薬剤師などの医療従事者や医薬品産業に従事する方を支える出版社・新聞社
Chapter 1 薬歴とは
1.薬歴の歴史
薬歴の基本的な記載事項とその有益性
薬歴のスキルアップで求められる2つの軸
POSを避けて薬歴は語れない
2.POSとは
POSの利点は,①教育レベルの向上,②効率化,③データベース化
チーム医療の目的はQOLの最大化,そして情報共有の手段としてのPOS
3.SOAPとは
S/Oは患者側,A/Pは医療者側の情報
薬学的管理に必要な情報が書かれているか
4.薬歴をつける際のいくつかの注意点
時系列を前後させない
良い薬歴の条件は充実したフェイスシート
拡大する調剤の概念と薬歴
薬歴を記録する法的根拠
[memo]変遷する調剤録の概念
Chapter 2 SOAP形式の薬歴がうまく書けない理由
1.薬歴がうまく書けない理由は誤訳にある
患者は来局のたびに問題を抱えている?
POSのPは,プロブレム(投薬のタイトル,テーマ)
「暮らしが先にくる思考回路」の実践
2.ごちゃごちゃした薬歴になってしまいます
ごちゃごちゃする理由はクラスタリングの欠如
クラスタリングによってプロブレムがみえてくる
3.SOAP形式の薬歴が書けない本当の理由
ニトロペン®が効かないと訴える患者
薬剤師の考えを検証する「SOAP思考」
SOAP形式の薬歴が書けない本当の理由
[memo]ニトロペン®の使い方が変わってきた理由
4.いつも同じ処方なので薬歴に書くことがありません
薬識(薬に対する認識)は
日本全国の薬識が揺らぐ日
誤った薬識は随時訂正し,理想に近づける
Chapter 3 薬歴は薬学を通して患者を理解するためのツールである
1.医師と違う視点を常にもつ
薬剤師が重視する視点は副作用
副作用のモニタリングピリオドを意識
副作用を判別し,早期発見,早期対応に寄与
2.併用注意は薬剤師の考えを伴って投薬される
併用禁忌はダメだけど併用注意は大丈夫?
疑義照会はどこに書く?
[memo]CYP3Aの影響は併用禁忌のないデエビゴ®のほうが少ない?
3.患者の個人データを薬歴に落とし込む
薬学的知識をどう活かすのか
個人データの蓄積が現場の強さ
薬物相互作用の個人データを薬歴に落とし込む
個人データを活かして副作用を防ぐ
4.すぐに答える,そこにアセスメントはあるのか
薬歴を手元に置くことからすべてが始まる
PL配合顆粒を投薬する3つのシーン
患者に応じた服薬指導とは?
Chapter 4 高齢者の薬学的管理
1.高齢者の高血圧治療
高齢者高血圧での6つの留意点
降圧薬変更に伴い,夜間頻尿が増悪した患者
患者に誤解を与える要因とは?
2.高齢者の糖尿病治療
高齢者糖尿病の薬物療法に求められる3つのポイント
シックデイ,原則は経口血糖降下薬の減量・中止
[memo]心不全と糖尿病
3.高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
H2受容体拮抗薬による認知機能低下,せん妄のリスク
誤嚥性肺炎を繰り返す患者へのACE 阻害薬の提案
嚥下機能を確認し,適切な服薬支援につなげる
4.高齢者の漢方治療
認知症に対する漢方薬
構成生薬からSOAPを考える
Chapter 5 薬歴から学ぶ
1.薬歴を研修資材にする
薬を服用するリスクと中断する不安
ふらつきとめまいは違う症状?
[memo]薬歴が関与した2 つの勉強方法
2.症例ベースの問題に取り組む
薬歴をもとにしたバーチャル症例検討会
専門的な知識の習得が患者のための行動に
3.学んだことを薬歴に還元する─ハイリスク薬SSRI/SNRIのリスク
SSRI/SNRI併用による出血リスク
SSRI/SNRIと心不全
SSRI/SNRIとNSAIDs
SSRI/SNRIと睡眠
“痛み止め”としてのデュロキセチン
4.ディテールを保存する
薬歴をつけることで知識を使えるものに変化させる
良い記録には原因と結果の間に薬剤師の考えや行動がある
コラム
・薬歴は「つける」もの? それとも「書く」もの?
・薬歴は自由に書いていい?
・ストックフレーズはなぜいけないのか?
・SOAPで一番難しいのは?
・薬局薬剤師が抱える構造的な問題とは?
児島 悠史(Fizz-DI)
勉強のために読んだ本の感想が「面白かった」だと、果たしてちゃんと勉強したのか怪しまれてしまうかもしれませんが、この実践薬歴は読んだ後にやはり「面白かった」と言いたくなります。それは多分、この本で整理・言語化されている内容を通して、“日頃から自分がやっている薬剤師としての仕事”の可能性や奥行きに改めて気づけるからだと思います。
「薬歴」は薬剤師の仕事の重要なツールである一方、その書き方を詳しく教わる機会はほとんどなく、多くの人が試行錯誤しながら“我流”で書いている実情があります。そのため、確かにこの本が「薬歴の書き方」を学ぶのに最適な参考書となるのは間違いありません。
しかし、実践薬歴が「薬歴の書き方」を指南するテクニック本かというと、実はそうではないと私は考えています。この書籍のなかでは一貫して、「良い薬歴を書くためにはどうするか」ではなく、「患者さんに対して上質な薬学的管理・服薬指導を行うための考え方」が示され、これを実践したことの結果として、薬歴が“うまく書けるようになる”というベクトルで書かれているからです。薬機法改正による薬歴の法的な位置づけ、電子薬歴の普及、診療ガイドラインや患者指導箋の改訂といった時代の流れにあわせて“改訂版”が作られたのも、この本が薬歴のための小手先のテクニックではなく、「自分は患者さんのために何ができるのか、何を学び続ける必要があるのか」という薬剤師の職能の本質に触れるものであることの証左だと思います。
薬学で患者さんの役に立つという“薬剤師の王道”を進むにあたって、これほど読んでいて面白く、心強い指針になってくれる本はなかなかありません。進むべき方向に迷ったとき、ぜひ何度も読み返して欲しいと思います。
改訂にあたって
こんにちは,薬局薬学のエディターこと山本雄一郎です。この本は,2018年9月に発刊した『誰も教えてくれなかった実践薬歴』の改訂版です。改訂版を発刊するに至った理由はいくつかありますが,その主なものを紹介すると,電子薬歴の台頭や薬機法の改正,そして診療ガイドラインなどの改訂といったところでしょうか。
まず,電子薬歴の台頭に関しては,時代にあわせ,SOAPの(P)の部分の表現を変更しました。次に,薬機法の改正においては,本書のテーマに関連した薬歴や調剤録に関するものについてのみ触れています。最後に,診療ガイドラインなどの改訂に関しては,よくもまあこの短期間でこうも変わるものだなぁ,と思うのと同時に,臨床現場の薬剤師は一生勉強が必要なはずだと再認識したところです。また,初版で扱った薬というのは,なるべく新薬を避け,使い方などが確立している薬のみを意識的に選択したはずでした。筆者としては魂をこめて書いた書籍を,みんなに長く愛してほしいですから。でもでも,その書籍を発刊してわずか数年の間に,その古い薬の患者指導箋が,服薬指導の内容が2度も変更になろうとは思いもしませんでした。薬の情報を新たにする。そういったことも僕らの大事な仕事なのです。
さて薬歴は,調剤を実施するための,薬物療法を患者に対して個別最適化を行い実施するためのツールです。そこには当然,皆さんが勉強してモノにした薬の情報が用いられています。しかし,それだけではないはずです。そこには,そこにしかない患者の情報も記録されているはずなのです。でなければ,薬物療法を誰に対して個別最適化していくというのでしょう。
この本は,その忘れてはいけない患者情報を大事にしています。よって抽象度はぐっと落ちます。しかしながら,そのことでこの本の価値が下がるとは思っていませんし,多くの人に手に取ってもらえたこともその証左だといってもいいかもしれません。また,この本は,薬歴から(もしくは薬歴へ)という他の書籍とは異なる視点(パースペクティブ)から薬学を考えています。この新たな視座は,あなたが取り組んでいるものと組み合わせることで,きっとあなたを臨床面においてステップアップさせる。僕はそう目論んでいます。改訂版では,その意図を補強しました。(後略)
2024年8月 山本 雄一郎
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