,実態把握のための調査研究事業,「『妊娠・授乳と薬』対応基本手引き」の作成,そして「妊娠・授乳サポート薬剤師」養成講座などの実践的な活動を通して検討を重ねてまいりました。
妊娠中・授乳中の女性の薬剤治療で大切なことは,「妊娠・授乳中の女性」と「胎児・乳児」双方の健康の確保です。胎児・乳児の安全のみを優先し,妊娠・授乳中の女性の健康を犠牲にすることは,結果として胎児・乳児の健康をも害するリスクがあります。例えば,母体のうつ病などの精神疾患や慢性疾患に必要な薬剤は,服用を止めたときの母体の健康状態の悪化が及ぼす胎児・乳児への影響も考慮すべきでしょう。胎児の順調な発育のためにも,母体疾患の良好なコントロールが欠かせません。
ほとんどの薬剤は母乳中に分泌されます。しかし,その濃度は乳児にとって安全な範囲内である場合も少なくありません。考慮すべきは「薬剤が母乳中に移行するかどうか」ではなく,「母体や乳児に有害な作用が生じるかどうか」です。実際に,乳児に有害事象が生じた報告はわずかです。
一方,母乳を止めた場合には,乳腺炎の発症など有害事象は多数認められます。ミルクは人工物であり,調乳過程,成分の安全性については薬剤と同様に検証が必要です。少しの薬剤が含まれていたとしても,母乳の有用性は人工乳よりもはるかに勝ります。薬剤を使用しないことで母体の健康が維持できなければ,適切な育児が提供できず,乳児の健康が脅かされる可能性もあります。授乳中の女性に薬剤投与のみの理由で,母乳の中止を助言することは極力避けるべきです。
本書は2019 年に初版を上梓いたしましたが, その後に発生したCOVID-19 は社会経済だけではなく医療にも大きな影響を及ぼしました。今回の改訂にあたっては,添付文書,インタビューフォームや国内外の文献など薬剤に関する各種情報を改めて確認し,内容を刷新しました。COVID-19 関連の薬剤(抗ウイルス薬やワクチンなど)について可能な範囲で付け加えました。図表などよりわかりやすく情報を提供させていただくため,編集諸氏の力添えもいただきながら執筆者一同努力を重ねたつもりです。
薬剤師をはじめとするすべての保健医療関係者が,個々のニーズに合わせた最適な治療法を選択するために,本書を役立てていただくことを望みます。
2025年(令和7年)8月
愛知県薬剤師会 妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班 班長
山崎 嘉久
第2版の発刊にあたって
私たち薬剤師はこれまで,多くの妊婦・授乳婦の方々の声に耳を傾け,どのように支えられるかを模索してきました。昨今ではインターネットで気軽に情報が検索できるようになりましたが,かえって不安をあおられ,現場では「薬を飲んでも大丈夫ですか?」「母乳に影響はありますか?」といった切実な相談が絶えません。そのたびに,エビデンスに基づいた情報と,患者さんを思う気持ちが不可欠であると痛感してきました。
一般社団法人愛知県薬剤師会では,妊娠・授乳中の女性の疑問や質問にきちんと向き合い,適切な情報源を利用して,的確な判断をし,かつ有効なコミュニケーションスキルをもった薬剤師の育成を目指し,平成22年度より「妊娠・授乳サポート薬剤師養成講座」を開講しています。同養成講座を修了し,「妊娠・授乳サポート薬剤師」として認定された薬剤師は現在では約430 名に達し,愛知県内のみならず,日本中で妊婦・授乳婦の不安に対応し,適切な薬剤使用による妊娠・授乳継続へのアドバイスを行っています。
本書の初版である『妊娠・授乳と薬のガイドブック』は,小児科医師,産婦人科医師,薬剤師から構成される「愛知県薬剤師会 妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班*」による12年間に及ぶ研究の成果や,「妊娠・授乳サポート薬剤師養成講座」研修中に得られた現場の声を反映し,まとめたものを,現場の薬剤師業務の必携書としていただくべく令和元年に発刊しました。現在,同養成講座のテキストとしても使用されています。
このたび第2版として発刊するにあたり,最新の知見を取り入れながら,より実践的で使いやすく,現場で役立つ構成に刷新しました。
薬に対する不安を取り除き,安心して治療を選択できるよう支援すること――それが本書の目指すところです。私自身もかつて,迷い,悩みながら育児をする母親の一人でした。あの頃「妊娠・授乳サポート薬剤師」が身近にいたならば,どれほど心強かっただろうと思います。今,小さな命の健やかな成長を願うすべての人々にとって,本書が支えとなり,安心を届ける一助となることを願ってやみません。
末筆ではありますが,本書の編纂に格別のご協力をいただいた執筆・研究班員の皆様,ならびに本書の出版にご協力をいただいた(株)じほうに心より感謝を申し上げます。
2025年(令和7年)8月
愛知県薬剤師会 会長
川邉 祐子
*平成18年から20年度の3年間実施された「妊婦・授乳婦の医薬品適正使用ネットワーク構築に関する研究事業」(財団法人日本公衆衛生協会,愛知県健康福祉部健康担当局)において編成され現在に至る。
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