にっきょくんと学ぶ 「日本薬局方」のこれまで・これから――第7回

やあ! 僕、にっきょくん。
2026年4月、「第十九改正日本薬局方」が厚生労働省から告示され、7月には普及版もじほうから刊行された。
このコーナーでは、明治時代に初版がつくられた日本薬局方の、現在まで続く長い歴史を、若手編集部員のMさんとともにたどっていくよ。さあ第7回だ。今回は、背景知識として、高度経済成長期の日本の医薬品産業についても少し見ていくよ!
※前回の記事はこちら(第1回の記事はこちら)




いったいどんなふうに成長したかだけど…。
まず1950年代の製薬メーカーは、競い合うように海外の製薬メーカーから新薬の特許(製造技術特許)とそのノウハウを獲得し、それに基づいて国内で生産することに注力したんだ。海外での評価がすでに決まっている、いわば「確実に売れる」医薬品の技術を導入したわけで、その成果は目覚ましいものだったみたいだよ1)。
さらに、制度面の動きとして、「国民皆保険」も大きなトピックだ。昭和33年(1958年)の国民健康保険法改正によって、全市町村に国民健康保険の実施が義務付けられて、それまで被用者保険など既存の保険制度の対象外になっていた自営業者や農業・漁業の従事者なども国民健康保険でカバーされることになったんだね2)。昭和36年(1961年)に全市町村での実施が完了して達成され、国民の誰もが公的医療保険に加入して医療を受けられる制度が整ったことで受診率は上がり、国内の医薬品需要も急伸したんだ1)。
終戦以降、従来の製薬専業のメーカーだけでなく、食品や醸造、化学といった他業種のメーカーも、その技術や装置施設を活かして続々と参入してきたんだ。そうして迎えた高度経済成長期、医薬品産業は一気に国内化学工業の中心的存在へと成長していくんだ1)。


こうして、高度経済成長期に日本で開発された新薬といえば、まず、梅澤濱夫博士によって発見され、明治製菓から昭和33年(1958年)に発売されたカナマイシンが有名だね。カナマイシンは、新しい結核治療薬として欧米やその他の国々で広く導入され、日本開発の薬が海外に届けられる嚆矢となったんだ3)。それから、止血薬のトラネキサム酸〔昭和40年(1965年)発売〕、抗悪性腫瘍薬のブレオマイシン〔昭和44年(1969年)発売〕、セファロスポリン系抗生物質のセファゾリン〔昭和46年(1971年)発売〕なども日本で開発されたもので、これらも早々に海外展開されていくんだよ。
と同時に、海外からも引き続き数多くの医薬品が日本に導入されたよ。例えば、キノロン系抗菌薬のナリジクス酸や、向精神薬のジアゼパム、ハロペリドール、高尿酸血症治療薬のアロプリノール、利尿薬のスピロノラクトンなどなど…。いずれも1960年代に日本で販売が開始されているんだ4)。


当時の薬事法(昭和35年法律第145号)には「厚生大臣は、少なくとも十年ごとに日本薬局方の全面にわたつて中央薬事審議会の検討が行なわれるように、その改定について中央薬事審議会に諮問しなければならない」とあったけれど(第5回 参照)、5年となればその半分だ。さあ急がねば!
…ということで。第八改正日本薬局方が公布されたのは昭和46年(1971年)4月1日のことだけれど、その翌月には、もう厚生大臣の諮問が行われて、次回改正に関する審議がスタートするんだ5)。そうして、昭和51年(1976年)4月1日に第九改正日本薬局方が公布される。そう、第八改正からちょうど5年後だね。この「5年ごと」の全面改正は、その後もずっと維持されて、最新の第十九改正に至るんだ。
そうしてさらに、第十二改正に向けた検討では、5年ごとの改正でも学問水準の進歩に対応しきれないことを考慮して、必要に応じて部分改正を行うことが認められたんだ5)。つまり「追補」だね。第十二改正〔平成3年(1991年)〕以降、1回の改正につき2回の頻度で追補が発行されて、やはり現在まで続いているよ。
1)日本薬史学会 編者:日本医薬品産業史.薬事日報社、2005
2)厚生省:厚生白書(昭和36年度版).1962(https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/1961/dl/01.pdf)
3)堀田国元、他:梅澤濱夫先生のカナマイシン発見から日本学士院賞・文化勲章まで.The Japanese Journal of Antibiotics、70(4):201-210、2017
4)松下 亨:日本で開発された医薬品について.日本薬理学雑誌、110(5)、277-295、1997
5)第十九改正日本薬局方.pp9-38(日本薬局方沿革略記)、厚生労働省告示第193号、2026年4月10日

第十九改正日本薬局方
定価36,300円(本体33,000円+税10%)
医薬品各条は新規27品目、削除3品目で2,072品目に!
日本薬局方は学問・技術の進歩と医療需要に応じ、わが国の医薬品の品質を適正に確保するために必要な規格・基準および標準的試験法等を示す公的規範書です。
今回の第十九改正は5年ぶりの全面改正で、近年の科学技術の進展および医薬品流通等のグローバル化に伴う国際調和に対応するため、全面的な見直しが行われるとともに、多数の医薬品各条等が新規収載されました。
本書は資料編として、本改正に関連する告示・通知のほか、改正事項の趣旨やポイントがわかる事務連絡、技術情報等の資料を網羅し、生薬試験に関する資料や検索に有用なオリジナル索引を収載しています。

第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026
定価28,600円(本体26,000円+税10%)
第十九改正日本薬局方医薬品各条(化学薬品、生薬等)収載品目について、その基本的物性情報と医療現場で必要となる臨床情報を収載した医薬品情報書です。各収載品目の構造式を掲載したほか、先発医薬品等の代表的製品名・剤形ごとの後発医薬品有無を一覧で掲載。薬局等に備えるべき必携書としてご活用ください。

第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026 セット版
定価38,500円(本体35,000円+税10%)
「第十九改正日本薬局方」に「第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026」がついたお得なセット版!
「第十九改正日本薬局方(条文)」と条文だけでは分からない医療現場で必要となる臨床情報を収載した医薬品情報集「第十九改正日本薬局方 医薬品情報 JP DI 2026」のセット版です。

第十九改正日本薬局方 技術情報 JPTI 2026
定価39,600円(本体36,000円+税10%)
新規の一般試験法や参考情報も詳説!
本書は、第十九改正日本薬局方に基づき試験操作を行う際の技術情報として、実測スペクトル値や実測クロマトグラムを帰属等の実測値とともに掲載、新規の一般試験法や参考情報も詳説しています。医薬品各条では、既収載品目に加えて第十八改正以降の新規収載品目の技術情報を掲載したほか、生薬の鏡検写真やTLCなどを掲載したカラーページをより充実させました。