エビデンスガール
EBM愛が患者を救う!
商品コード |
55948 |
編著 |
髙垣 伸匡/著 |
判型 |
A5判 |
発行日 |
2024年5月 |
ページ |
224頁 |
定価 |
¥3,630(税込) |
在庫 |
|
内容
●PICOからコホート研究、RCT、システマティックレビューまで、論文の読み方をやさしく解き明かす!
●医師、薬剤師、看護師問わず学べるEBMのレクチャー本
●小説のストーリーに沿って楽しくEBMを学べる!
EBMという言葉を知らない医療者はまずいないと思います。では、EBMを実践するとはどういうことでしょうか? そもそもエビデンスとは何でしょうか?
本書は「論文を自由自在に読めるようになりたい」「自分で解釈できる力を身につけたい」という医療者に向けて、数えきれないほどのEBMワークショップを開いてきた医師が語る、EBMのイロハや論文の読み方のレクチャー本です。大学生が主人公の小説形式で解説が進むので、サッと読めてわかりやすい構成です。本書を通じて学ぶことの楽しさを味わうことができます。
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目次
第1章 イントロダクション
1 EBMは患者の物語から始まる
第2章 PICO/PECO
2 PICOはあなたの臨床能力を伸ばす最強のツール
3 PICOになる疑問,ならない疑問
第3章 論文の調べ方
4 PubMed検索のレッスン
第4章 コホート研究とRCT
5 予後とコホート研究について知ろう
6 RCTは観察研究より偉い……のか?
7 RCTが絶対でないこれだけの理由
8 コホート研究はじめの一歩
9 自分の推しコホートを見つけてみよう!
第5章 もっとRCTを読む
10 ランドマーク論文を読もう
11 ちょっと難しい非劣性試験の読み解き方
12 Step 4(結果の適用)を考える
第6章 システマティックレビュー
13 まとめて評価するのがシステマティックレビュー
14 システマティックレビュー,Yes or No?
第7章 EBMのいろいろ
15 診療ガイドラインはどうやって作られる?
16 EBMの診断ってどういうもの?
17 EBMワークショップを開こう!
第8章 エピローグ
18 David Sackett,最後の講義
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序文
1997年春。私は研修医として働き始めました。
最初に担当医となったのは終末期のがん患者さんでした。その人はすでに意識がなく,24時間の酸素投与と持続点滴で,モニターがついています。実際の主治医は先輩医師で,私はカルテを読んで患者さんを見つめるだけでした。
ある日,主治医の先輩から「高垣くん。キミは黙ってカルテと患者さんばっかり見ているけど,質問はないのか?」と言われて,はたと困りました。し,質問ですか?
朝から夜までカルテを見ては患者さんのそばにいたので,何の薬剤が投与されて,バイタルはどういう状態なのかは知っています。悲しい予後も理解していました。原疾患や採血データなど,いろいろ患者さんのことを思い返しますが,何にも浮かびません。
困りに困って絞り出した質問は,
「えーっと……。こ,この患者さんは,どうですか?」でした。
「そんな質問されても意味ないやろ~」
と爆笑する先輩。わかっています,我ながらひどい質問です。その場は失笑に満ちていました。しばらく病棟に戻れません。そして,このサイアクの質問が,私の「疑問を巡る旅」の始まりとなりました。
研修の数年はひたすら段取りや手順を覚え,知識を増やす日々です。しかし,段取りや単なる知識では患者さんの疑問には答えられません。
「この薬って一生飲まないといけないの?」
「長く薬を飲んでも害はないの?」
わ,わかりません。当時は医学雑誌やマニュアル本を読むことが多かったのですが,それでは患者さんの質問に解答できず,いつもうろたえながら説明をしていました。
参加した学会のディスカッションでは,質問だけで場が盛り上がったりしています。できる先輩が患者さんに病状説明をすると,感謝されています。しかし,私が説明すると困った顔をされます。このまま何年頑張っても,絶対に目指す医師にはなれないという確信すら湧いてきました。
しかし,成長しないわけにはいきません。医局にあったLancetやNew England Journal of Medicineをやたら読み漁りました。ちょっと背が伸びた気はしますが,今度は論文の読み方がわからない。困ったことに,誰に尋ねてもご存知ないのです。ネット環境がない病院宿舎で必死にパソコンを組んで検索すると,EBMというものがあるようです!
急いで本を取り寄せて読むと,最初に「疑問の定式化」というステップが出てきました。「あなたの疑問を,PICOを使って検索可能に変換する」というのです。疑問のモヤモヤが,形になって調べることができるなんて! 知らないことは成長への第一歩なんだ! はやる心でPICOを書いてみたら,確かに何かが違います。「この患者さんはどうですか?」レベルから卒業できるかもしれません。
それは,すでに研修病院での成長をあきらめて,基礎研究の大学院に逃げ込んだ卒後4年目のことでした。
あれから,各地のEBMワークショップに喜び勇んで参加したり,論文を読まないといけない立場に追い込むことも兼ねて自前の勉強会を立ち上げたりしてきました。EBM勉強会は約5年にわたり続きましたが,テキストとしてセレクトした論文のPDFは1GBを超え,参加した医学部や薬学部,看護学部の学生は延べ200名以上になりました。さらに神戸薬科大学では,Student CASPワークショップというEBMワークショップを始め,こちらは薬学生が延べ800名以上参加してくれました。
学生の成長には,いつも度肝を抜かれっぱなしでした。彼らは専門科目をもたないので,あらゆる種類の論文に興味をもち,読み方も徹底的で深いのです。論文を吟味する能力には臨床家も学生も関係なく,徹底的に理解するマインドが大切であることを教えていただきました。
そんな折,新型コロナの時代がやってきました。ワークショップは軒並み中止,オンラインレクチャーに馴染めずジタバタしていた折に,海老田みやびとEBMの物語を執筆する機会をいただきました。在宅のEBM仕事でありがたくもあり,でも執筆ってどうやったらいいんだ? という疑問に追われての日々でしたが,何とか18話を書き終えました。
(以下略)
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