2026.09.10

にっきょくんと学ぶ 「日本薬局方」のこれまで・これから――第3回

こんにちは。僕、にっきょくん。
2026年4月、「第十九改正日本薬局方」が厚生労働省から告示され、7月には普及版もじほうから刊行された。
このコーナーでは、明治時代に初版がつくられた日本薬局方の、現在まで続く長い歴史を、若手編集部員のMさんとともにたどっていくよ。それでは第3回を始めよう。

※前回の記事はこちら(第1回の記事はこちら

編集部員M
にっきょくんー。前回は、長い時間をかけて日本薬局方が完成しましたね!

 

にっきょくん
そうだね! 長年の悲願かなって完成した、この初版 日本薬局方を、もう少し見ておこうか。

明治19年(1886年)に公布された初版では、各条468品目、製剤総則10項目が掲載されていた1) 。前回も話したとおり、ドイツ文で作られた原案を邦訳したんだけれど、医薬品名については対応する日本語がなかった。だから、すべて漢字の当て字が使われたんだ2)。例えば、アトロピンは亜篤羅必涅、キニーネは規尼涅という具合にね3)

こうしてできた日本の医薬品基準を、諸外国に対しても示すべく、1888年(明治21年)には、300ページからなるラテン語版も出版されたんだ1)

ちなみに、同時期の日本では、例えば市制・町村制が発布されて地方自治制度の基礎が築かれたり〔明治21年(1888年)〕、大日本帝国憲法が発布されたり〔明治22年(1889年)〕、議会制政治が導入されたりもしている(同)。明治22年(1889年)は、東海道線が全線開通した年でもあるよ。

 

編集部員M
明治が始まって以降、西洋諸国から学問や技術を吸収してきたけれど、いよいよ、日本独自の制度が整備されてきたってことですね!

 

にっきょくん
そのとおり。この流れのなかで、日本人のみによる日本薬局方の改正作業も始まり、明治24年(1891年)には、改正日本薬局方が発布されるんだ。このとき編集委員となったのは、東京帝国大学医科大学教授の長井長義博士ら4)。長井博士といえば、生薬の麻黄からエフェドリンを発見し、のちに化学合成に成功したことでも有名だ。日本の薬学と有機化学の発展に生涯をささげて、「日本薬学の父」とも称えられているよ。

さて、日本薬局方はその後、第三改正〔明治39年(1906年)発布〕、第四改正〔大正9年(1920年)発布〕、第五改正〔昭和7年(1932年)発布〕と、改正が重ねられていったんだ。

 

編集部員M
なるほどー。現在の5年ごとの改正に比べると、少し間隔が空いているように思えるけれど…。

 

にっきょくん
そうだね。ただ、新薬や当時広く使用されていた医薬品などは、順次改正を行い、都度、内務省令として発布されているよ4)。当時の日本薬局方は内務省の管轄だったんだね。

特に、昭和7年(1932年)の第五改正のあと、次の全面的な改正(第六改正)は19年後の昭和26年(1951年)まで待つことになるんだけれど、この間になんと16回もの改正が行われているんだよ4)。これは、第二次世界大戦の影響が大きい。薬局方の規格を緩めて量産を図り、一方で代替品を収載するという措置をとることで、急速に高まる医薬品需要に間に合わせようとしたんだ2)

ちなみに、ラテン語版が出版されたのは、第一改正、第二改正までで、第三改正以降は、英語翻訳版に切り替わって現在に至っている。ただし、やはり第二次世界大戦の影響で、第五改正のみは英文版の作成が中断されてしまった。そうして第六改正で再開されたんだ1)

ということで、次回は戦後、第六改正以降の日本薬局方を見ていくことにしよう。
参考文献
1)伹野恭一、他:日本薬局方(JP)130周年記念シンポジウムとJP18に向けた今後の課題.薬史学雑誌、52(2):160-168、2017
2)江本龍雄、他:薬局方の一世紀.ファルマシア、22(11):1225-1230、1986
3)日本薬局方.内務省令第10号、1886年6月25日、国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/pid/2938123)
4)第十九改正日本薬局方.pp9-38(日本薬局方沿革略記)、厚生労働省告示第193号、2026年4月10日
・医薬品医療機器総合機構:日本薬局方の歴史(https://www.pmda.go.jp/files/000249603.pdf)(2026年8月10日閲覧)

 


第十九改正日本薬局方

第十九改正日本薬局方

定価36,300円(本体33,000円+税10%)

医薬品各条は新規27品目、削除3品目で2,072品目に!

日本薬局方は学問・技術の進歩と医療需要に応じ、わが国の医薬品の品質を適正に確保するために必要な規格・基準および標準的試験法等を示す公的規範書です。
今回の第十九改正は5年ぶりの全面改正で、近年の科学技術の進展および医薬品流通等のグローバル化に伴う国際調和に対応するため、全面的な見直しが行われるとともに、多数の医薬品各条等が新規収載されました。
本書は資料編として、本改正に関連する告示・通知のほか、改正事項の趣旨やポイントがわかる事務連絡、技術情報等の資料を網羅し、生薬試験に関する資料や検索に有用なオリジナル索引を収載しています。

第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026

第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026

定価28,600円(本体26,000円+税10%)

第十九改正日本薬局方医薬品各条(化学薬品、生薬等)収載品目について、その基本的物性情報と医療現場で必要となる臨床情報を収載した医薬品情報書です。各収載品目の構造式を掲載したほか、先発医薬品等の代表的製品名・剤形ごとの後発医薬品有無を一覧で掲載。薬局等に備えるべき必携書としてご活用ください。

第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026 セット版

第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026 セット版

定価38,500円(本体35,000円+税10%)

「第十九改正日本薬局方」に「第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026」がついたお得なセット版!

「第十九改正日本薬局方(条文)」と条文だけでは分からない医療現場で必要となる臨床情報を収載した医薬品情報集「第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026」のセット版です。

第十九改正日本薬局方 技術情報 JPTI 2026

第十九改正日本薬局方 技術情報 JPTI 2026

定価39,600円(本体36,000円+税10%)

新規の一般試験法や参考情報も詳説!

本書は、第十九改正日本薬局方に基づき試験操作を行う際の技術情報として、実測スペクトル値や実測クロマトグラムを帰属等の実測値とともに掲載、新規の一般試験法や参考情報も詳説しています。医薬品各条では、既収載品目に加えて第十八改正以降の新規収載品目の技術情報を掲載したほか、生薬の鏡検写真やTLCなどを掲載したカラーページをより充実させました。

シェア