内田 まやこ先生(九州大学病院 教授・薬剤部長)
日々変化する医療現場において、薬剤師は確かな専門知識と判断力が求められる専門職です。患者一人ひとりに最適な薬物療法を提供するには、最新エビデンスに基づく処方意図の理解、副作用リスクの予測、患者背景を踏まえた服薬指導など、広範な対応力が必要です。
そうした現場を支える一冊として、『薬剤師のためのナレッジベース 2nd Edition』は非常に頼もしい存在です。本書は、薬剤師が日常的に関わる55疾患を網羅し、処方監査、モニタリング、服薬指導といった実務の流れに沿って情報が整理されています。忙しい中でも必要な情報にすぐアクセスでき、現場の即戦力として活用できます。
特筆すべきは、情報量だけでなく、質と使いやすさに優れている点です。治療薬のチェックリストや薬物治療のポイント、ガイドラインに基づく情報など、薬剤師の視点でまとめられた記述が随所にみられます。
さらに、患者背景の違いに応じた柔軟な対応策もあり、実践的な応用力が身につきます。本書はまるで、そばで支えてくれる“先輩薬剤師”のような存在です。業務中に迷ったときや症例検討、新人指導に悩んだときも、手に取ればすぐに道筋を示してくれる心強さがあります。
また、知識が一貫した構造で整理されているため、繰り返し使ううちに自然と「使える知識」として定着します。学びと実践をつなぐ橋渡しとして、本書は極めて有用です。
膨大な情報と進化し続ける医療に向き合う今、薬剤師には「正しく選び、実行する力」が求められます。本書はその力を養う実務書の決定版です。新人からベテランまで、すべての薬剤師にとって”信頼できるパートナーとなる一冊です。
山本 雄一郎先生〔(同)ファーマエディタ/(株)ファルマウニオン/熊本大学薬学部〕
学会や出張の際、会場やホテルについての下調べをしておくことがほとんどなくなった。そんなことをしなくても、スマホに地図アプリをインストールさえしておけばなんとかなってしまうからだ。いまやそれが当たり前で、たいへん便利な時代になっている。でも、その地図アプリの設定が航空写真だったりすると、目的地にはなかなか辿り着くことができなかったりする。それは多分、ごちゃごちゃしていて、余計な情報が多いからなのだと思う。事実をありのままに写すだけでは、地図としてはあまり役に立たないらしい。現実が複雑であったとしても、何かを導くためには、それなりの工夫を施す必要があるというわけだ。
この春に、娘が晴れて薬剤師となった。親と同じ職業を選んでくれて、これほど誇らしいことはない。あまり余計なことは言い過ぎないように心がけてはいるものの、やっぱり親としては心配だったりする。いまから薬のことや疾患のこと、そして各種ガイドラインなどを学んでいくなかで、複雑に絡み合った情報のなかを迷子になったりしないだろうか、なにか使いやすい“地図アプリ”はないだろうか、と。
そこで僕は娘に本書をプレゼントすることにした。この『薬剤師のためのナレッジベース 2nd Edition』は薬剤師業務を見渡すための“地図”だ。それも航空写真なんかではない、工夫を施された、使いやすい“地図アプリ”だ。本書を携え、娘がどこに向かうのか、親としては口を出さずにただただ見守りたいと思う。
高田 龍平先生(東京大学医学部附属病院薬剤部 教授/薬剤部長)
本書を読んだ最初の感想は、”思い切ったな”でした。
持ち歩きやすい800頁の小さな本に、14領域55疾患の薬剤情報を網羅的に記載しているため、それぞれの疾患については10~20頁程度の記載なのですが、(基本的には)見開き2頁の「治療薬チェックリスト」、同じく見開き2頁の「ガイドラインに基づく基本情報」、その後に「薬物治療」、「合併症・患者背景に応じたアプローチ」と続く構成は大変見やすく、かつエッセンスが濃縮された密度の濃い内容になっています。あれもこれもと情報を詰め込み、結果として見づらくわかりにくくなりがちなところを、ニーズに合うところだけを上手に抜粋した勇気、石井先生らしい思い切りに感服しました。
5年の進歩をアップデートした2nd Editionとしての本書を、病棟業務を見据えて勉強中の若手薬剤師、新たな病棟を担当することになった中堅薬剤師、あまり触れてこなかった疾患背景をもつ患者さんに出会ったベテラン薬剤師、つまり、あらゆる薬剤師に自信を持ってお薦めします。目的に応じて、前から順にコツコツ読むもよし、特定の疾患についてピンポイントで勉強するもよし、です。また、薬剤師が知っておくべきこと、考えるべきことを学びたい薬学実務実習(薬局、病院)中の薬学部生にも、最新の薬物治療をフォローしたい基礎医学者・基礎薬学者にも多くの学びがあるものと思います。
そして、“薬剤師のための”本ではありますが、専門外の疾患の薬物治療に悩む医師にも(こっそり)薦めておきます。
山浦 克典先生(慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 社会薬学部門)
本書は、千葉大学医学部附属病院に所属する36名の薬剤師が日常の臨床業務を通じて蓄積した知識(ナレッジ)をもとに、55の代表的疾患に的を絞って構成した書籍型ナレッジベースである。最大の特徴は、各疾患の重要なポイントを国内の診療ガイドラインに基づいて凝縮した基本情報のページにあり、疾病の定義や症状、診断基準、治療方針が簡潔かつ視認性高く整理されている。必要なときに疾患名で即座に参照できる構成は、日常業務で迅速な判断が求められる薬剤師にとって大きな強みとなる。
初版から5年が経過するなかで、糖尿病、喘息、不整脈、便秘、頭痛、脳卒中、CKDなど、多くの診療ガイドラインが改訂された。本書では、それらを踏まえて全体を最新情報に基づきアップデートしているが、基本構成は初版を踏襲しており、既存の読者が引き続き使いやすいように配慮されている。
この間、薬剤師を取り巻く環境にも大きな変化があった。特に薬局薬剤師にとっては、服薬フォローアップやリフィル処方箋における継続調剤、または受診勧奨の判断材料として、本書は極めて有用である。また、処方医への情報提供や処方提案の際にも、エビデンスに基づく根拠資料として活用できる。さらに、認定実務実習指導薬剤師にとっては、実務実習生に疾患別薬物治療の基本構造を伝える教育ツールとしても活用が期待される。
外来および在宅医療が高度化するなか、薬局薬剤師は臨床判断と情報提供を伴う専門職として、患者のアウトカムにより深い関与が期待されている。本書は、そうした“臨床現場で使える知識”が凝縮された実践的な一冊であり、薬局業務の質と信頼性を支える強力な支援ツールとなるであろう。
本書初版を出版してから5年が経ちました。その間,新型コロナウイルス感染症が世界的パンデミックを引き起こし,地震や洪水などの天災が各地で起こり,人々の生活を脅かしました。また,複数の戦争や内戦が今でも継続しています。このような既存の想定を超える困難な状況下でも,医療は必ず人々を支え,平穏な日常生活を送れる環境を守ってきました。特に,薬の世界では,「創薬モダリティ」と称されるように創薬基盤技術の方法や手段が増え,史上初のmRNAワクチンが私たちの日常を取り戻してくれました。
一方,私たち医療者は感染症や災害と闘っているだけでなく,各々の専門領域の展開を怠りませんでした。この5年の間に更新されたガイドラインは優に70を超えています。一見社会が止まっているように感じた期間でも,決してあゆみを止めない,これが医療人としての大切なスタンスではないでしょうか。
初版出版の折には,「見やすい」,「現場で使いやすい」,「常に病棟に持っていく」など,たくさんのありがたい感想をいただきました。私たちも,薬剤師目線で考えた“現場のお供”を目指していましたので,お役に立てたことを大変嬉しく思います。また,「本書は教育現場でも活用できる」という言葉もいただきました。学生は,薬理学,薬物治療学,疾病学などの講義を受け,知識を貯めたうえで実習に臨みますが,それらを自分の頭の中で概念化しなければなりません。その一助になればと,あらためて思いました。
第2版は,改訂されたガイドラインを参考にポイントを選りすぐり,アップデートいたしました。薬剤師業務で必要な,薬剤の特徴,処方監査,モニタリング,服薬指導を含む「治療薬チェックリスト」,「ガイドラインに基づく基本情報」,「薬物治療」の項目は変えていません。薬物治療のマネジメントが薬剤師の仕事です。それには,まず疾患と治療を理解し,医師と議論できる力も身につけなくてはなりません。病棟で,自己研鑽で,あらゆる場面でご活用いただけると幸いです。
2025年5月
千葉大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長
石井伊都子
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