現場が求めるグローバル対応の実践知識
第1章 序文
1.適用範囲
2.出発物質
3.粉砕工程
第2章 品質マネジメント
1.品質マネジメント体制
2.出荷判定者
3.出荷判定の実施方法
4.逸脱
5.品質部門と製造部門の役割
第3章 従業員
1.従業員の責任
2.教育訓練計画
3.教育訓練効果の評価
4.講師
▶解説1:教育訓練カリキュラム
第4章 構造及び設備
1.汚染を適切に制限するためのハード設計の考え方
2.封じ込め・設備の専用化
3.差圧管理
4.エアシャワー
5.水管理
6.防虫管理
第5章 工程装置
1.汚染防止設計
2.校正
3.キャリーオーバー
4.コンピュータ化システム
▶解説1:更衣を必要としない場合の設計例
▶解説2:更衣を必要とする場合の設計例
▶解説3: 更衣を必要とする場合とそうでない場合の設計例に共通する設備設計上の一般的な注意事項
▶解説4:空調設備の設計例
▶解説5:局所排気設備の設計例
第6章 文書化及び記録
1.文書の作成,保管
2.署 名
3.記録の照査,監査証跡のレビュー
4.コンピュータ化システム
第7章 原材料等の管理
1.受入れおよび区分保管
2.供給業者の評価と承認
▶解説1:貯蔵タンク内での溶媒管理時の注意事項
▶解説2:出発物質の製造業者管理例
第8章 製造及び工程内管理
1.立会い
2.逸脱
3.時間制限
4.工程内試験
5.混合
6.汚染管理
7.検体採取
8.ステータス表示
9.袋入り原料の秤量
第9章 原薬・中間体の包装及び識別表示
1.包装材料
2.ラベルの発行および管理
▶解説1:ラベル管理での注意事項
第10章 保管及び出荷
1.保管作業
第11章 試験室管理
1.OOS(Out of Specification)およびラボエラー
2.不純物プロファイル
3.リテスト日,使用期限
4.参考品・保存品
5.検体採取
6.COA(Certificates of Analysis)
7.標準品
8.試験技術移転
▶解説1:標準品の調製,管理
第12章 バリデーション
1.バリデーションの文書化
2.プロセスバリデーション
3.洗浄バリデーション
4.分析法バリデーション
▶解説1:プロセスバリデーションの解説
▶解説2:毒性学的評価で使用される用語の定義,計算例
第13章 変更管理
1.変更管理体制
2.変更のレベル
3.変更の評価
▶解説1:変更管理
▶解説2:米国の変更管理
▶解説3:EUの変更管理
▶解説4:企業での変更レベル分け例
▶解説5:変更管理における評価項目
第14章 中間体,原薬等の不合格及び再使用
1.再加工(Reprocessing)および再処理(Reworking)の違い
2.再加工(Reprocessing)
3.再処理(Reworking)
4.回収(Recovery)
5.返品
第15章 苦情及び回収
1.苦情
2.回収
第16章 受託製造業者(試験機関を含む)
1.委託先の管理
2.品質契約書
3.外国製造業者への委託
4.技術移転
▶解説1:取決め書に含める内容
第17章 代理店,仲介業者,貿易業者,流通業者,再包装業者及び再表示業者
1.代理店などの管理責任
2.輸送・保管の管理
3.再包装・再表示
4.原薬GDP
第18章 細胞培養・発酵により生産する原薬のガイドライン
1.バイオ原薬製造施設特有の構造および設備(第4章 構造及び設備)
2.シングルユース製品
3.バイオ原薬製造特有の原材料等の管理(第7章 原材料等の管理)
4.バイオ原薬の製造および工程内管理(第8章 製造及び工程内管理)
5.バイオ原薬製造におけるウイルス管理
6.バイオ原薬の標準品(第11章 試験室管理)
7.バイオ原薬製造におけるバリデーション(第12章 バリデーション)
8.バイオ原薬製造工程における品質リスクマネジメント
第19章 臨床試験に使用する原薬
1.一般事項
2.変更管理
3.試験室の管理
4.製造記録
5.製造設備の共用
6.安定性試験
7.ベリフィケーション
資料1 ICH Q7:原薬GMP のガイドラインについて
資料2 ICH Q7 Q&A:原薬GMPのガイドラインに関するQ&A について
資料3 ICH Q11:原薬の開発と製造(化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品/
生物起源由来医薬品)ガイドラインについて
資料4 ICH Q11 Q&A:「原薬の開発と製造(化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品/
生物起源由来医薬品)」に関する質疑応答集(Q&A)について
序
原薬GMPの国際的なガイドラインの必要性
医薬品GMP(Good Manufacturing Practice)は,1962年に米国で発生したサリドマイド事件を契機に制定された「キフォーバー・ハリス医薬品改正法」(Drug Amendments of 1962)によって,その基盤が築かれました。この改正法は,1938年に制定された「連邦食品・医薬品・化粧品法」(Federal Food,Drug, and Cosmetic Act)の大幅な改正であり,新薬の有効性と安全性の証明を義務付けるとともに,臨床試験の厳格な管理や製造工程における品質管理の重要性を強調しました。この法改正を契機として,医薬品の製造における品質保証の考え方が制度化され,1978年にはFDA(米国食品医薬品局)によりCGMP(Current Good Manufacturing Practice)が正式に規制化されました(21 CFR Parts 210/211)。その後,欧州ではEU GMPが整備され,日本でも2004年にGMP省令「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」が制定されるなど,GMPは世界中の医薬品製造現場に広く定着しています。
一方,原薬に関しては,ICH Q7Aが発出されるまで明確なGMP規定が存在せず,各国で運用が異なっていました。米国FDAは,1990年代後半,CGMPを適用しつつ,1991年に策定された原薬査察ガイドに基づいて査察を実施していましたが,現場との乖離を是正するため,原薬GMPに関するドラフトガイダンスを作成しました。EUでは,1970年に発足したPIC(Pharmaceutical Inspection Convention)のGMPに基づき,原薬製造所の査察が行われていました。
日本では,日本医薬品原薬工業会(原薬工)により原薬GMPの素案が作成され,1988年に「医薬品の製造原料の製造管理及び品質管理に関する基準」(原薬GMP)として通知されました。その後,三極(日・米・EU)においても原薬GMPの国際的なガイドラインの必要性が認識され,1990年代後半からPICのGMPをもとに議論が進められ,2000年11月にICH Q7Aとして最終合意(Step4)に至りました。日本では2001年11月,「原薬GMPのガイドライン」(ICH Q7A)として発出されました(以降,ICH Q7A「原薬GMPのガイドライン」をQ7と略す)。
Q7実践のための取り組み
Q7は,実質的にグローバルで運用される初のGMPガイドラインであり,その考え方は原薬のみならず製剤のGMPにも応用可能な内容でした。その後,Q7は,PIC/S(Pharmaceutical Inspection Co-operation
Scheme)GMPガイドラインのPart IIに採用され,原薬のGMP管理において,世界共通のスタンダードとして,各国の規制当局および企業に広く認知されています。なお,Q7の内容自体は,Step 4発出以降,一切改訂されておらず,補足として2015年に「原薬GMPのガイドライン(ICH Q7)Q&A」(2015年Step 4,2016年国内施行)(以下,Q7 Q&A)が追加されたのみで,約25年が経過した現在でも使用され続けている,非常に稀有なガイドラインです。
Q7が発出された2001年当時,行政当局のみならず,PDA(Parenteral Drug Association)をはじめとする各種団体からも説明会や解説資料が提供されましたが,原薬GMPに不慣れな企業にとっては,より実践的な指針が求められていました。こうした背景のもと,日本PDA製薬学会では,Q7の実践指針の作成を目的に,製薬企業や関連企業の有志により,2002年5月に原薬GMP委員会を設立しました。
同委員会は,2002年7月および2005年7月にQ7に関する教育セミナーを開催し,セミナーでの議論や質問をもとに,2005年6月に「ICH 原薬GMP Q&A集 ―FDAの考えに沿ったQ7Aの実践―」を出版しました。さらに,初版発刊から10年後の2015年10月には,Q&A集を全面改訂し,「ICH 原薬GMP Q&A集 ―現場が求めるグローバル対応の実践知識―第2版」を出版しました。
GMP管理のさらなる向上という時代背景のなかで
そして,第2版の発刊から約10年が経過するなかで,GMPを取り巻く環境は大きく変化しました。2021年にはGMP省令が改正され,2022年には「GMP事例集(2022年版)」が公表されるなど,制度面・実務面の両面でアップデートが進んでいます。
この間,ICHから新たなガイドラインが次々と発出されました。具体的には,2018年にQ11 Q&A「原薬の開発と製造(化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)に関する質疑応答集(Q&A)」,2021年にQ12「医薬品のライフサイクルマネジメントにおける技術上及び規制上の考え方に関するガイドライン」,2023年にQ13「原薬及び製剤の連続生産に関するガイドライン」が国内で施行されました。
また,2021年には,ニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検も通知され,品質管理の重要性が改めて認識されました。
これらは,医薬品を取り巻く環境の変化に対応する形で,実施されたものです。時代ごとに求められる思想や考え方を反映しながら,GMP制度は継続的に進化しています。
第3版の発刊にあたって
このような背景を踏まえ,当委員会では「ICH 原薬GMP Q&A集 第2版」の内容を全面的に見直し,このたび本書第3版の出版に至りました。
原薬の出発物質に関しては,Q11において選定の一般原則が示され,Q11 Q&Aでは具体的な留意事項が明記されました。これを踏まえ,本書第1章では,Q11およびQ11 Q&Aに直接言及されていない内容も適宜紹介しています。
上級経営陣の責任については,Q7では詳細な記述はありませんが,Q10「医薬品品質システム」において初めて言及されました。国内では2021年のGMP省令改正により,「法人たる製造業者等の代表者を含む薬事に関する業務に責任を有する役員は,実効性のある医薬品品質システムの構築及び実施に関しても責任を負う」と明記されました。本書では,第2章に経営陣の責任に関するQ&A,第3章に上級経営陣に対する教育訓練に関するQ&Aを収録しています。
データインテグリティについては,各規制当局や業界団体からの見解を踏まえ,本書第6章において電磁的記録に関するQ&Aを改訂しました。
不純物管理に関しては,2015年にQ3D「医薬品の元素不純物ガイドライン」およびM7「潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA反応性(変異原性)不純物の評価及び管理ガイドライン」が発出され,Q3Dは2023年,M7は2024年にそれぞれR2に改訂されました。本書第11章では,これらの最新ガイドラインを反映した不純物管理に関するQ&Aを掲載しています。
本書第12章で扱われているバリデーションに関し,プロセスバリデーション(PV)については,製品ライフサイクル管理(開発から市販後まで),リスクベース・サイエンスベースのアプローチ,先進技術の活用などが業界に浸透しています。洗浄バリデーションでは,共用設備の洗浄における許容基準値の設定に毒性学的評価を用いる考え方が定着しています。
本書第13章で扱われている変更管理については,2021年に発出されたQ12により,製品ライフサイクル全体を通じて,より予測可能かつ効率的な方法でCMC(化学・製造・管理)に関する変更を行うための枠組みが整備されました。変更のランクや手続きは日米欧で異なりますが,日本では国際調和に向けた取り組みとして,2024年9月より中等度変更事項および年次報告に係る変更手続きの導入試行が開始されています。
再加工・再処理については,行政当局(国・地域)によって解釈や容認範囲が異なっており,特に再加工・再処理された原薬の出荷要件については,各国当局への相談・確認が不可欠です。本書第14章では,こうした状況を踏まえたQ&Aを掲載しています。なお,最近では日本国内においても再加工・再処理の解釈や要件の見直しが進められており,今後の動向に注目が集まっています。
医薬品の輸送に関しては,2018年に「医薬品の適正流通(Good Distribution Practice:GDP)ガイドライン」が国内で発出され,原薬の輸送については,同年にPIC/Sから「原薬GDPガイドライン」が公表されました。本書第17章では,これらの輸送に関するGDPガイドラインの内容を取り上げています。
ウイルス安全性評価については,2025年1月にQ5A(R2)「ヒト又は動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品等のウイルス安全性評価に関するガイドライン」が発出されました。本書第18章では,第2版で取り上げた抗体医薬やシングルユース製品の利用に加え,ウイルス管理に関するQ&Aも新たに組み入れています。
日本における製薬業界の標準となる実用書を目指して
今回の改訂では,医薬品を取り巻く環境や規制の大きな変化を反映した内容を中心に編集し,すでに業界内で十分に定着したと考えられるQ&Aは削除しました。また,2018年より当委員会が講師を務めている「医薬品(原薬)GMP研修講座」において,受講者から毎年多くの質問が寄せられており,それらの質問に対する回答を委員会内で詳細に議論した上で,本書第3版に多数盛り込んでいます。これらの質問は,現場での悩みや課題に直結するものであり,それに対する回答をQ&Aとして掲載することで,本書の副題「現場が求めるグローバル対応の実践知識」にふさわしい内容となるよう努めました。
原薬製造には,製造部門,試験部門,品質部門,技術部門,薬事部門,購買部門など,多くの部門の連携が必要です。本書は,これらの部門の担当者や責任者の皆様にとって有益な内容となるよう構成しています。読者の知識レベルとしては,原薬製造の基本的な理解があると,よりスムーズにご活用いただけますが,参考情報や参照文献も豊富に掲載しているため,Web検索などを併用することで,初心者の方にも導入書としてご利用いただけます。
また,体系的な知識整理に役立てていただけるよう,Q7の章立てに沿った構成とし,具体的な情報を探す際には,キーワードからたどれるよう,巻末に索引も掲載しています。
本書は,行政当局の公式見解をまとめたQ&A集ではなく,日本PDA製薬学会原薬GMP委員会のメンバーの知見と経験に基づき,業界標準とされる見解や事例を集約した実用書です。現場での活用を想定しており,読者の皆様の業務に役立つことを願っております。
また,医薬品の製造において,品質と安全性を確保することは,患者の命を守るために欠かせない責務です。GMPは,その責務を果たすための基準であり,製造現場における製造管理と品質管理の根幹を成しています。2001年にQ7が発出されて以降,国際的にもGMP制度の整備と一般化が進んできました。一方で,現場では依然として不適切な対応が見受けられるのが現状です。こうした状況を改善するためには,GMPを単なる規制や形式的なルールとして捉えるのではなく,その背景にある「サイエンス」の視点を理解することが重要です。本書では,GMPの規制面だけでなく,科学的根拠や考え方もあわせて解説することで,マネジメント層や製造現場の方々にGMPの本質的な重要性を深く理解していただくことも目指しています。その理解が,不適切な対応の防止につながる一助となることを,心より願っています。
最後に,本書の改訂にあたり,「医薬品(原薬)GMP研修講座」にて貴重なご質問をお寄せくださった受講者の皆様,そして貴重な資料や知見,経験を惜しみなくご提供いただき,執筆・編集に多大な尽力を賜りました日本PDA製薬学会原薬GMP委員会の皆様に,心より感謝申し上げます。
2025年9月
日本PDA製薬学会原薬GMP委員会委員長
磯部 貴弘
(協和ファーマケミカル株式会社)
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