クリティカルケア薬の使いどころ

¥3,960

●重症患者の薬物治療は不安……そんなあなたに自信を与える1冊!
●「クリティカルケア薬」シリーズのハンドブック誕生!

 
一刻を争うERやICUでは、目の前の状況に応じた瞬時の判断が求められますが、病態や患者状況などを踏まえた最適なアプローチを短時間で導き出すのは容易ではありません。本書は、救急・集中治療の現場で誰もが経験する薬の問題を取り上げ、シチュエーションに応じた最適解をコンパクトに解説しています。解決方法が曖昧になりがちな薬物治療に対して、自信をもって取り組めるようになる1冊です。

 

編著
増井 伸高/監
今井 徹、青山 剛一、齋藤 靖弘/編
発行日
2026年9月
判型
A5判
ページ数
248頁
商品コード
57393
ISBN
9784840757393
カテゴリ
目次

Contents

 

人工呼吸器

1 アセタゾラミドの使用――抜管時と代謝性アルカローシス

2 人工呼吸器装着中の吸入薬投与:エアロチャンバーなどの活用と薬剤選択

3 抜管前におけるステロイドの使用戦略

 

消化器

4 腸管運動促進薬の選択

5 腸管運動を抑制する作用のある薬

6 ICU で選択されやすい便秘薬の実際

7 経管栄養マネジメント――消化管トラブル(下痢,胃管排液過多など)への対応

8 嚥下障害に対する薬物療法

 

神経

9 意識障害を遷延させる薬剤一覧とその特徴

10 難治性てんかん重積状態に対する薬剤選択

11 低酸素脳症に伴うミオクローヌスへの抗てんかん薬の使用

12 せん妄への対応

13 ICU で使いたい睡眠薬の選択

14 内服困難時の抗パーキンソン病薬の切り替え方法

15 頭部外傷時の止血薬

16 体温管理療法(TTM)時のシバリング対策に使用する薬剤

 

循環器

17 PSVT に対するアデノシンの使用法と注意点

18 QT 延長に注意すべき薬剤一覧と臨床上の注意点

19 洞不全症候群に伴う徐脈の薬物治療

20 脳卒中急性期における降圧目標と降圧薬の選択

21 心血管疾患の降圧目標と降圧薬の選択

 

抗菌薬

22 抗菌薬関連脳症の特徴と鑑別ポイント

23 抗菌薬の組織移行性

24 抗菌薬の長時間投与:対象薬剤と投与の実際

 

輸液・注射薬

25 注射での電解質補正方法

26 電解質補正における末梢静脈投与の濃度と投与条件

27 高カリウム(K)血症の対応

28 大量輸血時のカルシウム補充の必要性とそのタイミング

 

血糖管理

29 インスリン持続投与から定時皮下注射への移行方法

 

副作用

30 腎障害時に副作用が顕在化しやすい薬剤

31 ICU における薬剤性腎障害

32 ICU における薬剤性肝障害

33 ER・ICU で知っておきたい irAE とその対応

 

その他

34 注射薬と経口薬の切り替えが可能な薬剤

35 ステロイド使用患者におけるステロイドカバーの必要性と投与例

36 アルコール離脱症候群

37 宗教・思想を考慮した薬剤選択

38 大動脈手術後の脊髄虚血による対麻痺への対応とナロキソンの位置づけ

39 術後の疼痛コントロールにおける薬剤選択

40 創部処置時の疼痛管理

 

付録

1 集中治療領域における注射薬の希釈濃度一覧

2 ICU で頻用される注射薬の最小希釈液量

3 ナトリウム投与制限の考え方

序文

はじめに

 

 ERやICUで薬物治療を考えていると,「これ,どうだったっけ」と,ふと手が止まる瞬間があります.それは必ずしも,まれな薬剤や特殊な治療に出会ったときとは限りません.日頃から使っている薬であっても,何を選ぶのか,いつ使うのか,どのように投与するのか,どこまで続けるのか――目の前の患者を前にすると,判断に迷うことがあります.以前にも調べたはずなのに,もう一度確認したくなる.クリティカルケアの現場には,こうした薬物治療をめぐる “ 小さな困りごと ” が数多くあります.

 抜管前のステロイドは,いつ,どのように投与するのか.人工呼吸器装着中の患者に,吸入薬をどう投与するのか.ICU 患者の便秘には何を選ぶのか.意識障害が遷延しているとき,薬剤の影響をどこまで疑うのか.電解質を末梢静脈から補正するとき,どの程度の濃度まで投与できるのか――.いずれも日常診療のなかで生じる疑問ですが,いざ確認しようとすると,必要な情報はガイドライン,添付文書,論文,成書などに分散しています.そのため,「いま知りたい答え」にすぐ辿り着けないことも少なくありません.本書は,こうした ER・ICUでの “ 困った ” を出発点に企画しました.目指したのは,疾患ごとの薬物治療を網羅することではありません.日常的に遭遇するにもかかわらず判断に迷いやすいこと,何度経験してもつい確認したくなること,あるいは頻度は高くなくても,いざ遭遇すると調べるのに苦労すること――そうしたテーマを取り上げました.「知っているつもり」でも,実際の患者を前にすると迷う.そんな臨床上の“すき間 ” を埋めることが,本書の目的です.

 内容は,人工呼吸管理,消化器,神経,循環器,抗菌薬,輸液・電解質,血糖管理,副作用など,クリティカルケアにかかわる幅広い領域に及びます.さらに,抗菌薬関連脳症や薬剤性臓器障害,内服薬と注射薬の切り替え,ステロイドカバー,アルコール離脱,疼痛管理,宗教・思想を考慮した薬剤選択など,従来の教科書では情報がまとまっておらず,必要な答えを探しにくいテーマも盛り込みました.本書では,医師と薬剤師それぞれの専門性を生かし,病態や治療戦略を踏まえた医学的な視点と,薬剤の特性や投与設計,相互作用,副作用などの薬学的な視点を組み合わせて解説しています.さらに,人工呼吸器装着中の吸入薬投与など,医療機器に関する専門的な知識が求められるテーマでは,臨床工学技士にも執筆に加わっていただきました.それぞれのテーマに必要な視点を取り入れることで,エビデンスを示すだけでなく,実際の臨床で「どのように使うか」まで踏み込んだ,実践的な「薬の使いどころ」を提示することを目指しました.

 もちろん,クリティカルケアに唯一の正解があるわけではありません.本書でいう「最適解」とは,目の前の患者に対して,その時点でより妥当な判断に辿り着くための道筋です.本書が,薬物治療に迷ったときの判断を支え,次の患者を診る際の「迷わないための引き出し」となることを願っています.

 

 2026年8月

 

 札幌東徳洲会病院 救急集中治療センター 増井 伸高

 日本大学医学部附属板橋病院 薬剤部 今井 徹

 東邦大学医療センター大森病院 薬剤部 青山 剛一

 札幌東徳洲会病院 薬剤部 齋藤 靖弘