2026.10.06

にっきょくんと学ぶ 「日本薬局方」のこれまで・これから――第9回

ごきげんよう! 僕、にっきょくん。
2026年4月、「第十九改正日本薬局方」が厚生労働省から告示され、7月には普及版もじほうから刊行された。
このコーナーでは、明治時代に初版がつくられた日本薬局方の、現在まで続く長い歴史を、若手編集部員のMさんとともにたどっていくよ。さて、第9回だ。前回に引き続き、薬局方の国際調和を見ていこう。

※前回の記事はこちら(第1回の記事はこちら)

編集部員M
にっきょくんー。前回は、薬局方の国際調和を目指すPDGのお話でした。完全調和から「調和が困難な部分を明示的に除外した部分的調和」へと軌道修正したことが、膠着状態を打開する重要なカギとなったのでしたね!
でも、調和が困難な部分を明示的に除外するって…? 日米欧の三薬局方の間で調和に至らなかった部分が、パッと見てわかるようになっているのですか?

 

にっきょくん
うん、そのとおり。ここで最新の第十九改正日本薬局方を見てみよう。

PDGにおける調和合意に基づいて規定された一般試験法や各条については、各項目の冒頭にその旨が記載されることになっている。一般試験法なら「本試験法は、三薬局方での調和合意に基づき規定した試験法である」となるし(下図)、各条なら「本医薬品各条は、三薬局方での調和合意に基づき規定した医薬品各条である」といった具合だね。



 

〔第十九改正日本薬局方.p121(一般試験法)、厚生労働省告示第193号、2026年4月10日より〕



なお、日本薬局方では、PDGで調和合意に至った試験法が「一般試験法」の部に収載される場合もあれば、「参考情報」として収載される場合もあるよ。調和の状況をどのように薬局方に収載するかは、それぞれの薬局方の方針にゆだねられているんだ1)。

それから、調和・非調和事項や独自記載事項などの情報のほか、調和文書の全文も医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで公開されているよ。こちらもチェックしておこう。
試験法:https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/standards-development/jp/0021.html
添加物:https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/standards-development/jp/0020.html

さて、ここまでは、完全調和に至った項目の表示方法だ。一方、部分的調和、つまり項目のなかに調和合意されていない部分(非調和事項)がある場合はもうひと手間、黒い菱形のマーク「◆ ◆」で囲むことにしたんだ。さらに、調和の対象とされた項以外に日本薬局方が独自に規定することとした項(独自記載事項)については、白い菱形「◇ ◇」で囲むことにしたんだよ。



 

〔第十九改正日本薬局方.p1126(医薬品各条)、厚生労働省告示第193号、2026年4月10日より〕

 

編集部員M
非調和の部分は黒い菱形「◆ ◆」、日本薬局方独自の規定は白い菱形「◇ ◇」が目印になるのですね!

 

にっきょくん
そうだね。ただし、白い菱形マークについては、今後は薬局方から削除されることになっているんだ。PDGにおいて白い菱形を採用しているのは日本薬局方と欧州薬局方なんだけれど、それぞれ可能なタイミングから、非調和事項も独自記載事項もともに、黒い菱形のみで表示することが決まっているんだよ。というのも、長きにわたって日米欧の三薬局方のみで構成されてきたPDGに、令和5年(2023年)、インド薬局方(IPC)が加入したんだ。参加する薬局方が増えたとなれば、複雑な表示はなるべく避けたほうが維持しやすいし、ユーザーにとってもより簡潔で明確な表示方法にしよう、ということになったんだね2)。

それからそれから。PDGが平成元年(1989年)に発足して以来、日本では「日米欧三薬局方検討会議」と呼ばれてきたんだけれど、インド薬局方の加入と同時に、「薬局方調和国際会議」と改称されて3)、現在に至っているよ。

 

編集部員M
こうして薬局方の国際調和が進むことで、医薬品の海外展開がスムーズになっていくわけですね。…でも、あれ? 承認はどうなるんだろう? もしかして、承認審査の要件も国や地域ごとにバラバラだったのではないですか?

 

にっきょくん
そうそう、そのとおりなんだ。海外の医薬品を承認する際に、品質・安全性・有効性を評価するという基本的な考え方は日米欧の間で共通していたけれど、承認申請の際の詳細な技術的要件は、それぞれ異なっていて、やはり国際調和が必要だったのさ4)。

そんなわけで、次回はPDG発足の翌年〔平成2年(1990年)〕に組織されたICH(医薬品規制調和国際会議)についてもお話ししよう!
参考文献
1)Pharmacopoeial Discussion Group (PDG): Working Procedures of the Pharmacopoeial Discussion Group (PDG). Revised version 4, October 2023(https://www.pmda.go.jp/files/000266951.pdf)(Accessed October 1, 2026)
2)医薬品医療機器総合機構:PDGニュース〈仮訳〉 薬局方調和国際会議の成果.2025年9月30日~10月1日(https://www.pmda.go.jp/files/000278143.pdf)(2026年9月17日閲覧)
3)医薬品医療機器総合機構:薬局方の国際調和(https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/standards-development/jp/0005.html)(2026年9月17日閲覧)
4)医薬品医療機器総合機構:ICH 医薬品規制調和国際会議(https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html)(2026年9月17日閲覧)

 


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